May 03, 2022

女性たちには選択肢が少ない

自転車の世界にもジェンダーギャップがあります。


日常の移動手段としては女性も変わらず自転車に乗りますが、スポーツバイクに乗るのは圧倒的に男性が多いのは確かでしょう。最近乗り始めた人を見ると、女性の増加率が高くなっている国も少なくないようですが、全体の数としては男性のほうが格段に多いは明らかです。

自転車レースの世界も男性優位です。例えば、ロードレースの最高峰、ツール・ド・フランスには男性部門しかありません。自転車レースでも男女平等を実現するべきだとの声もあるにはありますが、実際問題としては、自転車が男性のスポーツのようになっています。

子どもの頃は男女とも乗りますが、10歳程度を境に女性は乗らなくなるという傾向もあります。乗り物に対する興味や屋外での運動指向に男女差があると指摘されていますが、その背景には、慣習や周囲の目、文化的な固定観念のようなものがあるのかも知れません。

Hartley CyclesHartley Cycles

ビジネスとしての自転車の世界でも、男性が多いと思われます。販売はともかく、技術系はそうでしょう。スポーツバイクを趣味とする人の中には、自分用にオーダーメイドで自転車をつくる人がいます。フレームビルダーに頼むわけですが、このフレームビルダーもほぼ男性と言っても過言ではありません。

一般的に、機械とか設計、製造といった分野に興味を示すのは男性が多いということがあるのでしょう。決めつけるつもりはありませんが、大学や専門学校で専攻する人の男女比も大きく偏っているはずです。しかし、女性のフレームビルダーがいないわけではありません。

Georgena Terry

Georgia Terry さんは女性ビルダーのパイオニア的存在と言われています。1980年代から自転車をつくり始めました。2歳の時にポリオを患い、麻痺は残ったものの活発な子どもでした。大学では機械工学の学位とMBAを取り、一般企業に勤めながら自宅地下室でフレーム製作を始めます。

自転車のフレーム自体に興味があったのですが、当時、女性向けの自転車はほとんど売られていませんでした。男女兼用の小さいサイズに乗るしかありませんでした。ほかに選択肢がなかったわけですが、彼女は地元の女性自転車乗りたちから、自転車をつくって欲しいと頼まれるようになりました。



スポーツバイクが好きで乗る女性でも、筋肉痛になったり、腰が痛くなったりと、市販の自転車の乗り心地に、常々不満を持っていたのです。そこで、Terry さんは解剖学から研究し、男女では身体のつくりが違うことに気づきます。腕や胸の筋肉量が違うなど、筋肉の付き方で重心も変わってくるのです。

男性用の自転車に乗ると、細かな部分が理由で不快感や不具合が出てきます。彼女は女性にフィットする自転車が必要だと痛感し、そこに可能性を感じて女性用自転車の設計製作会社を立ち上げ、ビルダーとして活動を始めます。それが今は、自転車だけでなく用品やアパレルまでカバーするブランド、“TERRY”となっています。

Beaumont BicycleBeaumont Bicycle

Beaumont Bicycle”を立ち上げたビルダー、Elizabeth Colebrook さんも女性に合ったフレームが必要だと考える一人です。彼女は女性フレームビルダーというだけでなく、作業療法士として働いた経験を持つという、おそらく世界にも稀なビルダーでしょう。

希望する人には、一人ひとりに合ったフレームをつくりたいと思っています。今は女性だけでなく、成人でも低身長になる軟骨無形成症や小人症の人など、制限のある人々にも対応しています。高齢のクライアントにも、それぞれの痛みのある部位への負担を軽減するフレームを制作しています。



Moth Attack”ブランドで活動する、Megan Dean さんも同じです。出来るだけ多くの人の悩みや不満を解消し、自転車に楽しく乗ってもらうことが目標です。あまりにも台数をつくりすぎて、腱炎を患うなどしたこともありましたが、喜んで乗ってくれる地元の人たちを大切にしようと考えています。

Moth AttackMoth Attack

UNTITLED Cycles”の、Jackie Mautner さんは、女性に限らず、その自転車でどうしたいかを大事にします。どんな場所で、どんな目的で、どんな乗り方をするかが重要です。それによって設計やデザインには無数の選択肢が広がります。女性ならではの感性や考え方も大切にしたいのです。

Jacqueline Mautner さんは自転車通学の頃から自転車が大好きになり、建築の分野で働きながらも自転車スポーツに打ち込み、好きが高じてフレームビルディングの道に向かいました。男女でどうということよりも、自転車を生み出すのが好きです。

UNTITLED CyclesUNTITLED Cycles

Schon Studio”のビルダー、Danielle Schon さんは子どもの頃からモノ作りが大好きでした。子どもなのにクルマのオイル交換に興味を持つような女の子でした。働きながら溶接の技術を習得する学校に通っていた時には、女性の級友は1人くらいしかいませんでした。

SchonStudioSchonStudio

クールなフレームをつくりたいと思っています。男性か女性かは関係ありません。実際にはスポーツバイクの世界でも、その製造の世界でも女性は圧倒的少数派ですが、気にしていません。正直、不平等を感じたり、業界で歓迎されないと感じる時もありますが、それを跳ね返そうと考えています。

Atelier Pariah”の、Swanee Ravonison さんはフランス南部の小さな町で育ちました。6歳で自転車に乗り始めましたが、自転車友達の中では常に唯一の女性、そして唯一の有色人種でした。ロードレースにも励みましたが、決して恵まれた環境で育ったわけではありません。

Atelier PaRiaHAtelier PaRiaH

彼女は新品の自転車を所有したことがありませんでした。いつも古いものを修理していました。そんな彼女にとって、美しいバイクを手に入れる最良の方法は、自分でつくることだったのです。正直、人種差別という逆境もありましたが、カスタムビルドショップのオーナーという夢を実現しました。

フランスでもスポーツとして自転車に乗る女性は少ないと感じています。一般的に、男性は素敵な自転車を手に入れますが、女性はサイズが合わなかったり、重すぎたり、満足出来る一台を手に入れられないのも理由でしょう。しかし、彼女は彼女のつくった自転車に乗れば、人生が変わると考えています。

Hartley CyclesHartley Cycles

Hartley Cycles”と“ISEN Workshop”の、Caren Hartley さんは、小柄な乗り手向けのバイクが評判のビルダーです。彼女自身はクライアントが乗りたいバイクをつくりたいと考えているだけです。ただ、サイクリストの一般の比率にもかかわらず、注文の半分は女性が占めています。



少ないながら、フレームビルダーとして活躍する女性がいます。お客の女性は、男性のように趣味が高じてと言うより、なかなか合うサイズがなくてという人も多いようです。市販のメーカーのモデルにも、女性向けはありますが、選択肢が少ないのは確かでしょう。女性にこそ女性向けのフレームビルディングが必要なのです。

スポーツとして乗る女性が少ないから、市販のモデルに女性の選択肢が少ないのは、マーケティング的に仕方ないのでしょう。でも、満足出来るモデルが市販されていないから、スポーツバイクに乗る女性が増えないという面もありそうです。ジェンダーギャップを埋めるべく頑張る女性ビルダーに期待したいと思います。




◇ 日々の雑感 ◇

天気もよいので連休中は自転車でという人もあるでしょう。むしろ都心部が空いていて走りやすかったりしますね。

このエントリーをはてなブックマークに追加

 デル株式会社


Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。



 楽天トラベル

 
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)