May 15, 2022

誰がキレイにするべきなのか

日本人はキレイ好きと言われます。


初めて来日した人は、日本の街が清潔で道路にゴミひとつ落ちていないことに驚くという話はよく聞きます。逆に、欧米に旅行すると、ニューヨークやパリ、ロンドン、ローマのような世界的な都市であっても、思いのほか汚かったとの印象を持つ日本人は多いようです。

サッカーワールドカップで、敗戦の後にもかかわらず、サポーターが自発的にスタジアムのゴミ拾いをしてから帰ったとか、やはり敗戦後なのに日本代表選手がロッカールームを清掃し、ホスト国に謝意を伝えるメッセージを残したことに、世界が感銘を受けたとの評判が報じられたこともありました。

日本人からすれば、必ずしも掃除好きとは自覚していませんが、やはり諸外国と比べるとキレイ好きなのは間違いなさそうです。おそらく日本の文化や慣習に根ざしたもので、協調性や行儀の良さ、周囲に気を使うとか、あるいは神道などの影響もあるのかも知れません。

Photo by Spielvogel,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by Mullenkedheim,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

教育もあるのでしょう。日本では小学校や中学で、生徒が自分たちで教室の清掃をしますが、諸外国ではまずありません。これを見て感動した海外の関係者が、自国で導入したところ、一部の国を除いて、強制労働だとか児童虐待だと猛抗議を受け、断念したなどという話もあります。

要するに、文化や伝統、慣習などを背景にした考え方の違いということなのでしょう。日本では、家の前や店の前にゴミが落ちていれば拾ったり、清掃をしたりします。外国人も、キレイなほうがいいとは思っても、自ら掃除をしようとはしないということだと思います。

道路は行政が清掃するものであり、汚れていても、行政の怠慢か予算不足かと思うだけです。行政の責任なのに、わざわざその代わりに掃除をする理由はありません。むしろ自分は納税者で、公共サービスを受ける立場なのに、なぜ掃除をさせられるのかという発想になるのでしょう。

道路清掃道路清掃

道路でなくても、掃除はその場所を請け負った掃除人がやるべきものであり、自分が掃除をしたら、掃除人の仕事を奪うことになるという考え方もします。善意であっても掃除をしていたら、掃除人から自分の仕事を奪うなと抗議されるという話も聞きます。

さて、そんな中で、アメリカ人としては少し珍しいと思える人がいます。Pierre Lermant さんです。クラウドファンディングサイトで資金調達しようとしているのは、バイクレーン用の、“Roadside Sweepers”です。自転車で牽引できる清掃機具、ロードスイーパーを開発しようとしています。

彼は人生において、ずっとサイクリングを楽しんできました。近年、アメリカ中で自転車専用レーンや物理的にセパレートされたり保護された自転車レーンが急速に普及していることを喜んでいます。ただ、その多くは定期的に清掃されておらず、走りにくかったり安全上の問題が懸念される場合もあります。

Bike Lane Roadside SweepersBike Lane Roadside Sweepers

おそらく、そこには行政の予算、コスト的問題があるのでしょう。物理的にセパレートされた自転車レーンだと、道路清掃車が進入できないという理由もあると思われます。そこで、自転車で牽引できるロードスイーパーがあれば、サイクリストが自ら清掃できると考えたわけです。

掃除専用のトレーラーを個人に販売しようというのではありません。開発資金の援助を求めています。プロトタイプを完成させ、自治体や企業、地域のコミュニティ、ボランティアが利用できるようにしたいと考えているのです。自治体の清掃業務や、地域のボランティア活動に使ってもらうことを想定しています。

これが実用化すれば、自転車の活用の推進に貢献します。個人のクルマの利用を減らすことで環境負荷を減らし、市民の健康増進に寄与するでしょう。化石燃料を使う道路清掃車と違って、排気ガスや温暖化ガスの削減、騒音の低減にもつながるでしょう。( ↓ 動画参照)



Lermant さんは、これを全米で見慣れたものにしたいと考えています。なるほど、“Eco Bike Lane Sweepers”、なかなか意義のある道具と言えるでしょう。ただ、アメリカで、これが受け入れられるかは微妙な気がします。つまり、アメリカ人で自ら掃除をしようという人は珍しいように思えます。

それはボランティアでやることではなく行政の仕事だと考えるでしょう。物理的に無理なら、自転車レーンの幅でも進入できる道路清掃車を開発すればいいだけの話です。もちろん、ボランティアで掃除してもいい人もいると思いますが、その仕組みを広げるのも簡単ではなそさそうです。

まだ30日以上ありますが、2万5千ドルの目標に対して1%にも届かず、賛同者も3人だけです。自転車レーンが掃除されることに異論はなくても、やはりそれは市民がやることではない、行政がやるのが筋だ、道路清掃業者の仕事を奪うなと考える人が多いということなのでしょう。

Bike Lane Roadside SweepersBike Lane Roadside Sweepers

もし、これが製品化されたら、むしろ日本ではニーズがあるかも知れません。手押しのロードスイーパー(下の写真)というのは日本でも売られていますが、自転車で牽引するタイプは見当たりません。ある程度、距離がある場合は、手押しより自転車で牽引するほうが効率良さそうです。

日本でも道路清掃は道路管理者、すなわち国や自治体の仕事です。ただ、細い道には入って来ないでしょうし、付近の住民や商店主、会社員などが掃除している場所もあると思います。地元の自治会や住民のコミュニティなどの中には、奉仕活動の効率の点から使いたいところもあるかも知れません。

住宅地や商業地など、人がいるところでは清掃も行われますが、近くに民家も店も無く、清掃がされていないような場所もあります。一部のサイクリングロードもそうですが、郊外の農道とか、あまりクルマが通らない細い裏道など、近所に住人がいないので掃除されていないような道路もあるでしょう。

手動式 ロードスイーパー
手押しスイーパー


そうした場所では、例えば自治体が貸出をすれば、ボランティアで牽引してもいいと考えるサイクリストがいるかも知れません。自分で購入してまではやらないとしても、自分がよく通る場所を、たまに掃除するくらいならと、借りる人もいそうです。

日本には、ゴミ拾いのNPOがあったり、ゴミ拾いをスポーツとして楽しもうなんていう団体もあったりします。身の回りは自分たちで掃除をしようという気持ち、そしてキレイになれば気持ちいいという感覚は、多くの日本人にあるはずです。バイクレーンスイーパー、アメリカより日本向きかも知れません。




◇ 日々の雑感 ◇

フィンランドのNATO加盟を過ちと批判したプーチン大統領、自ら招いた結果なのに、もはや滑稽ですらあります。

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