March 28, 2022

乗り続けるのを阻止する要因

自転車に乗る人は増えています。


コロナ禍で増えたのは世界的な傾向です。公共交通を敬遠したり、ロックダウンやテレワークによる運動不足解消などがきっかけになったようです。コロナ以前からも自転車ブームという面がありましたし、環境負荷や持続可能性への意識から、移動手段を変えた人もいるでしょう。

しかし、乗り始める人がいる一方で、乗るのをやめてしまう人もいます。運動が続かなかった人、初めは面白かったけど飽きてしまった人、違うスポーツを始めた人、理由はいろいろだと思います。冬の期間は寒いからとか、雪が降るからといった理由で中断したものの、春になっても再開しない人もあるに違いありません。

乗るのが億劫になったとか、ただ、なんとなくとか、再開しない理由もいろいろあるでしょう。気分の問題かも知れません。でも、もしかしたら、そこには医学的な理由が作用している可能性があります。運動をしない期間が続くと、より運動をするのが困難になるというのです。

Piezo1Piezo1

今年1月に、“Journal of Clinical Investigation”という専門誌に発表された“Piezo1”というタンパク質に関する研究です。今世界中で関心の高い、メッセンジャーRNAワクチンなどの研究と比べて、地味なのは否めませんが、学術的には興味深いところがあるようです。

専門家の間では、細胞が機械的な刺激に影響されることは広く知られています。その仕組みはまだ謎に包まれている部分もあるのですが、近年見つかった「メカノセンサーチャネル」が関与していると見られています。その一つが、タンパク質、“Piezo1”です。

今回の、Fiona Bartoli 教授らの研究によれば、この物質が内皮反応に寄与していると言います。運動をすることでこれが活性化され、筋肉に血液を運ぶ毛細血管をつくります。逆に、運動しないと毛細血管の密度が低下し、筋肉の活動がより困難になり、可能な運動量の減少になるというのです。

WHOWHO

ざっくり言うと、運動をやらなければやらないほど、運動が難しくなるということです。実感としては周知のことに感じますが、その仕組みが解明されたということのようです。ブランクがあるほど、再開した時にパフォーマンスが上がらず、同じ量の運動をこなすのが困難になり、余計に疲れてイヤになるといった感覚でしょうか。

ただ再開するだけが、意外にハードルが高いということでしょう。単に億劫とか怠け心といった気分の問題だけでなく、そうなる背景には、医学的な理由もあったことになります。運動を続けていれば何の問題もないのに、一度中断すると、再開しなくなりがちと言えるでしょう。

中断する要素があると、やめてしまう人が多いということになりそうです。乗るのも、やめるのも個人の勝手ですから、どうこう言うつもりはありません。ただ、もし運動不足の解消で始めたのに、また運動不足に戻ってしまうとしたら残念な話であり、健康的には問題となります。

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WHO(世界保健機関)によれば、世界の成人のうち、14億人以上が運動不足であり、生活習慣病、がん、認知症などにかかるリスクが高くなると指摘しています。運動不足病という病名はありませんが、それが原因で結果として死亡に至る人も多く、世界の人の死因の5位に相当するという話もあります。

単なる運動不足と言うなかれ、運動不足によって世界で5.6兆円の医療費が失われ、1.4兆円の生産性低下を招くなど、大きな経済損失となっています。世界中で運動不足を解消すれば、年間で最大530万人の死亡を減らすことができると、WHOでは試算しています。

コロナ禍で、この感染症によって死亡した人に注目されますが、コロナ禍で運動不足になることで、非感染性疾患による死亡も増えることが懸念されているのです。忙しかったりして運動不足の人は多いと思いますが、運動不足は間接的に死を招くと、WHOは警鐘を鳴らしています。

Ciclovia, www.streetfilms.orgCiclovia, www.streetfilms.org

コロナと比べて、運動不足が注目されないのは仕方ありませんが、WHOは2030年までに身体不活発を15%減少させることを目標に行動計画を立て、ガイドラインを策定しています。身体活動は、家事や移動、仕事などに伴う日常の活動量を全て合わせたものですが、指針を満たすために運動を意識的にすることが必要です。

WHOは、さまざまな提言を行っていますが、運動を呼びかけるだけでは人々が動かないことも理解しています。そこで、自転車に乗りやすい環境の整備も有効な手段だとしています。ただ、自転車インフラを整備しただけでは、誰もが乗るとは限りません。

そこで必要だと指摘しているのが、思わず自転車に乗りたくなるような街づくりです。その例として挙げているのが、コロンビアの首都ボゴタのシクロビアです。シクロビアというのは、休日に実施される大規模な自転車天国、歩行者天国のようなものです。でも、日本であるような、単なる歩行者天国ではありません。

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ボゴタ市民の約30%、200万人以上の人々が楽しむという大規模なものです。これだけの多くの人が乗る、思わず乗りたくなる仕組みと言えます。シクロビアについては、過去にも取り上げたので、詳しくはそちらを見ていただくとして、こうした仕組みによって運動不足解消を図ることが重要と指摘しています。

個人的に思うのは、ただ自転車に乗り始めるのではなく、何か目的があるといいということです。自転車通勤とか、何かの趣味の教室などに通うとか、継続的に自転車で移動する目的があると習慣的に乗るでしょう。なんとなく中断してしまって、乗らなくなることも防げるに違いありません。

何かの理由で、継続的に乗る必要を作ってしまえば、“Piezo1”が不活性化することもないはずです。エアロビクスでもスイミングでも運動は何でもいいわけですが、自転車は運動であると同時に移動も出来るので、この部分を上手く使うのが、運動を続けるコツではないかと思います。




◇ 日々の雑感 ◇

日本でもよく使われているロシア製セキュリティソフト、カスペルスキーを使用中止する人が増えているようです。アメリカが安全保障上の脅威に指定し、使用に懸念があるだけでなく個人で出来る脱ロシアなのかも知れません。

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