顔かたちから体格、生まれや生い立ち、考え方から主義主張、仕事や趣味、行動様式に生活習慣、あらゆることが違っており、一人として全く同じ人はいません。当然のことで、違っていて当たり前と認識されています。そして、違いの中には性的指向、あるいは性自認なども含まれます。いわゆるLGBTQの人もいます。
近年、このLGBTQについて耳にすることが増えました。自身のセクシュアリティを公にしているタレントも多く活躍しています。日本では同性婚が認められていないため、同性カップルを結婚に相当する関係、パートナーシップとして認定する自治体が出てきたりしています。

LGBTQを、その人の個性の一つと捉えている人も多いのではないでしょうか。日本は比較的寛容な気もしますが、本人にしてみれば、そのことをカミングアウト出来ない人も多く、日常生活、例えばトイレに行くだけでも苦痛を感じている人がいると言います。
実は日本は、G7の中で唯一、同性婚などの法律がなく、LGBTQの法的権利に関しては後進国とされます。日常の中で、例えば独身男性に対し、コッチの気があるのでは?などとからかったりする人もいます。冗談のつもりだったとしても、それは差別的言動であり、言われた当人は大きく傷ついている可能性があります。

カミングアウト出来なかったり、してもごく限られた少数の友人にしか知らせていない人は多いようです。知り合いがLGBTQだったとしても、それは個人の自由だし気にしないという人も多いと思いますが、本人にしてみれば、そうは思えない状況があります。
職場でカミングアウトしたら、差別され結局仕事を辞める人もいます。気にしないという人でも、例えば自分の子どもの担任がLGBTQだったとしても抵抗を感じないでしょうか。当然ながら教員の中にも、LGBTQの人はいて、同僚だけでなく保護者からの反発を懸念して言えない人もいます。

自分の親へカミングアウトしたら全否定、絶縁されたとか、家族がLGBTQを否定的に見ていてカミングアウト出来ない人も少なくないと言います。保守的な地域では近所の人に色眼鏡で見られたり、実際問題として社会的に承認してもらえるとは到底思えず、カミングアウト出来ないことが、大きなストレスになっているのです。
子ども時代にイジメにあったとか、カミングアウトしたら、同性の友人の大半が離れていったなどの経験のある人もいるに違いありません。こうしたストレスで健康面に影響が及んだり、コミュニケーションが困難になったり、睡眠障害、自律神経失調症、うつ病などで苦しむ人も多いと言います。

日本では、おそらくLGBTQなど性的マイノリティとされる人が1割弱程度はいると推定されていますが、正確なところはわかりません。絶対周囲に知られたくない人も多く、調べようがないわけですが、人知れず疎外されたり、社会的に希望が見い出せずに苦しんでいる人は少なくないと思われます。
これがアメリカだと、もっと困難なことも多いはずです。宗教的な部分が加わるからです。アメリカでは宗教観の違いから、中絶の権利が争点となる国であり、同性カップルを倫理的に許せない人も多いのです。90年代くらいまではソドミー法が適用されたり、性的指向を理由とした解雇も違法ではないとされていました。

ゲイの人が集まるナイトクラブで男性が自動小銃を乱射し、100人以上が死傷するといった事件も起きています。新たにHIV感染が診断される人のうち、ゲイやバイセクシャルの男性の割合が7割程度と高く、こうした部分に対する偏見や忌避もあるのでしょう。
各種の統計によれば、米国のLGBTQの若者の4分の3は、自身の性的指向のせいで差別を受けたことがあると言います。17%は身体的に脅されたり、危害を加えられたことがあるそうです。ホームレスを経験する可能性は、異性愛者の若者に比べて120%高くなっています。

LGBTQのアメリカ人の54%が、差別を受けないように人間関係を隠しています。13%がコンバージョン・セラピー(転向療法)を受けたことがあり、15%は、差別を恐れて医療処置を受けるのを先延ばしにし、LGBTQの人々の貧困率は、一般より高い21.6%だと言います。
LGBTQの4割が黒人やアジア系を含む有色人種という調査もあります。中でも黒人のLGBTQの比率は高く、黒人のLGBTQは人種差別と性差別という二重の差別に直面していることになります。LGBTQの黒人は、そうでない人の6倍、警察から職務質問される割合が高いのが実情です。

アメリカ人の7割はキリスト教徒とされますが、宗教的自由を理由に反LGBTQを掲げる人たちもいます。キリスト教の原理主義的な人にしてみれば聖書は絶対であり、そこには同性愛を否定する言葉が書かれているからです。反LGBTQの主張を認める最高裁の判断もいくつか出ています。
一方、最近はLGBTQコミュニティが耐えてきた試練を理解し、完全な平等を目指そうという動きも広がっています。さまざまな団体が活動していますが、そのうちの一つに、“
OutCycling”という非営利団体があります。主にサイクリングを通じた活動を行っています。

その一つ、“
Fearless Flyers”は、青少年のLGBTQの人たちに力を与えるものです。自転車のトレーニングやグループライドといったプログラムに参加してもらうことで、コミュニティを形成し、孤独や疎外、相談できる人がいないといった状況を無くそうと考えています。
孤立して、自転車に乗ることなど思いもよらない人には基本的なスキルからトレーニングを提供します。いわば自転車教室を通して、そこで友達を得たり、コミュニティに加わってもらいます。これによって、人生が変わるような経験をしたと告白する人も少なくありません。


単にサイクリングのグループというだけでなく、教育や健康、仕事、住居、食事、資金、スキルなど、さまざまな面からのサポートも行っています。さらに、それぞれに合った他の組織とつなげるなど、LGBTQの若者を支援し、人生を切り開く手伝いをしています。
また、この“
Fearless Flyers”プログラムの参加者の中から、翌年のグループリーダーとなる人材を採用し、活動とコミュニティの裾野を広げています。経済的に困難な状況にある人も多いため、自転車とヘルメットとライトとロックなど、必要な装備を提供してもいます。( ↓ 動画参照)
差別や脅迫や暴力などを受け、いわゆる引きこもり状態にある人もいます。あまり外出して活動することはなく、公共の場所で自転車に乗るなんて、思いもよらなかったという人もいます。そうした人でも勇気を得て、友達が出来て、文字通り人生が切り開かれる人もいるのです。
もちろん、こうした団体に頼らなくてもカミングアウトして、権利を主張するような人もいます。しかし、LGBTQでない人には想像もつかないような困難に見舞われ、それが改善することも望めず、孤立して行き詰ってしまう人たちがいるのです。この団体は、自転車を使って、そうした人の力になろうとしています。

LGBTQの人たちは、人との違いが性的指向や性自認だったというだけで、社会的に極めて困難な状況に置かれています。カミングアウトは相当な勇気がいることでしょう。友人にカミングアウトしたらアウティング、すなわち許可なく第三者に伝えられてしまい、心身に変調をきたして自殺した人もいます。
私たちの身の回りにも一定の割合で、LGBTQの人はいるはずです。そうとは見えなくても、セクシュアリティの問題で深く悩んでいる人がいます。なかなかその深刻さは想像出来ず、また、知られることを恐れて隠しているとは思わず、何気ない言葉で傷つけていることがあるかも知れません。

セクシュアリティについては、ゼロか百ではなく、グラデーションだと言います。人によってその度合いが千差万別ということになります。ですから平気で笑っている人がいる一方で、どうしようもなく苦しんでいる人もいるのです。このことは、頭の隅に置いておきたいものです。
◇ 日々の雑感 ◇
日本人はこれだけマスクをしているのに、マスクをしてないアメリカやイギリスより人口比で感染者数が多くなり、両国より断然急角度の感染者数上昇となっています。つまりマスクには全く抑制効果がなく、無意味ということになります。マスクが有効と思ってきたのは幻想で、既にマスクをしてない諸外国の方が正解なのではないでしょうか。
Posted by cycleroad at 13:00│
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