August 10, 2022

格安で交通事故を減らす方法

道路では交通事故が絶えません。


自転車に乗っていた人がひき逃げされたり、子どもの集団登校の列にクルマが突っ込んだりなど、悲惨な事故が無くなりません。事故が多発する地点もありますし、抜け道として使われる道路とか、ドライバーがスピードを出す場所など、道路の形状や規制などに問題があるところもあるでしょう。

そうした場合には、道路や交差点の改良、歩道やガードレールの設置、スピードを落とさせるハンプの敷設などを地元の人が求めたりしています。しかし、場所によっては何十年もそのままだったりします。道路整備にも予算があり、改良が望まれる場所は少なくないでしょうから、そう簡単に実現できないこともあるのでしょう。

これは外国であっても同様ですが、アメリカでは、行政に頼らず、予算もほとんどかけずに道路や交差点の安全性を向上させているところがあります。アスファルトアートと呼ばれるプロジェクトです。地元の住民が鮮やかな色使いで、思い思いの絵や柄を道路上のアートとして描いています。( ↓ 動画参照)

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative



Bloomberg Philanthropies という慈善団体による、“Asphalt Art Initiative”の助成金プログラムです。米国の都市や住宅街の道路に、ビジュアルなアートを描く活動です。信号を設置したり造成工事などをするわけではないので、地元住民の有志やボランティアが絵を描くのに使うペンキ代くらいしか費用はかかりません。

最近の調査によれば、このアスファルトアートによって、歩行者や自転車利用者とクルマとの間の怪我を伴う衝突事故が平均して37%減り、人身事故は50%減少、その他の事故も17%減りました。道路やその脇にペンキで絵を描いただけで、大きな安全性向上が得られたことになります。

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

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( ← 動画参照)

サンプルとなった米国内の22のプロジェクトは、わずか数百ドルから数千ドルでまかなわれました。アートが描かれた場所の形状や交通量、その他の条件はまちまちであり、一概に比較したり論じることは出来ませんが、その4分の3以上で交通事故が減少しています。

アートの場所や柄、色などにもよりますが、歩行者の横断が視認しにくくなり、かえって危険なような気がしてしまいます。でも、それがドライバーにスピードを落とさせ、注意を促すことにつながっているのでしょう。少なくとも初めて通れば、珍しいペイントに戸惑いますし、スピードを落とすものと思われます。

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

( ← 動画参照)

ドライバーが停止し、横断する歩行者に道を譲る割合も27%増えたことが明らかになっています。また、歩行者用信号を無視して横断する歩行者も38%減少したという結果が出ています。アートが描かれていることで、急いで強引に横断しようと思わなくなったのでしょうか。

こんな道路ペイントが許されるのは、アメリカならではの自由度の高さと思われるかも知れませんが、アメリカでも原則として許可されておらず、このようなアートが描かれている場所は、ごく限られています。むしろ交通当局はこれまで、例えばゲリラ的に描かれたものなどを取り締まってきました。

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

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( ← 動画参照)

当然と言えば当然です。勝手に描かれたらカオス状態に陥ります。当たり前ですが、道路にペイントされる交通標識や横断歩道などの表示の規格は決まっています。公共の道路なのですから、個人の好き勝手なペイントを許すわけにはいきません。自治体に特別に許可された場所なのです。

このアスファルトアートを、交通の専門家たちは必ずしも賢明な投資とは見なしていません。現在は場所が限定的とは言え、ドライバーを混乱させると批難する人もいます。中には、将来的に実現するかも知れないクルマの自動運転技術にマイナスだと主張する人もいます。

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

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( ← 動画参照)

ただ、このアート、理由はいろいろかも知れませんが、小さくない効果があったのは明らかです。しかも格安です。許可さえすれば速やかに設置可能ですし、街が明るく、楽しくなる効果もあります。描いた人だけでなく、周辺の住人も、交差点を色や柄で呼んだり、道路への親しみがアップしたと話しています。

このアスファルトアートが、すぐに全米に広がっていくわけではないでしょう。しかし、これまでの画一的な道路標示を見直す意味はあるのではないかと考えさせるものです。政府や州の道路管理の関係者に対し、道路標識やペイントの規格をゼロから見直していこうという働きかけがなされています。

(警察官も手伝っている ↓ )
Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

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( ← 動画参照)

現在40か所以上に広がっていますが、これは日本でも取り入れてみる余地があるのではないでしょうか。日本のお堅い役所が認めるのは難しいだろうという見方も出来ますが、もしアートだけで低予算で安全性向上の効果があるのならば、認めないほうが理不尽ということになります。

日本でも、通学路などでドライバーに注意を促すため、オレンジ色の全面塗装をしている場所もあります。(例: ↓ 下の写真。)自転車レーンの塗装色なども、都道府県、あるいは市町村によって違いますし、自治体によってある程度の自由度があります。オレンジ色の全面塗装がいいならば、アートに置き替える手はないでしょうか。

a481295eオレンジ通り

横断歩道を全く違う色柄にしたら問題になるでしょう。しかし、例えば横断歩道の手前の何メートルか決めて、カラフルなアートを描けば、スピードを落とすドライバーが増える可能性があります。少なくとも、現状で前方に横断歩道があることを示す、菱形のマーク( ↑ 上の写真)よりは効果が見込めそうです。

場所によっては、物理的なハンプを設置する代わりに、ハンプかと思わせる絵を描いたり、道路幅が狭くなっているようなペイントをしているところもあります。考えようによっては、それとアスファルトアートの違いは大きくないでしょう。少なくとも検討してみても損はないはずです。

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

Asphalt Art InitiativeAsphalt Art Initiative

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住民の有志を募集して、塗料代程度を支給すれば、描きたい人はいるでしょう。道路標示の摩耗などの管理も住民に任せ、必要なら、また塗りなおしを申請してもらえば、役所は監視の手間も高額な塗装業者への委託も不要になります。そして何より、交通事故が減るのであれば、異論も収まるはずです。

道路標示は色も形状も決められているのが当たり前です。道路にアートペイントなんて、とんでもないと感じる関係者も多いでしょう。横断歩道や止まれの表示の色や形状まで変えろとは言いません。でも、もし交通事故の減少に貢献するというのであれば、せめて試してみてもいいのではないでしょうか。




◇ 日々の雑感 ◇

エンゼルスの大谷翔平選手が2桁勝利2桁本塁打に向け先発登板、4度目の正直で達成できるといいのですが。

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