東京・池袋で起きた、母娘が死亡した暴走事故は、加害者が旧通産省の幹部だったこともあってか、マスコミで大きく取り上げられました。2019年に起きた事故ですが、その後の裁判の経緯なども詳しく報じられたため、多くの人が記憶しているところでしょう。
社会的な反響も大きく、これを契機に免許を返納する高齢者が増えました。しかし、その後も高齢ドライバーによる事故は後を絶ちません。増えたと言っても免許を返納する人は一部に過ぎませんし、高齢化社会で、高齢の運転免許保有者の数自体が増えています。
最近だけでも、11月に大阪・狭山市で高齢ドライバーの運転するクルマが暴走してスーパーマーケットに突っ込み、1人が死亡、2人が重傷を負った事故が記憶に新しいところです。その後も、12月には愛知・東浦町で散歩中の保育園児の列に高齢者の運転するクルマが突っ込み、運転者が意識不明の重体となっています。
東京でも80代男性の運転するクルマが、スクールバスなどと次々と衝突し、子どもを含む10人が怪我をした事故が起きました。静岡・菊川市では、登校中の小学生の列に81歳のクルマが突っ込み、5人が重軽傷を負い、しかもその場から逃走するという、ひき逃げ事件が起きています。( ↓ 動画参照)
統計によれば、75歳以上のドライバーの事故は、75歳未満の2.2倍も起きています。死亡事故を起こした人の認知機能検査の結果、39%が認知機能低下の恐れありと診断されていますし、踏み間違えなど運動操作不適、安全不確認、漫然運転、脇見、判断ミスなど、起こるべくして起こっていると言えるでしょう。
政府は更新時の講習を強化したり、ドライバーの運転をサポートするクルマ、いわゆるサポカーへの乗り換えを勧めていますが、衝突軽減ブレーキや、踏み間違えによる急発進抑制装置などが搭載されていても事故が完全に防げるわけではありません。あとは、自主的な免許返納を求めるしかありません。
ただ、家族や身近な人が返納を勧めても、頑なに拒否する高齢者も多いと聞きます。住んでいる場所によっては、食料品の買い物や通院などのため、どうしてもクルマが必要という人もあるでしょう。免許を返納するわけにはいかないという人も多いと思われます。
高齢ドライバーが免許を返納し運転をやめることは、想定される被害者だけでなく、本人にとっても、家族など関係者にとっても一番良い方法でしょう。しかし、なかなかそれが出来ないから解決できない、高齢ドライバーによる重大事故がなくならないということになりそうです。
個人的には、自転車の活用も有力な選択肢ではないかと考えます。もちろん、これで全て解決とは言いませんが、免許返納できる人が増えるはずです。ただ、自転車では、あまり荷物が運べないとか、脚力・体力的にキツイ、雨が降った時に困るなど、現実的な解決法にならないと考える人が少なくないようです。
それならば、ベロモービルではどうでしょう。日本では馴染みがありませんが、クルマのようなキャビンのある自転車です。ペダルをこぐ必要はありますが、昨今は電動アシストがついているので、体力・脚力に自信がなくてもラクに走れます。坂だって上れますし、雨でも濡れません。
例えば、こちら“
Podbike Frikar e-bike”です。コンパクトなので誰でも運転しやすく、狭い道でも通れます。小さいながらも後部座席があり、荷物を載せたり、なんなら子どもの送迎もできます。4輪なのでフラついたり、転倒することもなく安定しています。駐車スペースも小さくてすみます。( ↓ 動画参照)
もちろん、これで事故が起きないわけではありません。しかし、アシスト機構は、国によって多少違いますが、時速24キロ程度以上出ないようになっていますし、ペダルを踏み間違うこともありません。万一、歩行者と衝突したとしても、クルマと比べて被害は格段に小さくなるはずです。
リカンベントスタイルなので、イスに座るスタイルでペダルがこぎやすいのも長所でしょう。遠距離はともかく、生活圏を走行するなら十分に足りると思われます。しかも、運動になるので、高齢者の健康増進にも貢献します。運動不足から来る、ロコモティブシンドローム防止にも寄与するでしょう。
ペダルをこぐことで、腸腰筋などのインナーマッスルが鍛えられ、歩行中のつまづきや転倒防止にも寄与すると言われています。これも大腿骨骨折などで寝たきりになることが多いとされる高齢者にはメリットです。さらにペダリングは認知症予防にも役立つと言われますから、一石何鳥になるかわからないほどです。
どうしてもペダリングが無理な人には、フル電動のベロモービルというのもあります。この場合は自転車扱いになりませんが、原付バイク免許にダウングレードすることが可能でしょう。スピードが出ないように制御されるタイプなら、やはり事故防止、事故被害の軽減につながるでしょう。
このブログでは、これまでも多くのベロモービルを取り上げてきました。欧米では、ベロモービルはクルマと比べて環境負荷を軽減する、温暖化ガスを減らせるといった部分で注目されます。エコでランニングコストも安いため、自転車通勤の手段として導入する人もいます。
日本の場合も環境的なメリットはあるわけですが、高齢ドライバーの事故防止という観点で、もっと利用されてもいいのではないでしょうか。同様の欧米発のベロモービルはいろいろ売りだされていますが、日本では馴染みがないからか、そのメリットが認識されていないためか、一向に関心が高まらないのが残念です。( ↓ 動画参照)
日本の場合、一つ問題となるのが、歩道走行でしょう。法律上の普通自動車にならないので、歩道は走行出来ません。歩道走行したら、歩行者が危険です。車道走行することになりますが、ふだん自転車は歩道という人には抵抗があるかも知れません。
しかし、そもそも自転車は車両です。車道走行が当たり前です。クルマからベロモービルに乗り換えると考えれば、車道走行も自然でしょう。クルマと比べてボディの強度が劣るため、他のクルマとの事故は気になるかも知れませんが、人を死傷させるリスクは下がるわけで、何を優先するかです。( ↓ 動画参照)
普及には、自転車の走行空間、自転車レーンなどの整備も必要でしょう。欧米の都市では、環境負荷や健康増進、渋滞や大気汚染対策などの観点で自転車の活用を進めており、自転車インフラの整備に注力しています。日本はそれに加えて、高齢ドライバーの事故対策にもなるわけで、もっと力を入れてもいいはずです。
日本の自転車メーカー、ベンチャー企業などにとって、高齢ドライバー対策という観点で参入する余地は十分にあるのではないでしょうか。欧米から輸入して販売することも考えられます。環境に関心の高い若い世代にも支持されるかも知れません。ベロモービル、もっと注目されていいような気がします。
◇ 日々の雑感 ◇
岸田首相の唱える「新しい資本主義」、ずいぶん大上段ですが、悪く言えば抽象的です。今イチよくわかりません。分配重視はいいですが、成長が無ければ絵に描いた餅です。漠然とした思い込みで下手な政策を打てば日本経済にとって惨事になりかねません。自身に確固とした考えと中身があるのでしょうか。具体的に説明すべきです。
Posted by cycleroad at 13:00│
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