日本では、祝日法という法律で国民の休日に定められており、『こどもたちの人格を重んじ、幸福をはかるとともに、お母さんにも感謝する日』とされています。子どもは社会の宝であり、国の将来を託し、その健やかな成長や幸福をはかるべき存在であることに、ほぼ異論はないでしょう。
近年は少子化が懸念されていますし、子どもに対する虐待や貧困、教育と経済的格差、犯罪、ゲームやネットなどによる発達の阻害やいじめ、運動不足や体力低下、その他さまざまな課題が山積していると指摘されます。子どもを取巻く環境について考えることは、大人の問題でもあります。
子どもは成長途中であり、特に低年齢の場合は問題を自覚していなかったり、客観的な判断をしたり、自分の意見を主張したりすることが必ずしも出来ません。そこを汲み取ったり、配慮したり、斟酌して考え、解決をはかっていくのは大人、そして社会の責任です。
しかし、大人だけで勝手に推測して判断するのではなく、当事者である子どもの意見をもっと聞くべきではないのではないかと考えた組織があります。オランダ・アムステルダムを拠点に活動する、グローバルな非営利団体でNGOの、“
BYCS”という団体です。
サイクリングを通じてコミュニティ主導の都市の変化をサポートする団体です。自転車は都市を変革し、都市は世界を変革するという信念に基づいて行動しています。2030年に向けて、全ての都市での移動の50%を自転車によるものにしようという野心的な目標を掲げています。
それが、より繁栄をもたらし、持続可能な都市につながると信じています。このため、行動の変容を促すイニシアティブ、調査、ワークショップ、意識向上キャンペーン、ネットワーク構築など、さまざまな活動をしています。国境を越えたアドボカシーを主導しています。
自転車に乗る人を増やすことで、渋滞や大気汚染を減らし、都市の環境や市民の健康を増進するのに加え、経済面でも恩恵をもたらすのが目的です。地域の課題に取り組み、新しいアイディアを実践し、行動を起こすために他の人々と協力し、全ての人にとって良い自転車環境を獲得するためのイノベーションを推進するものです。
自転車での移動を増やすことは、クリーンで利用しやすいモビリティソリューションを提供するだけではありません。人々の精神面も含めた健康増進に寄与し、地域社会のつながりや結束を促進し、もちろん環境を保護し、持続可能な社会、経済を築いていくことでもあります。
その活動の一つに、『自転車市長』があります。世界中の都市に自転車市長という名のリーダーを誕生させ、都市での自転車の活用を加速させることで、今の自転車人口に加え、さらに10億人を自転車に乗せようという世界的な取り組みです。このブログでも以前取り上げました。
もちろん公的な市長ではなく、市民の投票で選ばれる役職ではありません。自転車市長は、公共と民間の領域を一つにまとめて、目標に向け推進するための「触媒」の役割を果たします。地域の自転車活用の推進を図るためのリーダーであり、指導者として活躍します。
“BYCS”は、
子どもや幼児、保護者や介護者のためのサイクリング都市という考え方を提示しています。社会の最も弱い立場の人や年少者が、自転車を安全、簡単、快適、そして楽しく移動できるようにするという考え方です。これまで、あまり考えられてこなかった部分と言えるでしょう。
そのための新しいプロジェクトが、“
Bicycle Heroes”です。アクティブモビリティのために、子どもや若者の声を聴こうというものです。子供たちも、自転車での移動、自転車に乗る生活について、独自の視点や感想、考えを持っています。しかし、それを大人から尋ねられることはありません。
例えば、自転車レーンなど都市の自転車走行空間については、大人の視点、大人の利便性、経済合理性などから決められてきました。もちろん、安全や安心、快適さなども考慮されますが、それは大人にとってのものに過ぎません。子どもにとってのそれらは考慮されてきませんでした。
例えば、快適で安心して安全に走行できる自転車レーンも、もしかしたら子どもにとっては、走行する人たちのスピードが速過ぎて、決して安心・安全・快適とは限らないかも知れません。大人にとってのそれらと、子どもにいってのそれらは、自ずと違ってくる可能性があります。
少なくとも、住宅街とか通学路など、子どもが利用する場所については、もっと
子どもの意見が取り入れられてもいいでしょう。今まで、大人の視点からしか検討されてきませんでしたが、もしかしたら子どもの視点からしか見えないこと、気づかないこともあるかも知れません。
子どもは大人に比べ、脚力が弱かったり、スピードが出せなかったり、時にはフラついたりするでしょう。自転車に乗る人としては、より脆弱な立場と言えます。そして、子どもの立場で考えることは、他の脆弱なグループ、高齢者、障害のある人、子育てをする人、介護をする人などにとっても有効に違いありません。
現在、このプロジェクトでは、アイルランドのダブリン、ポルトガルのリスボン、イタリアのローマという3つの都市で進められ、約150人の自転車ヒーローが選ばれています。彼らは、子どもの視点から、アクティブモビリティにおける障壁や問題点、希望する改善点などの意見を提示しています。
参加方法は、サイクリングをより楽しく、より簡単に、より安全にするための素晴らしいアイデアを考えて応募します。文章、ストーリーやビデオ、写真、映像作品、TikTok でもOKです。誰でも新しいサイクリングヒーローの1人になれる可能性があります。
都市において自転車で移動する人の中には、いろいろな属性の人がいます。同じ自転車の利用者同士でも、より弱い立場の人に配慮すべきで、バランスのとれたシステムが必要でしょう。そのような配慮をすることで、より多くの自転車利用者にとって、より良い環境が得られ、自転車の活用も進むに違いありません。
子どもの日に限らず、子どもの幸福を考える機会があったとしても、子どもの目線に立っているでしょうか。子どもにも立場や事情、好き嫌い、考え方、感じ方があるはずです。特に社会的な課題の解決をはかる上では、忘れがちだけど大切な視点と言えるかも知れません。
◇ 日々の雑感 ◇
大谷翔平選手がフェンウェイ・パークで3勝目、トラウト、レンドーンの復帰でチームも好調、勝利が増えそうです。
Posted by cycleroad at 13:00│
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