May 12, 2022

自転車のまちをアピールする

地方自治体が目指すことがあります。


住民の福祉向上、地域振興、環境対策や防災など、いろいろあると思います。各地でそれぞれの課題もあると思いますが、多くの自治体が実現したいと思うのは企業の誘致でしょう。もし誘致に成功すれば、雇用の創出や税収の確保、人口の増加などさまざまなメリットが見込めます。

そのために補助金を創設したり、工業団地を造成したり、固定資産税の減免など税制優遇をしたり、いろいろな施策を繰り出すことになります。しかし、それはどこも一緒で競争ですし、そもそもの立地や諸条件に有利不利もあり、簡単なことではありません。

企業の誘致を目指すのはアメリカの州政府も同じです。最近、多くの実現例が注目されるのがテキサス州でしょうか。過度の企業集中から住宅環境などが悪化したシリコンバレーから、多くのテック企業が移転していることでもテキサス州は注目されています。

Photo by Henry Han,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.This image is in the public domain.

テスラ、オラクル、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、AMD、米国トヨタなどそうそうたる企業が本社を移転しています。アップルが第2本社を置いたり、グーグルやメタ、アマゾン、マイクロソフトなども新たに同州に拠点を置くなど、有名企業が多数進出しています。

もちろん、そこには理由があるはずです。功を奏した州の誘致策もあるでしょうし、まとまった土地が確保できるとか、労働力を確保できる、固定費や維持コストが安い、家賃や物価が安くて従業員が住みやすい、災害リスクや経済圏としての効果など、企業にとってメリットがあるから選ばれるのは間違いありません。

何が決め手になるかはともかく、テキサス州も含めた自治体が、企業誘致のための環境整備の一つとして、近年力を入れていることがあります。それは自転車政策です。それを明確に表明している首長もいます。企業誘致と自転車なんて関係あるのかと訝しがる人もあるでしょうが、事実です。

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特にテック企業などにとって、何より重要なのは人材です。若くて創造性にあふれる人材、クリエイティブ世代の人材を獲得するためには、彼らの好みや考え方、ライフスタイルを考慮する必要があります。彼らの好みに合った都市、住む場所としての人気も重要な要素です。

アメリカにおける各種の調査によれば、最近の若い世代は古い世代と比べて、クルマを運転する割合が明らかに減っています。クルマを所有しなくても生活が出来る都市に集まる傾向があるのです。アメリカでも、若い世代のクルマ離れとも言える現象があるようです。

アメリカは基本的にクルマ社会ですから、すべての若者に当てはまるとは言いません。しかし、IT企業が欲しがるような人材は、クルマを買う代わりに、スマートフォンや多機能端末、タブレット、ラップトップ、そして2千ドル以上の自転車を買うことを選択する傾向があるというのです。

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著名な経済学者や経済紙なども、この傾向を裏付ける調査発表をしています。クルマだけでなく、彼らは大きな家にも興味が無く、郊外の広い家より、都市の中心に近いアパートに住んで、徒歩や自転車で通えるような環境を好む傾向が表れていると言います。

シリコンバレーの世界的に有名なIT企業は、揃って独自の自転車シェアシステムや自転車通勤環境などを整えています。それは若い世代にアピールするからです。シリコンバレーに限りません。企業が好ましい自転車通勤環境を整えるためにも、自治体は街の自転車環境の向上が必要になっているのです。

多くの会社が望むような創造性のある若者の思考や、ライフスタイルがそうなのであれば、企業はその欲求を満たすような都市に拠点を設けたほうが人材獲得に有利と考えます。企業を誘致したい自治体とすれば、自転車走行環境に力をいれるのが有効というわけです。

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もちろん、自転車政策はいろいろあるうちの一つに過ぎませんが、近年全米の多くの都市が力を入れているところをみると、若い世代の人気を意識して整備を進めているのは間違いなさそうです。ただ、自転車走行環境の整備にどこも力を入れるとなると、他との差別化や、アピールの点で弱くなってきている面もあるのでしょう。

それが理由とはされていませんが、テキサス州最大の都市、ヒューストンでは、今月新しいイベントを開催します。“アートバイクフェスティバル”です。誰でも無料で参加できるパレードです。参加者は思い思いのアートを自転車に施し、街に繰り出します。

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米国内の他の州でも、類似のイベントはあるにはありますが、ヒューストンでは初めての自転車イベントです。これが若い世代にどれほどアピールするかは別として、ハード面だけではなく、ソフト面でも自転車にフレンドリーな都市という印象を与え、イメージアップにつながりそうです。

日本でも近年、多くの自治体が『自転車のまち』を標榜しています。企業誘致ではなく、観光振興が主な目的です。今は激減していますが、インバウンド誘致の面もあります。しかし、あまりに多くの自治体が、自転車による観光振興を打ち出しており、一種のブーム、悪く言えば横並びになっています。

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日本の場合は、特にインフラ整備に力を入れるでもなく、既存のサイクリングルートをアピールしたり、マップの作成、ガイドツアーやレンタルの整備などが多いようです。知名度のある観光スポットや、ビワイチ、アワイチといった目玉があるところはともかく、似たり寄ったりで、アピール度が高いとは言えません。

まずインフラ整備をして、自転車で走りやすい街にするのが第一だと思いますが、ヒューストンに倣って、イベントで盛り上げるというのも一つの方策ではないでしょうか。このブログでも、アメリカの他の都市のイベントはいくつか取り上げましたが、私が知る限り、日本国内では聞いたことがありません。

Art Bike Festival

アメリカ人と違って、日本人で自分で自転車を作ったり、改造したりする人は少ないので、参加者を集めるのも最初はハードルかも知れません。しかし、近年定着したハロウィンなどとも似て、やりようによっては盛り上がるかも知れません。早い者勝ちなので、差別化したい自治体は、検討してみてはいかがでしょうか。




◇ 日々の雑感 ◇

ようやく屋外ではマスク不要という話が出てきました。熱中症もあるので、むしろ外すべきだと思いますが、周囲の目が気になる人もいて、同調圧力も強いので、屋外ではマスクを外すよう政府が明確に呼びかけるべきでしょう。

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