January 09, 2022

運動用具としての自転車の形

自転車は移動だけでなく、運動の道具でもあります。


よく言われるように、自転車に乗るのは優れた有酸素運動であり、身体の中で一番大きい足の筋肉を動かすことで、効率よくカロリーが消費されます。ジョギングなど足で走ると、着地の際のショックが体重の何倍にもなるのと比べ、ヒザなどへの負担が少なく、誰でも続けやすいのも特徴です。

下半身だけしか使わないようにも思えますが、実は全身の7割以上の筋肉を使っていると言われています。大腿四頭筋やハムストリングスなどだけではありません。ペダルを踏みこむのに背筋も使いますし、ハンドルを引きつけるために腕の力も使います。腸腰筋などのインナーマッスルも使っています。

ただ、主に動かしているのは足なので、下半身と比べると上半身をあまり使っていないように感じるのも確かでしょう。自転車が好きでよく乗っている人の中にも、その点を物足りなく感じている人があるかも知れません。ドイツの機械工学のエンジニアである、Martin Kraiss さんもその一人です。

彼はエンジニアであり、人体や筋肉など医学や生理学の専門家ではありません。でも、スポーツ大好き人間です。家から近い、シュヴァーベンジュラ山脈(Schwabische Alb)という低い山脈をMTBで走破するのを含めて自転車に乗りますが、それだけが趣味ではありませんでした。

水泳もしますし、クロスカントリーもすれば、格闘技などもします。自転車は好きですが、他のスポーツと比べると、上半身と下半身のバランスが悪く、ストレスを感じることがありました。水泳のような全身運動からすれば、自転車が7割の筋肉を使うとは言え、下半身のウエイトが強いのは確かでしょう。

VaribikeVaribike



そこで、もっと上半身を使う自転車が出来ないものかと考えました。一般的な自転車と違って、もっと上半身を使えば、身体のパワーをより効率的に使うことになるでしょう。例えば長距離のツーリングでも、足を休ませることが出来たり、使う筋肉を分散させることも出来そうです。全身のバランスもよくなるでしょう。( ↑ 動画参照)

さまざまなタイプの自転車を試行錯誤しながら開発した結果、“Varibike”のコンセプトが最適だと結論に達しました。腕も足も使う自転車です。足の不自由な人でも乗れるハンドバイクという自転車がありますが、言ってみれば、普通の自転車とハンドバイクを合わせたような自転車です。

VaribikeVaribike

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最初は2005年、その後もいろいろな特許を取得し、人間工学的にも最適と評価されました。2010年に最終的なジオメトリを完成させ、2011年に、Varibike GmbH 社を設立、2012年から量産、販売するまでになりました。各種の発明展などでも表彰されています。( ↓ 動画参照)

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その後、その三輪版、“Varibike Trike” を開発しました。トライクのリカンベントです。言ってみれば、普通の自転車にハンドサイクルを加え、リカンベントスタイルにしたわけです。そして今般、そのアップグレードバージョンとして、“Varibike Extreme”を開発しました。

これは、上記の組み合わせに加えて、ローイングバイクもプラスしたようなモデルです。ローイングバイクとは、ボートをこぐようなスタイルで進む自転車です。もちろんボートと違って前に進みますが、ボートをこぐような身体の動きで陸上を走行できる自転車です。

VaribikeVaribike

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下の動画を見ていただくとわかりますが、一台でいろいろな、『こぎ方』が出来ます。手足を一緒に動かしてもいいですし、手か足、どちらかだけでも進みます。腕を左右交互に動かす形でもいいですし、両手を同時に動かすスタイルでも進みます。なんなら、片手だけでも推進力が得られます。

足も同じです。普通の自転車のように、左右交互に動かすペダリングも出来れば、同時に動かすことも出来ます。そして、ローイングバイクのように、ボートをこぐようなスタイルでも進むわけです。より全身を使って推進力を得るようになっているのは間違いないでしょう。( ↓ 動画参照)



従来のローイングバイクは、シートがスライドするようになっているものが多く、よりボート漕ぎに近い一方で、車体が長くなってしまいます。それらとは違って、シートの位置は固定され、車体の長さが同じという点も、扱いやすいと言えるでしょう。他のスタイルとの切り替えも簡単です。

もちろん、まだこの、“Varibike”や、“Varibike Trike”に乗る人はごく限られています。私は乗ったことがないので評価は出来ませんが、乗ってみてとても好印象を持つ人、高く評価する人、普通の自転車から、こればかりになった人などもあるようです。

VaribikeVaribike

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どうしても普通の自転車しか乗ったことがないと、足と手を同時に動かすという動作に違和感を感じますが、慣れなのでしょう。全身運動というばかりか、ずっと同じ姿勢ではなく、動きを変えることが可能になることによって、身体のどこかが痺れたり、疲れたりすることも防げるようです。

乗車姿勢がリカンベントということもあると思いますが、これまでのように、肩や首が凝らなくなったとか、腰痛がよくなったという声もあります。60キロを自転車通勤していたけど、ラクになった、乗っていて楽しくなったなどの感想も載せられています。ちなみに、屋内用のエアロバイクバージョンまであります。

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下半身が中心と言われればそうですが、普通の人は自転車とはこいういものだと思っています。水泳などと比べてバランスが悪いなどと考える人は少ないと思います。また、さまざまな種類に細分化していくのが一般的な自転車を、逆に足していこうという発想もユニークと言えるでしょう。

この“Varibike”が今後、世間一般にどれほど普及していくかはわかりません。自転車に全身運動とか、身体のバランスを求める人ばかりではないので、ニッチな自転車に留まる可能性は高いと思います。しかし、運動の道具としての自転車には、まだまだ新たな展開の余地があるのかも知れません。




◇ 日々の雑感 ◇

医療関係者の感染で人員不足が懸念されます。先月からあれだけ指摘されていたのに、医療関係者のブースター接種すら進まなかったのは、いつものことですが厚労省の硬直的な考え方や独善的な姿勢のせいでしょうか。エッセンシャルワーカーにも及べば社会は麻痺します。感染症指定の見直し等抜本的変更が必要な時なのでは。

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