October 26, 2021

乗れば便利で社会も良くなる

日本でもシェアサイクルが増えてきました。


全国の都市に広がりつつありますが、日本の場合は欧米などと比べて規模の小さいものが多い傾向にあります。複数の事業者が競合していたり、利用できるエリアが狭かったり、隣接エリアと乗り入れていない、ポートが少ないなど、利用者にとっては使い勝手が良くない場合も少なくありません。

大阪にも主なサービスだけで、現在5つほどあります。民間だけでなく自治体が運営するものもありますし、範囲や使う機材もそれぞれです。以前は名前が通っていたのに撤退してしまったものもありますが、10年以上営業しているもの、比較的新しいものもあります。

HUBchariHUBchari

その中で、認定NPO法人“Homedoor”が運営しているのが、“HUBchari”(ハブチャリ)です。このシェアサイクルは、ほかと少し違います。大阪市民に気軽な移動手段を提供するものでもありますが、このシェア自転車事業がホームレス支援でもあるのです。

認定NPO法人“Homedoor”は、広く路上生活者の支援を展開している団体です。ホームレスの人に、「あそこに行けば、絶対になんとかなる」と思ってもらえる場所があれば、全国で年間数百人に上るとされる、路上での死者を減らし、路上生活からの脱出の手助けができるのではないかと考え、活動しています。

理事長の川口加奈さん、30歳は、中学生の時にホームレス問題に関心を持ちました。通学途中の電車の窓から、大阪市西成区の釜ケ崎にたくさんの人の並ぶ列がいつも見えていたのがきっかけです。調べてみると、それは炊き出しの列でした。路上生活をする人たちが並んでいたのです。

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豊かな日本で、なぜ食べ物をもらうために並ぶ人がいるのだろうという素朴な疑問がわきました。自分の目で確かめようと中学2年生の冬休み、一人で参加してみることにしました。炊き出しには500人以上の人が並び、2〜3時間は待つ状態でした。

最初は、2〜3時間も待つなら働けばいいのにと思いました。怠けて路上生活をしていると思ったわけです。しかし、並んでいる人たちと話すうちに、いろいろな事情があることがわかってきました。つまり、路上生活をせざるを得ない事情を抱えていたのです。

例えば、家庭環境からまともに学校に通えなかったため就職が困難な人、虐待や家庭内暴力などの事情で家出せざるを得なかった人、怪我や疾病などが原因で退職したものの再就職が困難な人などいろいろです。怠けるどころか、頑張ろうにも頑張れない事情があったのです。

HomedoorHomedoor

最近は、若い世代のホームレスも増えているとされます。コロナ禍でもそうですが、突然解雇される非正規雇用の人も少なくありません。会社の寮などに入居していれば、職と住居を同時に失うことになります。現住所がないと、就職するのは非常に困難なのが現実です。

中には、無戸籍の人もいます。離婚した後に新たなパートナーとの間に子供ができた場合、法律上、離婚後300日以内だと前夫の子になってしまいます。離婚の経緯などから出生届を出せず、戸籍が作れないのです。無戸籍だと小学校にすら通えず、健康保険にも入れず、就職や結婚もできず、非常に困難な状況になりかねません。

生活保護を申請しない人、出来ない人もいます。生活保護を受けていても、いわゆる貧困ビジネスにひっかかってしまい、さまざまな名目で給付金を取り上げられてしまう人もいます。そのほか、事情は一人ひとりさまざまですが、炊き出しの列に並ばざるを得ない人が大勢いること知ったのです。

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川口加奈さんは、食べ物などを渡す支援だけでなく、環境を変えなければ解決にならないと考えました。そして、大学在学中の2010年に“Homedoor”を立ち上げます。ホームレスの人たちが働ける仕事を作りたいと考え、就労支援策として目をつけたのがシェアサイクル事業です。

ハブチャリは利用者にとっては普通のシェア自転車です。でも、その自転車の補修や自転車の再配置をホームレスの人たちに委託しているのです。実はホームレスの人たちは、空き缶を集めて生活の糧にしている人が多く、その場合に自転車は必需品です。

自転車の補修やメンテナンスは、ほとんどの人が自分で出来ます。つまりスキルがあるわけです。このスキルを活かしてもらって就労支援するのに、まさにシェア自転車はうってつけというわけです。単に食べ物を渡すのではなく、働いて社会の役に立っていると実感してもらうのが重要だと考えています。

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大学生だった設立当初は資金もなく、行政からの協力も得られず、企業のビルや店舗の空きスペース、軒先を借りることから始めました。少しずつ台数が増え、インバウンドの利用も増え、雇用できる人数も増えました。ハブチャリによる収益は、全て彼らの人件費や宿泊施設、居場所支援施設の運営などに充てています。

近年は、生活困窮者も多様化し、河川敷や公園を生活の拠点にする人だけでなく、ネットカフェや深夜営業のファーストフードなどを転々とする人たちも多いと言います。“Homedoor”はまず情報を届けるため、巡回活動をし、生活物資の配布などの取り組みを進めています。

HomedoorHomedoor

その日に泊まる場所がなく、野宿を望まない人のための無料の個室シェルターも用意しています。宿泊だけでなく、温かい食事をしてもらうための食堂もあります。健康支援や、自由に来所して洗濯したり、楽しく談笑出来るような『居場所』も提供し、企業から受託した内職や軽作業など、相談に来たその日から働くことも出来ます。

厚生労働省の21年実施の調査では、大阪府のホームレスの人数は990人で全国最多と推定されています。当初は、街でホームレスの人たちを見ても怖がったり、無視する人がほとんどでした。しかし、最近はこんな人がいるけど支援できないかなど、気にかけたり連絡してくれる人も増えてきているそうです。

HomedoorHomedoor

Homedoor”では、さらに支援を拡大するための寄付を募っています。ボランティアとしての参加や、物品の供与、サポーターになってもらえる人も募集しています。サイトでは、大阪をもっと素敵にする活動に貢献してみませんか?と提案しています。

今ではハブチャリの貸し出しポートも大阪市の全域に広がり、売り上げも年間5千万円程度まで増え、雇用した人も20年度までで約60人に上るそうです。シェアサイクルという移動手段を提供するサービスであると同時に、ホームレスと放置自転車が多いという大阪の問題の解決につながる事業と考えています。

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素晴らしい取り組みです。シェア自転車が就労支援になるというのも優れた目の付け所です。“Homedoor”は、ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造をつくることをビジョンとしています。空き缶集めをする人が多いというのは共通していると思いますから、他の都市でも活かせるかも知れません。

同じ大阪でシェアサイクルを使うなら、ハブチャリにしようと思う人も多いのではないでしょうか。シェア自転車のエリアや台数が拡大すれば、それだけ便利になるわけですが、拡大するぶん社会まで良くなる事業です。ハブチャリや同様の自転車シェアリングが広がっていくことを期待したいものです。




◇ 日々の雑感 ◇

時短要請が解除されました。感染者数もピークの100分の1以下となり、世の中も少し明るくなった気がします。一部で飲食店の利用は4人以下といった規制が残りますが、5人以上がダメな根拠も不明、無意味な気がします。

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この記事へのコメント
素晴らしい取り組みですね。
自転車の修理やメンテナンスは時間がかかり、時間当たりの収益を考えると商売として成り立たないと思いますが、こうして「俺は時間はいっぱいあるよ」というホームレスに働いてもらえば仕事として成り立ちます。
「効率・効率」と言われてきた時代から、そうではないものが大切な時代に変わりつつあるような気がします。
新しい「風」が吹いてきたのかなぁ。
Posted by トンサン at October 27, 2021 09:00
トンサンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
一般のパンク修理は自転車店でもやっていますから、商売にならないことはないと思いますし、ホームレスの人に委託と言っても、日がな一日、のんびり修理しているわけではないと思います。
ただ一般的に、特にママチャリのタイヤ交換は手間がかかって手間賃が高くなるのは否めませんね。
資本効率一辺倒の新自由主義的な市場経済だけではなく、NPOや、いわゆる社会的企業を指向する人が増えているのが最近の傾向としてあるようですね。
Posted by cycleroad at October 29, 2021 14:11
 
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