技術革新や状況の変化が、自転車にも変化を促したのは確かでしょう。そしてこれからも進化、あるいは変化を続けていくに違いありません。今後、どのような変化が考えられるのでしょうか。いろいろな方向性、分野があると思いますが、その一部を最近見かけたモデルで見てみたいと思います。
こちらは、
再生プラスチックで作られた自転車です。フレームだけではありません。ギアやギアボックス、ドライブベルトなどのドライブトレーンや、ベアリング、ブレーキ、ホイールなどのパーツ、コンポーネントまで
プラスチックで出来ています。ホイールは一体成型です。

プラスチックなので錆びません。ギアまでプラスチックなので注油する必要もありません。プラスチック素材自体に潤滑性があり、低摩擦で乾式で動作します。潤滑油を必要としていないため、砂やホコリ、汚れなどが付着して蓄積することもなく、メンテナンスフリーが実現されます。
自転車を利用する人にはさまざまなニーズがあり、その多くに応える可能性があります。なるべく面倒なメンテナンスが不要で、性能が落ちず、錆や油汚れを気にする必要がなく、耐久性が高く、トラブルが少なく、安定して移動できるとしたら、そのことに価値を見い出す人は多いでしょう。

日本で言えば、圧倒的多数であるママチャリに乗るような人たちです。注油どころかタイヤの空気圧さえ気にしないなど、メンテナンスを疎かにする人は大勢います。市場で格安粗悪なママチャリが席捲しているため、修理して乗るのではなく、使い捨てのようにして乗り換える人も少なくありません。
自転車の性能などより、少しでも手間を省き、トラブルなく乗れさえすればいい人にとっては、有力な選択肢となる可能性があります。また再生プラスチックなので省資源であり、完全にまたリサイクルが可能だと言います。製造面の環境負荷を重視する人にとっても評価されるでしょう。( ↓ 動画参照)
ドイツの、
igus というプラスチック素材の会社と、オランダのスタートアップ、
MTRL 社が開発しています。まだ開発の初期段階ですが、最初のモデルは年末までにリリースされる予定です。形は普通ですが、オールプラスチック製の自転車というのは、なかなかインパクトがあります。
Mocci 社の、“
Magic Ride”も似たコンセプトです。従来の金属製のパイプではなく、リサイクル素材のポリアミドが使われた独自のフレームを持ちます。ホイールやスポークは一体成型のプラスチックです。やはり、金属のチェーンや機械式のドライブコンポーネントは使われておらず、この部分のメンテナンスは不要です。


電動アシスト自転車ですが、回生ブレーキなども搭載されており、80キロの航続距離を確保します。主に、シェアサイクルや商用利用の顧客を想定しています。機械トラブルや故障、その修理やメンテナンスなどで使えなくなる時間が少ないこと、耐久性が高いことは、商用に利用する企業にとって大きなメリットとなるでしょう。
配送などの用途のため、複数のラックやトレーラーを構成できます。個人向けではなく、配送業者やフードデリバリー、自転車を移動に使う会社、バイクシェア事業者などを対象としています。これもなるべくメンテナンスなどの手間を省き、安定して運用できるというニーズに応える自転車です。( ↓ 動画参照)

環境意識の高まりや、コロナ禍での移動などで自転車を使う人が増えました。自転車を移動や運搬の手段と割り切り、面倒な部分を避けたい人は多いはずです。この、なるべく『メンテナンスフリー』へというニーズは、進化の方向性の一つとなるでしょう。
自転車をメンテナンスしたり、いじるのが好きな趣味のサイクリストにとっては、あまり興味のない部分かも知れません。もちろん、自転車のメカニカルな部分、整備といった部分がなくなっていく方向ばかりではありません。これについては、ゲームの世界で変化が見られます。


こちらは、“
BIKE MECHANIC SIMULATOR 2023”です。なんと、自転車整備士として自転車を整備したり、ビジネスキャリアを仮想体験できるシミュレーションです。パソコン向けのほか、PlayStation や、NintendoSwitch、Xbox などのメジャーなゲームプラットフォーム向けにリリースされる予定です。
自転車のメカニックというニッチと思われる分野が、シミュレーター、ゲームになるとは驚きです。ゲームの種類としても異色なのではないかと思いますが、自転車のメカニカルな部分やメンテナンス、カスタマイズなどに興味のある人には嬉しい作品でしょう。ゲームになるのですから、興味を持つ人は増えているのかも知れません。
こちらは、直接自転車本体の変化ということではありませんが、自転車人気の拡大や利用者の増加に伴い、アメリカなどでは、自転車整備やメンテナンスに興味を持つ人、職業としようとする人が増え、学校なども増えていると言います。メンテナンスフリーばかりが将来の方向性ではないということになりそうです。( ↑ 動画参照)
自転車の製造や流通も変わるかも知れません。こちらは、
3Dプリント自転車です。これによりフレームの自由度は広がりますし、3Dプリンターでなければ不可能な造形も可能になります。この設計データをネット配信することで、より消費者に近いところで製造が可能になります。


もちろん、サイズや好みなどに合わせてカスタマイズも可能です。原理的に3Dプリンターさえあれば、誰でも自転車製造が出来ることになりますが、そうなると困るメーカーも出てくるでしょう。無料で設計データが頒布されたら、商売あがったりです。
最初に設計されたのは2014年ですが、今年になってこれにNFT、ブロックチェーン技術を使って著作権や所有権を保護する技術が利用できるようになりました。この
NFT(非代替トークン)を売買することで商売が成り立ちます。まさに、自転車メーカーにとってのDX(デジタルトランスフォーメーション)です。( ↓ 動画参照)
これまでも自転車は、さまざまな進化や多様化をしてきました。しかし、そのどれもが普及したり、主流になったわけではありません。結局は廃れてしまったものも無数にあります。ただ、自転車の世界でも、新たな変化を模索する動きが止まることはなさそうです。
◇ 日々の雑感 ◇
大谷選手が3安打2本塁打8打点の活躍、調子は上向きのようです。今日は連敗脱出に向けて登板、楽しみです。
Posted by cycleroad at 13:00│
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