数え切れませんが、例えば自転車関連に限っても、自転車のメーカー、輸入や卸業者、街の販売店、用品やアクセサリー・自転車用アパレルなどのメーカー、フレームビルダー、貸し自転車屋、シェア自転車を展開する企業といったところが思い浮かびます。
ニッチではありますが自転車の洗車サービスとか、自転車の修理業者、駐輪場の運営、放置自転車の撤去移送の受託業者もあります。ベロタクシー、自転車を使うメッセンジャー、最近ではフードデリバリーなどのサービスをする個人事業主も、広い意味での自転車商売と言えるでしょうか。
カーゴバイクやトレーラーを使って街角で提供するコーヒー店とか、それをフランチャイズする業者もありますし、発展途上国の人に自転車を提供したり、現地で自転車の修理や製造などを展開する組織の中には、持続性のためビジネスとして展開するところもあります。
自転車を使った商売は他にもいろいろあると思います。アマゾンに対抗して自転車で配達する街の本屋のネットワークといったオリジナリティに富んだビジネスも、このブログで取り上げてきました。でも、世の中にはまだいろいろなビジネスを考え出す人がいます。

アメリカ・フロリダ州を拠点に展開する、“
Ask Learn Go”は、なんと自転車の乗り方を教えるサービスです。一般的には、自転車の乗り方なんて、親が子どもに教えるものでしょう。こんなサービスのニーズがあるとは思いませんでしたが、実はビジネスとして展開されています。
親が忙しくて教えている暇のない人には便利かも知れません。子どもの中には、すぐに乗れるようになる子がいる一方で、なかなか乗れるようにならず、苦労する子どももいます。特にバランス感覚などに問題がなくても、一度恐怖を感じてしまうと習得に苦労することもあるようです。


もちろん、いわゆる運動神経の悪い子、引っ込み思案の子どももいるでしょう。そして、中には親が自転車に乗れないため、子どもに教えられない人、教える自信のない人もいます。子ども用自転車を買わなくても貸してくれますし、このサービスが便利という人は必ずしも少なくないようです。
さらに、自転車に乗れるようになった後、街を走るのに必要な規則の知識、事故に遭わないための注意点なども教えてくれます。これは、ふだん自転車に乗っている親でないと教えられない部分、教えても漏れが出てしまう部分かも知れません。子どもの安全を考えたら大事な点です。


トイザらスのような、子供用自転車の販売店などとの連携というニーズもあります。キッズ自転車の販促のため、無料の自転車教室を開催するような場合、自社の素人の店員が教えるのではなく、“
Ask Learn Go”に依頼することで、プロのレッスンという点をアピールすることも出来るでしょう。
アメリカ固有の問題もあります。移民が多いということです。不法も含めた移民の中には、故国で自転車に乗る機会などなく、乗れない大人も少なくありません。そうした大人がレッスンを受けるというニーズもあるのです。もちろん、そのような事情で子どもに教えられない人もいるわけです。


仮に親が教えられたとしても、何度も転びながらマスターさせるより、プロに効率よく教えてもらったほうが早いし、アザも少なくて済むという考え方もあります。2時間のグループレッスンで60ドル程度からですが、機材も貸してもらえて、かえってリーズナブルという判断もあるはずです。
サイトには、子どもが20分で乗れるようになったとか、63歳の母が乗れるようになった、都会育ちで学ぶ機会がなく諦めていた大人の女性だけど辛抱強く教えてくれて習得できた、水泳教室と同じで受けさせるメリットは大きい、といった声が多数寄せられており、口コミで広がった部分もあるのでしょう。( ↓ 動画参照)
フロリダは温暖で、海外からだけでなくアメリカ国内からも多くの人が移り住んでくる土地で、実は利用者の40%が成人だと言います。その中には、FBIの捜査官や警察官、プロのサッカー選手までいるそうです。最年長は83歳、それぞれ乗れない理由、習わなくてはならなくなった理由があるのでしょう。
いい大人が公園で転びながら、しかも覚えの早い子どもと違って長い期間をかけて練習するなんて、考えただけで敬遠したくなる人は多いはずです。それならば、お金を払ってでもプロに教えてもらって、さっさとマスターしたいと考えるのは自然です。こういうサービスがあるなら挑戦しようと考える人もあるでしょう。

中には、何らかの障害を持っていたり、事故などで負った人もいます。そのような場合でも、乗れるようになりたいという人に対し、身体的な問題を解決するための訓練を受けた、作業療法士や理学療法士がいます。乗れるようになるためにハードルがある人にも対応してくれます。
アメリカでは、州によりますが16歳くらいからクルマの免許がとれます。特に自転車に興味や必要性がなかったり、都市部に住んでいたなどで、乗る機会がなかった人もいるでしょう。それが、このコロナ禍で自転車が注目され、乗ってみようと思い立った人、何らかの理由で乗る必要が生じた人もあるでしょう。

フロリダは、リタイア後に住むのに人気の土地です。今まで自転車に乗る機会がなかったけれど、便利そうだとか、健康のために自転車に乗り始めようと考える高齢者も少なくないようです。高齢で、自分でマスターする自信はないので、スクールに入りたいというニーズも一定程度あるようです。
グループレッスンの2時間で乗れるようになる子どもと違って、高齢者の場合は時間がかかるかも知れません。その場合には、1対1のレッスンや、さらにプライベートレッスンで徹底的に対応してくれるようなコースもあります。多少値は張りますが、高齢者には安心でしょう。
何度も教わるものではないので、リピート客はないと思いますが、現在は、フロリダ州内でも、マイアミデイド、ブロワード、パームビーチ、タンパで提供されており、一定の需要があるようです。普通、なかなか思いつかないと思いますが、ニッチなニーズに目をつけたものです。
果たして、日本でもニーズがあるかはわかりません。多くの人は子どもの頃に練習して乗れると思います。ただ、大人でも乗れない人がいるのは確かです。そして、日本ではあまり大人向けの自転車レッスンは聞かないので、あれば利用したい人もいるかも知れません。
日本で自転車に乗る人は多いですが、自転車に乗らない人のほうが多数を占めます。そして、その中には乗らないのは乗れないからという人もいるはずです。その割合かはわかりませんが、乗る必要がないので習う必要もない人がいる一方で、潜在的な顧客もいるはずです。もしかしたら、日本でも一定のニーズがあるかも知れません。

もちろん、子供の練習のニーズも開拓できる可能性があります。最近は、ペダルのない子供用のキックバイクを使うと覚えが早く、あっという間に乗れるようになる子もいます。いちいちキックバイクを用意するのも面倒ですし、忙しいからとか、自分で教えるより効率的と考える親もあるに違いありません。
日本では、自治体などが無料で教えてくれる教室を開催する例もあると思いますが、そうした場所へ人材を派遣することも含め、ビジネスチャンスが埋まっている可能性はあるでしょう。これまでにもいろいろ取り上げて来ましたが、まだまだ自転車に関連したビジネスのタネは埋もれていそうです。
◇ 日々の雑感 ◇
岸田新政権のスタートで、まず注力すべきはコロナ対策でしょう。GOTO2.0などと言っていますが、状況がよくなれば黙っていても皆旅行に行きます。それより6波に備え、ひっ迫しないよう病床を拡大し、抗体カクテルなど重症化予防の体制、保健所の体制の強化など国民の不安を取り除く為の医療体制の整備にこそ注力すべきでしょう。
Posted by cycleroad at 13:00│
Comments(0)