サイクルロード 〜自転車への道
世界の都市で自転車が選ばれ始めている。さまざまな角度から自転車の話題を。
November 22, 2021
ユニバーサルデザインの価値
ユニバーサルデザインが広がっています。
ユニバーサルデザインとは、文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの違いにかかわらず、出来るだけ多くの人が利用できることを目指した建築や設備、製品・情報などの設計、デザインのことです。誰もが利用しやすいものを提供しようという考え方です。
似た概念として、バリアフリーがありますが、バリアフリーは一般的に対象が障害者や高齢者になります。ユニバーサルデザインは、障害者や高齢者に対象を限定せず、もっと広く誰にとっても使いやすいデザインにするという考え方です。バリアフリーよりも、もっと範囲が広くなります。
バリアフリーも、最初は建物や道路などの段差を減らすことだけに焦点が当たっていましたが、段差だけではなく、また移動だけでなく、生活上障害となる物理的、社会的、制度的、心理的な障壁の除去という意味に広がってきました。ユニバーサルデザインも、いろいろなものに広がっています。
オーストラリアに住む、Richard Williams さんは、15年ほど前にクルマの事故に遭い、足が不自由になってしまいました。それまで、健常者だった人が、いきなり事故で不自由な生活を送るようになったのですから、そのショックは想像に余りあります。
特に最初の3年間は、真っ暗闇の中にいるようで、絶望していたと話します。気分も落ち込んで、自分の人生がどうなるか、どうしたらいいか全くわからない状態だったと言います。それまで、人一倍アクティブに、仕事や趣味やさまざまな活動をしていた、Williams さんには、なおさら辛いことだったでしょう。
そんな時に出会ったのが、アダプティブ・マウンテン・バイクでした。障害のある人に適応したMTBということになります。障害の内容や程度は人それぞれなので、決まった仕様があるわけではありません。それぞれの障害に合わせてカスタマイズされることになります。
一般的には、より安定的なトライク(3輪)で、ハンドサイクルのMTBということになるようです。ハンドサイクルとは、腕でペダルをこいで進む自転車です。ハンドルがペダルにもなっており、手で回して進みます。足でこぐ必要はありません。( ↓ 動画参照)
このブログでも以前何度かハンドサイクルについては取り上げましたが、最近のハンドサイクルは進化しており、ロード用だけでなく、MTBやファットバイクなどもあります。多くは電動アシスト機構が搭載され、アシスト力もアップしているので、より多くの人が乗りやすく、楽しめるようになっています。
そのほかにも、必要に応じて、ハンドルの回し方が違ったり、ギヤもトラブルを避けやすい内装式になっていたり、仕様を変更することも出来ます。例えばディレイラーも、止まったままギヤを変えることが出来るなど、足より非力な腕でもパワーが出せたり、扱いやすいよう考えられています。
Williams さんは、それまで全く自転車に乗らない人でしたが、週に6日か7日、自転車に乗るようになりました。そして、このアダプティブMTBに乗るようになったことが、同じような障害を持つ人との新しい出会いをもたらしました。突然、彼は新しい人生を手に入れたように感じたそうです。
今は、自転車に乗って外に出るのが一番楽しい、事故に遭って以来、人生で一番の楽しみになったと話しています。オンロードをハンドサイクルで走るのもいいですが、マウンテンバイクで自然の中、さまざまなコースを走破するのが、さらに楽しいと言います。
彼のものも含め、マウンテン・ハンドサイクルは3輪のため、走行できるトレイルコースは限られます。しかし、最近はその状況も変わりつつあります。3輪でも走れる、
アダプティブ・バイクに対応したトレイルコース
がオーストラリア各地でも増えているのです。
ハンド・マウンテン・トライクに対応したコースと言っても、トレイルコースです。決して平坦だったり、易しいコースというわけではありません。アクセシビリティに考慮して、コースの幅、傾斜、キャンバー角などが一定の範囲内になるよう決められていますが、健常者でも問題なく楽しめます。
つまり、3輪でも走行できるコースですが、十分にチャレンジングであり、スピードも出ますし、十分に難しさもあります。簡単には寄せ付けないようなハードな場所があったりと、MTBのトレイルコースに求められる要素は揃っています。見た目も、言われてみれば幅が少し広いかなというだけです。
言ってみれば、トレイルコースのユニバーサルデザインといったところでしょうか。より多くの人、一般的なMTBだけでなく、いろいろな自転車に乗った人がアクセスできるコースという考え方で、整備が進められているのです。既存のものも、今後改造されていく予定です。
オーストラリアの中にも、まだヘルパーの同行が必要になるようなコースもありますが、いろいろなコースを走れることに、Williams さんは喜びを感じています。そして、健常者も含むマウンテンバイクのコミュニティが、彼らを受け入れてくれたことは素晴らしいことだと感じています。
アダプティブMTBと出会い、同じような障害を持つ仲間と出会い、対応したコースを走れることも喜びですが、Williams さんは、一般のMTBコミュニティの仲間に入ることが出来、かつ自立していられることに大きな満足を感じています。それが、人生をより良いものにしてくれたと感じています。
健常者のマウンテンバイカーには、なかなか気づかない部分かも知れません。ユニバーサルデザインは、単に誰でも利用できるという、表面的なことにとどまりません。特にハンディキャップを抱える人にとっては、人生が変わるような、大きな価値があるということを理解しておきたいものです。
◇ 日々の雑感 ◇
欧州やロシア、韓国などでは感染が再拡大しています。理由はともかく、これだけ日本では減少し安定しているのは幸運なことです。ただこれが続くとは限りません。未だに警戒して外出を控える人もいますが、経済への打撃による影響は今後拡大してきます。今のうちになるべく外出や消費をして景気を回復させておくべきな気がします。
Tweet
Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。
「福祉の問題」カテゴリの最新記事
Posted by cycleroad at 13:00│
Comments(0)
Tag:
アダプティブMTB
ハンドサイクル
トレイルコース
ユニバーサルデザイン
マウンテンハンドサイクル
│
このBlogのトップへ
│
前の記事
│
次の記事
名前:
メール:
URL:
情報を記憶:
コメント:
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)
このページの上へ▲