クルマと違って基本的には人力なので、使えるパワーが限られます。走行する場所や用途、状況に応じて適したものを使ったほうが快適で便利であるため、細分化されて多くのタイプが用意されています。世界には、それこそ数え切れないくらいの自転車の種類があります。
ただ、日本で見る自転車のタイプは限られています。諸外国と比べても、走っている自転車の種類は少ないでしょう。街で見る自転車は圧倒的にママチャリが多く、それも量販店で売られているものがほとんどです。何か目印をつけておかないと、駐輪場で自分のものを見分けるのに苦労したりします。
もちろん、スポーツバイクに乗る人もいますが、圧倒的な割合をママチャリやママチャリタイプが占めています。日本人の多くは、自転車と言えばママチャリを思い浮かべるでしょう。逆に言うと、自転車にはいろいろなタイプがあることや、どんな種類があるか、よく知らない人がほとんどです。
ママチャリの汎用性が高いということもありますが、日本では世界的にも非常識な自転車の歩道走行という交通政策がとられてきた結果、車重が重く、タイヤが太くてスピードが出ず、フレームの形状的に足つき性がよく、歩道走行に適した自転車として、日本独自のママチャリに進化してきたという経緯があります。
一方で、このママチャリ、名前の割りにはママ向きでない面があります。小さな子供を抱えて幼稚園などの送り迎えにママチャリを使う母親(父親も含め)向きとは限りません。子どもを送ってから出勤したり、迎えてから買い物をしたりと、子どもを乗せてママチャリを使う親たちです。
もちろん、園の送迎バスを利用していたり、郊外ならクルマで送り迎えをする人もあると思います。しかし、特に都市部では、仕事と子育てを両立して行く上で、子ども乗せママチャリは絶対に欠かせない必需品という親は多いでしょう。そういう話をよく聞きます。
必ずしも向いていないのは、その構造上の問題です。基本的にママチャリにチャイルドシートを取り付けた形になっています。近年は電動アシストタイプも増えており、脚力的にかなり助かるという人も多いと思いますが、形としては同じようなママチャリタイプにシートを取り付けた形です。
すなわち重心が高く、安定性に欠けます。実際に、路上のトラブルを避けようとした時など、子どもの体重を支えきれずに転倒してしまったりします。多いのは停車時に、何かの拍子に自転車が倒れ、子どもが地面に頭を叩きつけられるというケースです。毎年、これで死傷する子どもが少なくありません。
子どもを乗せるためのママチャリは、駐輪時に場所をとらないこと、子どもが大きくなったらシートを外して使えること、そして何より歩道を走行できる点で優れているとも言えます。しかし、子どもが落下して死傷するケースが後を絶たない点で、問題があるのは確かでしょう。( ↓ 動画参照)
諸外国でも、普通の自転車にシートを取り付けて走っている人はいますが、もっといろいろなタイプの自転車も使われています。例えば、キッズトレーラーを連結して走っている人がいます。年齢によってシートタイプや、ゆりかごタイプなどもあります。トレーラーが2輪で安定するものもあります。( ↓ 動画参照)
相対的に多くはないと思いますが、サイドカーを接続して走行している人もいます。3輪になるので基本的に転倒することはありません。日本の法令では、側車付き自転車は歩道走行出来ませんが、環境や通園ルートなどによっては選択肢となるでしょう。子どもも喜びそうです。
やはり多いのはカーゴバイクでしょう。3輪のものなら安定していますし、子どもが乗る位置が低いため重心も低くなり、落下した場合のダメージも小さくなります。2人以上まとめて乗せられるものもあります。駐輪時に場所をとるとか、幅によって歩道走行できないなど難点はありますが、安全性は高くなります。
そもそも、3輪の自転車に乗る手も考えられるでしょう。3輪ならば停車時でも安定しますし、子どもの重さを支えきれずに転倒するようなリスクも低くなるはずです。3輪にもいろいろなタイプがあるので、それぞれ長所短所がありますが、これも一つの方法です。場所をとらない折りたたみ3輪などもあります。( ↓ 動画参照)
選択肢はいろいろありますが、子どもの安全性が高くなる一方で欠点もあります。相対的に価格が高い、駐輪時に場所をとる、歩道走行できない、子どもが大きくなった後は無駄になる、といったところでしょうか。郊外など歩道走行出来なくても構わない場所ならよくても、車道を通るのは危険なところもあるでしょう。
そこで、行政が購入補助を出したり、あるいは子育て中の親に購入させるのではなく、相応の料金で子育て期間だけ貸し出すというのが有効だと思います。子どもを送迎するようになると、子育てに必須と実感する親が多いので、これは有力な子育て支援にもなります。
近年は、都市近郊でも人口減少に悩む自治体は多く、待機児童の解消や、教育費の軽減、子どもの医療費免除や減免、出産費用の補助など、子育て世代の誘致に力を入れる自治体が多くなっています。そんな中で、子育て向け自転車の貸し出しも有力な子育て支援策ではないでしょうか。
ニーズが見込めるならば、民間がサブスクで提供するような事業が出てきてもいいように思います。自治体と連携してサービスを提供するような形も考えられるでしょう。子どもの落下というリスクを啓発する一方、子どもを乗せるのに、より適した自転車が、もっと普及してもいいはずです。
側車付きは別として、4輪以下で長さ190センチ、幅60センチ以内であれば、法令上は普通自転車と見なされ、歩道走行することが出来ます。その地域の道路環境に応じた種類の子ども乗せ用の自転車を採用すれば、今あるタイプのものより安全性が向上するはずです。
通勤途中の子どもの送り迎えに、子供を乗せる自転車が欠かせないと、必要になってみて初めて気づく親も多いですが、自治体の子育て支援のメニューにあれば心強いはずです。日本では馴染みの薄い自転車も多いので、その利便性や安全性を紹介し、まず広く周知するようなことも必要かも知れません。
ふだん、子どもを乗せて自転車に乗っている親は、あまり意識していないかも知れませんが、日常の中で、ちょっとしたはずみで突然子どもが落下して亡くなったり、重篤な後遺症を負うケースが後を絶ちません。この不幸は、極力防ぎたいところです。
ママチャリタイプの自転車にチャイルドシートを取り付けることしか思い浮かばない日本人は多いと思いますが、もっといろいろな選択肢、いろいろな自転車の種類があることを知ってもらい、場所やニーズに応じて使ってもらうことを考えてもいいような気がします。
◇ 日々の雑感 ◇
ウクライナの反撃が報じられています。ソ連の版図復元と帝国の復活というプーチン大統領の個人的な野望は挫かれるべきですが、押し戻されてロシア側のメンツが立たなくなり、余計に引くに引けなくなることが懸念されます。
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Posted by cycleroad at 13:00│
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