October 17, 2021

シェアサイクルは世界を救う

自転車シェアリングが増えています。


都市部で自転車を共有するシステム、いわゆるシェアサイクルは、世界中の都市で導入され、その数は増える一方です。どんどん拡大しているため、正確な数や経緯は把握出来ませんが、このブログの過去の記事を見返してみると、2014年には、世界500以上の都市にあると書いています。

当時の報道や統計などを元に、2017年には世界1000都市以上と書きました。2020年の時点では少なくとも1千数百か所になっていたと確認しています。そして現在では、少なくとも2300以上の都市で導入されています。もちろん、都市と言っても大小ありますが、かなりの勢いで増えてきたのは間違いありません。

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2020年以降、急増した背景にはコロナ禍もあるのでしょう。環境問題から、なるべくクルマを使わない移動が支持される傾向も後押ししたに違いありません。原油価格の影響も考えられますし、各政府の政治的なイニシアティブにも左右されるわけですが、大きく増加しました。

今後も自転車シェアリングの市場は拡大すると予測されています。調査会社、REPORT OCEANのレポートによれば、世界の自転車シェアリング市場は、2021年から2027年の間に、毎年14%以上の成長率が見込まれると言います。少なくとも27年までは順調に成長すると見られます。

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2020年の段階で、およそ39億ドルの市場が、2027年には、98億ドルに達する計算になります。ただ、都市によって環境が違うため、企業が参入しない都市、されても定着しない都市もあり、必ずしも世界にまんべんなく増えるわけではありません。

これまでも、どこの都市でも定着し成功しているわけではありません。盗難や破壊が多くて費用がかさむとか、利用がどうしてもポートごとに偏るため、再配置するための人件費がかかる、競合する交通機関が多くてメリットが少なく人気が出なかった、といった理由で業者が撤退したところもあります。

Photo by 螺钉,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.少し前に中国で、一大ブームが巻き起こって参入企業が相次ぎ、シェア争いでごく短い期間に大量の自転車が街にあふれ、その後淘汰されて多くの事業者が倒産、廃業、吸収合併されるに至ったのは記憶に新しいところです。大量の廃棄された自転車が積みあがった光景も取り上げました。

個々の事情はいろいろあるでしょうが、定着する都市もあれば、業者が撤退した都市、再び別の事業者によって開始される都市などさまざまです。ヴェリブのような成功例があっても新規に参入する企業が続くパリのような例もありますし、採算が合わなくなって、自治体が公費で運営を引き継ぐ都市もあります。

おそらく、都市によって条件が大きく変わってくるからなのでしょう。地形、気温や降水量、自転車の普及率、自転車走行空間の整備状況、市民が自転車に親しむ度合い、ポートを設置できる余地、競合する交通機関、環境問題への関心度、そのほかさまざまな要件が違うからだと思われます。

自治体が公費を投入するならともかく、一般企業が運営していくためには、当然採算があわなければなりません。貸し出すポート、ステーションが少なかったり、台数が少なくて不便、使える範囲が狭い、料金が高いなど、市民に受け入れられない状況はいくらでもあります。

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ポートを設置する土地を確保し、自転車の台数を揃えるには、相応の初期投資が必要です。自転車の盗難や破壊、投棄もあるでしょうし、修理やメンテナンスも必要です。決済システムの開発、自転車を再配置するための人件費など多額の運転資金も必要になります。つまり、必ずしも簡単に儲かるような商売ではありません。

それが、都市によってシェアサイクルがあるか無いかにつながるのでしょう。しかし、少し違った観点から自転車シェアリング事業を展開する企業があります。現在アメリカ・オハイオ州はシンシナティに本拠を置き、低コストでの移動の提供を目指している、ORION Electronics Company です。

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シンシナティ大学の卒業生、Paul Perkins さんらが創業したスタートアップ企業です。高品質で手頃な価格で、環境に配慮した、E-Bike によるシェア自転車を提供しようと取り組んでいます。でも従来のような基準で、シェアサイクルの採算がとれそうな都市に進出するのではありません。

彼らが考えるのは、むしろ採算性に疑問がありそうな場所、すなわち低所得者が住む地域にシェア自転車を配置しようというのです。実は、シェア自転車を最も切実に必要としているのは、低所得で貧困に苦しむ労働者だと言います。彼らは、仕事場に通う手段を持っていません。( ↓ 動画参照)



苦労して仕事を見つけても、クルマを持っておらず、バスなどの公共交通機関が使える場所に住んでいなかったら、仕事に通えません。そこで、低所得者が居住する地域に、電動アシスト自転車を配置し、シェア自転車を展開しようと考えているのです。当然ながら、料金は極力安くしなければなりません。

同社の、ORIONGo アプリを使えば、月額わずか10ドル、年額なら60ドルで距離、時間無制限で自転車を利用できます。この破格の安さによって、低所得で苦しむ人たちに仕事へのアクセスを提供しようというわけです。購入したいという人には、899ドルから販売もします。

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現在、アメリカでは、Uber、Lyft、Lime、Bird、といった大企業、著名な企業がシェアサイクルやシェア電動スクーターなどのマイクロモビリティを展開しています。そうした既存のシェア自転車が展開しない地域、あるいは展開していても、その料金を高いと感じている人たちがターゲットなのです。

Perkins さんは、多くのシェア自転車企業は、シェア自転車の潜在的な市場を見逃していると考えています。クルマが買えない、使える公共交通機関がない、その交通費が高いと感じている人、明日、仕事に通う手段に困っている人たちこそ、シェアサイクルの潜在的なユーザーだというわけです。( ↓ 動画参照)



Uber、Lyft、Lime、Bird などの既存のライドシェア会社から取り残され、見過ごされている人たちは少なくないはずです。低所得者や学生、若くて働き始めの人にとって、継続して使うには既存のライドシェアは高すぎます。そこに、まだアプローチされていない市場があると考えています。

同社は、オハイオ州のコロンバス、シンシナティといった都市から、このシェア自転車を展開していく計画です。そして、最終的には世界中の人々を貧困から救うために、この会社をグローバルに展開したいと望んでいます。近年増えつつありますが、社会問題の解決を目的として収益事業に取り組む、社会的企業なのです。( ↓ 動画参照)



これまで、アフリカで貧困に苦しむ人たちにとって、自転車は死活的な意味を持つという話を何度か取り上げました。舗装路もなく、バスも電車もタクシーもなく、もちろんクルマも持っていない、アフリカの地方の貧しい村に住む人たちにとって、自転車は貧困を抜け出すための画期的なツールとなりえます。

先進国に住む人には想像がつきませんが、彼らは舗装もされていない道を自転車で、毎日何十キロも走ります。水を運んだり、職場へ行ったり、畑でとれた農産物や家畜の乳などを市場へ持って行ったり、学校へ通うためです。時には救急車として使われることもあります。

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アフリカで自転車を提供するNPOなどは、貧困に苦しむ人々の生活に切実に必要な移動のため、そして貧困からの脱出のために事業を展開しています。しかし、先進国アメリカの都市にも、貧困や低所得に苦しむ人たちが大勢います。格差が大きいからですが、彼らにとっても、自転車は救いとなりうるのです。

同社が顧客として考えている市場は、アメリカで数百万人、あるいはそれ以上と目されます。シェア自転車会社にとって、見逃された市場は小さくありません。さらに世界となれば膨大です。彼らの挑戦がどうなるかはわかりませんが、シェア自転車は、世界の多くの人々を貧困から救う可能性を秘めていると言えるでしょう。




◇ 日々の雑感 ◇

経済再生担当相は飲食店への時短要請などを11月以降に解除としていますが、これも後手に回っています。これだけ人流が増えても感染者激減が続いているのですから、早急に解除して経済を回すべきではないでしょうか。

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