August 07, 2022

時代も都市も変わりつつある

ヨーロッパでは追い出す方向になりつつあります。


都市からクルマを追い出す方向です。これまではモータリゼーションでクルマが普及し、いかに都市の道路をクルマ向きにして乗りやすくするか、駐車場などを整備して使いやすくするかが問われてきました。もちろんクルマ産業は裾野が広く、経済成長に大きく寄与することも背景にあり、クルマを優先する道路整備が行われてきました。

しかし、次第にヨーロッパの都市では、クルマの乗り入れを制限するなどして、都市でのクルマの利用を減らそうとし始めています。理由はたくさんありますが、一つにはクルマがヨーロッパで2番目に大きな大気汚染源となっており、人々に公害による深刻な健康被害をもたらしていることがあります。

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窒素酸化物などの有害物質や、ディーゼル車が広く普及していることによる空気中の粒子状物質、PM2.5などにより、EU全体では大気汚染で年間50万人も早死にしているとされます。喘息や肺がんなど呼吸器系の疾患だけでなく、血液に入り込んで、心臓疾患などの循環器系の病気が多くの人の死因になっているのです。

騒音公害も併せて人々にストレスを与えていることも含めれば、人々の寿命を縮める大きな要因です。さらに、交通事故により、多くの人が命を落としています。統計によれば、クルマは子どもたちの主要な殺人者となっています。これは、認めざるを得ない事実です。

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また、都市部での富裕層と貧困層の格差拡大の原因にもなっていると指摘されています。クルマを所有していない世帯が経済的に不利益を被り、格差拡大に作用していることが研究でわかってきました。格差拡大による社会の分断は治安を悪化させ、テロや犯罪などを増やし社会不安にもつながります。

都市部でのクルマの利用は本質的に非効率であり、不平等ということが改めて認識されています。クルマは96%の時間、駐車しているだけであり、都市部の貴重な公共空間を占有しています。乗用車の運転者は圧倒的に富裕層が多く、上位1%が中央値の運転者の4倍近く運転し、個人の気候フットプリントの約21%を占めます。

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そう、温暖化ガスの問題もあります。EVへの移行も少しずつ進められていますが、発電方法によっては変わらずCO2を排出していることになります。製造時に出される温暖化ガスも少なくありません。最近の分析によれば、燃料を多く消費するSUVの増加によって相殺され、むしろ増えていることがわかっています。

EVに替えても渋滞は起こります。EVも含めてクルマを使わない、都市部に流入させないという考え方が広がっているのです。半世紀前まで、モータリゼーションでクルマがあふれていたコペンハーゲンなど、いいお手本となる自転車都市がいくつもあるのですから、どうするべきかは自ずと明らかでしょう。

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たとえEVであったとしても、そのエネルギーは平均して1.2人の乗客のためより、最大95%がその大きな車体を動かすために使われます。ブレーキや摩耗で生じる粉塵はマイクロプラスチック汚染も悪化させています。同じ移動するなら、エネルギー効率や環境負荷の点で、自転車のほうが優れているのは明らかでしょう。

ウクライナ危機もあって燃料高が進んでいますが、家計防衛にも役立ちます。もちろん、全ての面でクルマを排除することは出来ませんが、都市部でのクルマ、特に自家用乗用車の利用を減らすことには、渋滞、大気汚染、交通事故、温暖化対策、省エネなど多くの面でメリットがあるわけです。

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こうした認識が共有され、各地で対策が進んでいます。ロンドンでは、都市部への流入車両に課金をし、交通量の33%の削減に成功しました。ミラノ、ストックホルム、ヨーテボリなど多くの都市が、渋滞税などの形で課金を進め、クルマの流入の減少に取り組み始めています。

ローマでは、時間帯を決めて、居住者と年会費を払った人以外は都市部への乗り入れを禁止しました。これにより公共交通機関の利用が増え、クルマの交通量は20%、制限時間帯以外でも10%減少しました。この規制に違反した人が払う罰金は、公共交通への投資にあてられています。

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課金以外に、多くの都市が駐車スペースを撤去したり、車両通行禁止を増やしたり、クルマ用の車線を減らして自転車レーンを設置したり、歩行者専用道にするなどの規制やインフラ整備を進めています。これにより、例えばノルウェーの首都オスロでは、クルマの利用が最大19%減少したことがわかっています。

オランダのユトレヒトでは、通勤する人たちに対し、公共交通機関のバスを一部無料にしました。これにより、市内中心部へクルマで通勤する人の割合を37%削減させたと言います。また各地で、市内の企業や施設などに対し、従業員用の駐車場を有料にするよう求めるところもあります。これも大きな効果を上げています。

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ただ、カーシェアリングは、都市部のクルマ利用削減には必ずしも貢献しないことがわかってきました。今までクルマを利用していなかった人が、短時間だけ利用するなど、むしろ利用を増やす効果があらわれる都市もあります。減少させている都市もあるので、一概には言えないようです。

こうした数々の施策により、都市部へのクルマでの移動を止めた人は、公共交通機関か自転車を利用するようになります。自転車通勤をするようになると、それが意外に便利で快適なことに気づく人も多いでしょう。ダイエットや健康増進などの思わぬ効用もあるはずです。

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通勤者それぞれの判断に任せるのではなく、従業員に自転車通勤を勧める企業も増えてきました。最近注目されるCSR、企業の社会的責任の観点からも座視しているわけにいかなくなってきた面もあります。気候変動対策でEVを使うというのでは、評価されにくくなっている面もあるのでしょう。

フランスのパリに本拠を置く、Zenride 社は、企業にレンタル自転車を提供する会社です。貸し自転車自体は昔からあり、珍しくありません。近年は都市型のシェアサイクルなども普通になってきました。しかし、この会社は、主に大企業に対して、従業員の自転車通勤をサポートするための自転車リースを提供しています。

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従業員は、Zenride 社のパートナーストアである最寄りの自転車店から、好きな自転車、電動アシスト自転車を選ぶことができます。ヘルメットやロックなどのアクセサリ、保険加入も含まれます。修理やメンテナンスといったアシスタンスサービスも提供され、至れりつくせりです。

長年、自転車に乗っていないという人は、e ラーニングで交通安全について学ぶことも出来ます。ちなみに、レンタルして気に入ったり、転職する場合などには割安な価格で買い取ることも出来ます。従業員が自転車通勤を始めるにあたってのハードルをかなり下げるのは間違いありません。( ↓ 動画参照)



会社からの経済的支援も受けられ、面倒なメンテナンス面でも安心となれば、使わない手はないでしょう。自発的に自転車通勤を始める従業員ばかりではありませんから、企業としても効果的に自転車通勤を推進することが出来、CSRとしての取り組みをアピールすることが出来ます。

会社にとっては、事務機器などをリースで導入するのと同じようなメリットもあります。買い取って自社で管理する煩わしさもなく、リースとして経費になるので節税などの税務上の効果も見込めるでしょう。国によっては減税の対象となりますが、その申告までしてくれます。

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導入した会社の中には、従業員から、会社に行くのが楽しくなった、モチベーションが上がった、仕事の効率が上がった、健康増進になったなど、ポジティブな反応を得ているところも少なくないようです。企業の社会的責任の観点から導入したものの、それ以上の効果を実感しているわけです。

このような企業向けサービスが登場するくらい、自転車の活用、都市部でのクルマの利用削減は、もはや当たり前という流れになりつつあります。少なくともヨーロッパの都市部では、旧態依然としたクルマ利用が当たり前という考え方そのものが、社会から追い出され始めていると言えるでしょう。




◇ 日々の雑感 ◇

夏の甲子園が始まりました。これぞ日本の夏という感じがします。選手たちには力を出し切ってほしいものです。

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