落下物や舗装の問題、歩行者の飛び出しなどもありますが、走行するクルマのドライバーに嫌がらせをされた経験のあるサイクリストも多いに違いありません。幅寄せされたり、前に割り込まれたりといった経験です。クラクションを鳴らされたり、怒声を浴びせられたりといったこともあるでしょう。
中には面白半分や、悪意を持ってやるような人もいますが、ふだんはそのような危険行為をしない人でも、なかなか追い越せなかったり、遅くてイライラしたり、邪魔に感じたりといった理由で、路上の自転車に向かって嫌がらせや攻撃的な行動をとる人がいるのは間違いありません。
サイクリスト側にしてみれば、命の危険に直結しかねない行為も多いので腹も立つわけですが、このことについての調査をした
パイロット研究の結果が報告されています。2019年の
オーストラリアでの調査で、クイーンズランド工科大学事故研究・交通安全センターやモナシュ大学土木工学部交通研究所などによるものです。
それによると、クルマのドライバーの半数以上が、自転車に乗る人を人間として見ていないと言うのです。1人の人間として尊重していないと言うべきでしょうか。サイクリストを非人間化して認識してしまうということが明らかになったとしています。
このことは、サイクリストに対するクルマのドライバーの攻撃的な運転と、有意な相関関係が認められると言います。言い方が適切かどうかわかりませんが、自転車に対して危険な行動をとるのは、サイクリストを一人の人間として見ていないことから来ているというのです。
この研究結果を聞いて、納得する人もあるでしょう。例えば、路上で邪魔と感じた自転車に対し、わざと前に割り込んで危険な目に遭わせる行為があったとします。同じことを歩行中に、他の歩行者に対してするでしょうか。他の歩行者に対して邪魔だと感じたとしても、そのような攻撃的な行動を、普通はとらないはずです。
クルマに乗ると性格が変わる人がいます。これは、鉄の塊に守られている形になるため、無意識に自分が強くなった気になって、周囲の自転車や歩行者に対して攻撃的になってしまう効果が働くというのを、別の研究で読んだことがあります。多かれ少なかれ、そのようなことはあるようです。
ふだんは温厚で腰が低く、謙虚な年配の女性が、クルマのハンドルを握った途端、攻撃的になって嫌がらせをすることも厭わないという例を見たことがあります。ふだん歩行中は、他人に対して、そんな敵対的な行動は絶対にとらない、おとなしい人なのに、クルマを運転すると変わってしまうようです。
ドレス効果という言い方をする場合もあるようです。衣装と同じで、クルマに乗ることで気が大きくなってしまい、あおり運転をしてしまう人がいます。特に近年は、外装が他を威嚇するようなデザインのワンボックスやSUVなどが増えているため、このドレス効果で、あおり運転が増えているのではないかと指摘する人もいます。
このように考えると、ドライバーの半数以上が、道路においてはサイクリストを一人の人格として尊重していないという結果に合点がいく人も多いのではないでしょうか。道路を走る自転車に対し、見下したような態度で嫌がらせや危険な運転をするのは、このような理由も影響しているわけです。
さて、このことを理由に、新しいテールライトを開発した人がいます。オーストラリアはメルボルンを拠点に活動する、Tim Ottaway さんらのグループです。その製品“
FLOCK LIGHT”は、後方に向けて赤く点灯するだけでなく、サイクリストの脚を赤く照らすように出来ているのが特徴です。
たしかに、赤いライトが一点だけ光っているより、脚も照らしたほうが、光る面積が広くなり、夜間の視認性は向上します。さらに、脚の場合は動いているぶん、より目立ちますし認識されやすくなるでしょう。同じ面積なら背中などより、動いている脚のほうが視認性の点で有利だと思います。
先ほどの研究は、視認性ということではなく、夜間に限ったことでもありません。サイクリストに対する態度や攻撃性と、はっきり書かれています。ですから、正直言って、この“
FLOCK LIGHT”の言う、人間が走行していると認識してもらうこととは少し意味合いが違う気がしますが、それはいいとしましょう。
夜間、前方に赤い小さい光を見れば、自転車かオートバイなどであろうと推察は出来ます。ただ、赤い小さな光だけでは、それほど注意が向かないことはあると思います。赤い光の中で脚が動いていれば、そこにはサイクリストが走行していると認識され、より注意が向く効果はありそうです。( ↓ 動画参照)
赤いライトだけだと、光の強さもバラバラなので、遠近感がはっきりしない場合もあるでしょう。人間の足が見えれば、その見え方によって距離感を間違うことを避けられます。さらに、バイオモーションといって、機械の動きではなく生物の動きのほうが、私たちの脳は迅速に認識することもわかっています。
片手で操作できるクリップや、バッテリーの残量を知らせるレベルゲージなどの便利な機能も用意され、
クラウドファンディングで資金調達、および販売を行っています。すでに目標金額の4倍を超える資金、注文が集まっており、多くの人の支持を得たことがわかります。( ↓ 動画参照)
このライトが、クルマのドライバーの攻撃性を弱めるかどうかはともかく、より視認性を高めるのは間違いありません。夜間でも、ライトの大きさでなくサイクリストの大きさが認識されれば、すぐ近くをすり抜けられるといった危険な思いをするケースも減るのは間違いなそさうです。
◇ 日々の雑感 ◇
エリザベス女王が死去、この方ほど英連邦をはじめ世界の多くの人に敬われ親しまれた方はいないと思います。
Posted by cycleroad at 13:00│
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