最近は、ごみの減量が当たり前のように意識されます。
なるべくゴミを減らすことで、環境への負荷を減らし、省エネや省資源化を進め、温暖化ガスを減らすことにもつながります。海洋プラスチック汚染も問題です。例えば、マイバッグを持ち歩いてレジ袋を使わないようにすることが広く呼びかけらています。
企業も過剰包装を減らしたり、詰め替え用の簡易包装にしたり、量り売りで販売することなどを検討したりしています。なるべく使い捨てでない容器にしたり、リユース、リサイクルを進めたり、食品の食べ残しや廃棄を減らす、フードロス問題にも関心が高まっています。
とは言え、依然として大量のゴミが排出されているのも事実です。その中で、意外に多い割合を占めるのが生ごみです。地域や調査によってもバラつきがありますが、家庭ごみや飲食店などの事業ごみの全体では、30%から45%くらいを占めると言われています。
ゴミ処理を担当する各自治体も、ゴミの減量には頭を悩ませており、広く事業者や家庭に呼びかけています。生ゴミの減量のため、生ゴミ処理機の購入費を補助したり、生ゴミ減量やリサイクルに取り組む市民団体に助成金を出すなどしている自治体も少なくありません。ただ、あまり進んでいないのが現実です。
さて、ごみの処理が問題なのは海外でも同じです。ゴミを燃やせば温暖化ガスを増やしますし、焼却施設の不足などから埋め立て地の不足につながる地域もあります。特に生ゴミは水分を多く含むこともあって、焼却の際の燃焼効率が落ちるのも問題となっています。
減量には、コンポストで生ゴミを堆肥にして使うのが効果的です。しかし、なかなか家庭や事業所などでの堆肥化は進んでいません。手間がかかるとか、処理する場所が無い、堆肥にしても使い道がない、庭で何かを栽培するくらいでは使いきれないといった理由があるからでしょう。
アメリカ・ロードアイランド州の、“
Groundwork Rhode Island”は、この問題を解決するため、各家庭や事業所などで堆肥化するのではなく、地域で共同で処理する枠組み、“
Harvest Cycle Compost”を進めています。各家庭やレストラン、事業所などで出る生ゴミを収集して一緒にコンポストで堆肥化しようとするものです。
この、“Groundwork Rhode Island”は、非営利のコミュニティをベースとした環境団体です。ロードアイランドで、より健康的で回復力があり、持続可能な都市を目指すためのコミュニティです。同時に、ロードアイランドの都市住民に、雇用や経済的機会を生み出すような活動をしています。
都市の環境を良くする活動をすることが雇用やビジネスを生んだり、共同することで経済的な利益を生むとしたら一石何鳥にもなります。同時に、地域の高校生などに環境教育をしたり、アルバイトの機会を提供するといったプロジェクトも進めています。そうした事業の中の一つが、“
Harvest Cycle”です。
収穫された作物を食べ、出た生ゴミを堆肥として、また収穫のために使う。ハーベストを循環させる、サイクルする仕組みです。もう一つ特徴的なのは、市内の家庭やレストラン、商業施設などからの生ゴミの収集に自転車を使っていることです。こちらのサイクルの意味もあるわけです。( ↓ 動画参照)
トラックを使うより環境に負荷をかけないだけでなく、カーゴバイクとトレーラーを使ったほうが小回りがきき、便利なのです。最近は、フードデリバリーなどで自転車による配送が使われますが、配送に使うなら収集に使うのも可能、場合によっては便利で効率的なのです。主に電動アシスト付き自転車を使っています。
実は、この“Harvest Cycle”、ペディキャブや自転車宅配などを手掛ける、“Sol Chariots”という組織が収集作業の母体となりました。自転車タクシーや自転車宅配だったのが、“Groundwork Rhode Island”が運用する、カーゴバイクやトレーラーを使って堆肥をピックアップする“Harvest Cycle”となりました。
家庭や店舗、事業所などからの生ゴミから出来た堆肥は、緑地や共同の都市農場などで使われます。希望する人には出来た堆肥が配られます。自分で堆肥を作る手間が省けますし、使わなければ引き取ってもらえるわけです。そのぶん自治体が回収するゴミは減らせることになります。
運ぶ先は、地域のコミュニティセンター、都市農園、緑地などに設けられた堆肥処理場所です。生ゴミに木の葉や廃材のウッドチップなどを合わせ、それらを分解する細菌や微生物が効果的に働く温度や状態にします。良い堆肥にするにはノウハウがあり、期間も必要で、ただ放置しておけばいいわけではないのです。( ↓ 動画参照)
良質な堆肥は、農産物の生産者にとっても貴重です。化学肥料を購入するのは簡単ですが、良質な有機肥料によって栽培された作物は、有機栽培の農産物として味もよく、高く売れます。このため、堆肥を手に入れられる農園や園芸業者にとっても、コスト面も含めてメリットがあるわけです。
2021年に、この仕組みで15万2千ポンド、約69トンの生ゴミを収集しました。収集員は、年間でのべ3千6百マイル、約5千8百キロの距離を自転車で走行した計算になります。今後事業は拡大される計画で、この量、距離数は大幅に増えることが見込まれています。
ゴミの減量や生ゴミの堆肥としての再利用を考える意識の高い住民には便利なサービスでしょう。雇用や都市農場のコスト削減など、ビジネスや地域としてのメリットも多いはずです。しかも、トラックを使わないため、収集作業で余計に環境負荷を増やすこともない、なかなかスマートな仕組みと言えそうです。
この事業の創始者やコーディネーターなど関係者の多くは、実はサイクリストであり、自転車が使われるのは必然だったのでしょう。市内の自転車インフラの改善を促す活動などにも熱心です。環境を憂う人が自転車に乗るのか、自転車に乗るから環境を考えるようになるのかわかりませんが、自転車と環境の相性はいいようです。
◇ 日々の雑感 ◇
3年ぶり規制のないG.Wが始まりました。海外へ行く人もあるようですが、日本もそろそろ外国人観光客の受け入れを考えてもいいのではないでしょうか。円安でインバウンドの経済効果は大きくなり景気対策にも有効でしょう。
Posted by cycleroad at 13:00│
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