走る場所にもよりますが、側方を追い抜いていくクルマがその一つであり、大きな割合を占めるのは間違いないでしょう。街中などの交通量の多い道路では常に気をつける必要がありますし、自転車にとって、事故の大きなリスクになるのも確かです。
すぐ横を追い抜かれるとヒヤリとしますし、もし接触すれば転倒するリスクもあります。接触したクルマのほうにはダメージがほとんど無かったとしても、自転車側は転倒の仕方や場所によっては命を落としたり深刻な怪我を負うような事態になりかねません。
クルマのドライバーは安全に追い抜く義務があるわけですが、必ずしも側方間隔の確保が守られていません。そこで、クルマのドライバーに対し、自転車を追い抜く場合には1.5メートル程度の側方間隔をあけるよう法令で促している国、地域もあります。
接触しなかったとしても、あまり接近すると、自転車は風圧でよろめくこともあります。焦ってハンドル操作を間違えたり、フラついてしまう可能性もあるでしょう。結果として事故になりかねません。そこまで考えていないドライバーがいるいのは間違いないでしょう。そのことに対する啓発でもあります。
イギリス・ロンドン在住の、Omar Bakhshi さんは、過去に自転車で走行中、クルマに追い抜かれた時に接触して転倒し、頭部に酷い外傷を負ったことがあります。常日頃から、街中での自転車走行をより安全に、ストレスを少なく、よりハッピーに出来ないものだろうかと考えてきました。
今般のコロナ禍による自転車に乗る人の急増に伴って、市民のサイクリングをもっと安全・安心したいという思いから、小さなチームを作って、温めていたアイディアを実現すべく動き出しました。開発作業をすすめながら特許を出願、最初のプロトタイプを制作してテストを繰り返しています。
誰にとっても道路をより安全でストレスのないものにする装置、“
tether”です。人々の安全でハッピーな走行を可能にするアイテムです。ハンドルバーかステムのあたりに取り付け、緑色のレーザー光で、バブルと呼ぶ安全なゾーンを路面に照射します。これで、クルマのドライバーに十分な間隔をとって追い抜くよう促します。
ここまでなら珍しくありません。このブログでも取り上げましたが、同様の装置は過去にもいくつか開発されています。やはりレーザー光を使って、自転車の両脇にラインなどを照射し、追い抜く時の間隔を意識させるものでした。夜間の視認性を向上させる効果もあります。
“
tether”は、それだけにとどまりません。センサーが搭載されており、クルマに追い抜かれた時、その間隔を測定するようになっています。最大で2・5メートル離れた追い抜きを検知します。近すぎるか、安全かを問わず、全ての追い抜きを記録し、同時にGPSで位置情報を取得し付与します。
データは、Bluetooth経由で手元のスマホに送信します。その日の走行が終わった時点でクラウドにアップロードされ、コミュニティで共有されることになります。つまり、危ない追い抜きが多い場所、追い抜きの間隔が狭い場所を地図上に表示し、安全走行の参考にできるわけです。
蓄積されたデータを使って、より安全なルーティングが可能になります。単に道路の幅とか、自転車レーンの有無などの外形的な情報だけでなく、実際に危険な追い抜きが頻発する場所を避けることが出来るようになります。例え、自転車レーンがあっても、駐車車両が多いなどで危険な場所はあるでしょう。
センサーとシステムに工夫があって、追い抜かれたのがクルマだったのか、バスだったのか、あるいは人間や、犬だったのか見分けるようになっています。もちろん、街灯などの構築物とも区別されます。クルマが接近した際、距離が近い場合にはレーザー光を点滅させ、注意を促す機能もあります。点滅する距離は調節可能です。
ドライバーの中には、わざと、あるいは面白半分でサイクリストの近くを追い抜こうとするような人もいます。自転車の存在が目障りだとか、邪魔だと腹を立てるような人もいるのは確かです。なかなか自転車を追い抜くことが出来ずに、イライラしている人もいるはずです。
その行為によって、事故が起きた時の責任とか、招く事態の重大さを理解していないような人もいるでしょう。もしかしたら、仮に接触して転倒させたとしても、追いつかれない、証拠がないから検挙されたり訴追されることはないと、タカをくくっているのかも知れません。
もちろん、そんな悪質なドライバーばかりではありません。ただ、自転車との距離が近くても、それがサイクリストにとって脅威だと思っていない人、つまり悪気のない人もいます。たまたま追い抜く時に対向車があったため、結果としてギリギリを通る形になってしまうこともあるに違いありません。
道路の幅は地図を見れば、ある程度わかりますが、車線などの関係で自転車の走行空間が狭い場所もあります。道路は広くても車線の幅が狭かったり、駐車車両が多いとか、バス停があるなどの事情で、どうしてもクルマと接近してしまうところもあるはずです。
そのような場所までは地図で読み取れません。ましてやルート検索には反映されないでしょう。そう考えると、この“tether”が取得してアップするデータは、地図に現れないナマの情報として貴重なものになる可能性があります。使う人が増えて、コミュニティが大きくなれば、精度も高まります。
装置は、どのような自転車にも装着でき、ワンタッチで外すことも出来ます。頑丈で防水性の高いアルミケースで、レーザー光は日中でも確認できる高輝度なものとなっています。現在は
クラウドファンディングサイトで資金調達を行っています。( ↓ 動画参照)
道路に照射されたレーザー光によって、ドライバーがどれほど間隔をあけるようになるかはわかりません。でも、データを使って危険な場所を避けるという選択は考えられます。データが蓄積されていき、行政が道路の安全性を高めるのにも役立つことを開発者たちは期待しています。
この“tether”がどれほど普及し、コミュニティが広がり、データが蓄積していくかは見通せません。ただ、地図などではわからない、ナマのデータを収集することで、道路での安全、ストレスの低減につなげようというアイディアは評価できると思います。
こうしたデータの収集ということになると、道路にカメラやセンサーを取り付けるという考え方になりがちだと思います。しかし、全体をカバーするには費用もかかりますし、なかなか実現には至らないでしょう。サイクリストたちが自ら走行しつつ収集するという発想も注目に値するのではないでしょうか。
◇ 日々の雑感 ◇
米国のロバート・オブライエン前大統領補佐官(国家安全保障担当)が、台湾危機は北京五輪と米次期大統領選の間こそ可能性が高いと警鐘を鳴らしています。日本も何らかの形で巻き込まれるのは必至で対策が急務では。
Posted by cycleroad at 13:00│
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