自転車用品には、昔からある定番のグッズ、とくに変化のない成熟した製品がある一方、最近の素材や加工技術の進化、IT技術などを取り込んで、新しい機能を加えたり、改良を続けるものもあります。従来の製品に飽き足らず、もっと進化させようと考える人が少なくありません。
ヘルメットもその一つでしょう。頭部の保護という基本的な機能、その衝撃吸収効果の向上を目指すだけでなく、もっと違う機能・役割を加えようと考える人たちがいます。これまでにも多々取り上げきましたが、最近見かけたものをいくつか取り上げてみたいと思います。
多いのは、こちら“
FARO by UNIT 1”のようなタイプでしょうか。夜間の視認性に配慮したものです。ヘルメットとは別にライト類を装着するのが一般的だと思いますが、ライト類と一体化したヘルメットです。自転車本体に取り付けるより高い位置になるので、視認性的に有利ということもあります。
最近はLEDも高輝度、低価格、軽量になっていますし、バッテリーの進化で使用可能な時間も伸びています。ヘルメットにライト類を埋め込むのも簡単になりました。こちらは、昼間はファブリックに見える部分を光らせることで面積を広くし、より視認性を高めています。( ↓ 動画参照)
前後のライトに加えて、ストップランプやターンシグナル(方向指示器)としても機能します。LEDとわかる部分は最小限にすることで、スタイリッシュなデザインを目指しました。もちろん、ヘルメットの安全性、通気性などの快適さにも配慮しています。
さらにセンサーを内蔵して、転倒を検知する機能も搭載しています。衝撃を検知して一定時間、キャンセルがないと、自動的にSOSが送られます。もちろん国際的な認証基準に従って設計されており、製造面では定評のある、スウェーデンの、MIPS 社と提携しています。
こちら、“
LIVALL EVO21 Smart Helmet”も同じような方向性です。単に衝撃吸収という機能だけでなく、より積極的に安全性を向上させたいという考え方です。より明るく、軽いLEDによって視認性をアップさせています。360度の視認性を確保し、ライダーか前傾して頭を傾けても見えるようにしています。
ライトは視認性だけでなく、ストップランプ、ウィンカーの機能もあります。通気性を3割向上させ、350gという軽量設計です。やはり落下検出と、SOS発出テクノロジーを備えています。緊急連絡先にテキストメッセージを送ったり、GPSによって正確な位置を示すことも出来ます。( ↓ 動画参照)
これらとは違った機能を加えることを考える人もいます。こちら、“
AIRBAN”は、大気汚染対策機能を考えて設計されました。中国やインドだけでなく、ヨーロッパでも大気汚染が問題になっています。EU全体では、大気汚染で年間50万人も早死にしていると専門機関が警告するほどです。
防護マスクをして自転車に乗るのでは息苦しくなります。そこで、このヘルメットは汚れた外気を吸入し、濾過してキレイな空気にしてから排出します。その空気を鼻と口の前に噴出するようにして、空気による壁、エアーシールドを形成します。これで息苦しくなく、汚い空気を吸わなくてすみます。
オートバイのフルフェイスのヘルメットのように見えますが、非常に軽量で、口元の部分も邪魔になりません。このフレーム構造にも助けられ、空気の流れを分離し、汚れた空気を吸わずにすむようにしています。大気汚染に悩む都市型のヘルメットと言えるでしょう。
こちら“
Flip-Clip Go”は、自転車を降りてからのヘルメットの持ち歩きを改善しています。かぶっている時はいいですが、降りてから持ち歩くのに邪魔だと感じている人は多いでしょう。カバンなどに入れるにしても、意外とかさばるという事実に気づきます。
折りたたみ式のヘルメットというのは、これまでにもありましたが、こちらはヘルメットの上部がひっくり返るというアイディアで、体積を半分にしています。厚さは81ミリになり、重さは410gと他の折りたたみ式よりも軽量だと言います。環境負荷にも配慮しています。
視認性や大気汚染、持ち運びというのは理解できますが、こちらは果たしてどれほど有効なのか測りかねる部分があります。“
savAR”はAR、拡張現実とAIを使って、危険を回避するというヘルメットです。ARによって、ヘルメット越しの視界にアラートが出ます。
乗り手の死角も含めた360度の空間をカメラで監視し、認識します。AIは、乗り手の乗車行動を学習し、後方からの交通、または対向車による危険を予測し、衝突を回避する行動をとるよう、AR導波管ディスプレイ技術で知らせたり、音声やアラームによって警告します。リヤビューの表示も可能です。
音声認識で、ヘルメットに指示を与えることも可能です。例えば音声でウィンカーを操作し、後続車に伝えることも出来ます。衝撃センサーとも連動し、映像キャプチャーやライドレコーディング機能によって、事故原因などの証拠も残します。近未来の新しいタイプのヘルメットとして提案しています。( ↓ 動画参照)
ヘルメットは、基本的に頭部を守るというシンプルな道具ですが、だからこそもっと付加価値を加えたいと考えるのでしょう。そんな人が後を絶ちません。同じかぶるなら、便利で有用、よりメリットがあるものを選びたいという人もあるでしょう。ヘルメットは多機能に進化していきそうです。
◇ 日々の雑感 ◇
岸田首相は「新しい資本主義」という大風呂敷を広げましたが、中身はこれから「新しい資本主義実現会議」で決めるそうです。何を意味しているのかピンと来ないのも道理です。目標を掲げるのはいいですが、中身のない抽象的な言葉だけならば寝言と変わりません。大した考えもないまま言った無責任なフレーズでないといいのですが。
Posted by cycleroad at 13:00│
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