October 03, 2022

自転車を使うしか方法がない

最近、自転車に乗り始めた人は世界中にいます。


コロナ禍で密になるのを防ぐため通勤などで自転車を使い始めた人、ロックダウンによる運動不足解消のため乗り始めた人、あるいはガソリン価格高騰でクルマをやめて自転車にした人、もちろん環境負荷を減らす、温暖化ガス排出削減に貢献できるのはEVでなく自転車だと考えた人、きっかけはいろいろあるでしょう。

しかし、好むと好まざるとに関わらず、自転車に乗せざるを得なくなった人もいます。ウクライナの人たちです。以前、ウクライナ軍の兵士が、偵察や隠密な移動、対戦車用のジャベリンなどを使った奇襲攻撃などで、軍用の自転車で移動して効果を上げているという話を取り上げました。

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民間でも自転車に頼らざるを得ない人たちがいます。ロシアの占領地やその近郊から避難する人たちです。侵攻当初は、鉄道や自家用車などで避難していたものの、戦乱が長引くにつれ、それらでの移動が困難になった地域があります。戦闘の最前線となっている東部や南部です。

鉄道の線路や幹線道路は爆撃で寸断された部分もあります。自家用車も被害を受けたり、無事だったとしても燃料が手に入りません。もし使えたとしても、クルマで移動したら攻撃の標的になります。橋の崩落や、道路への爆撃による陥没などで、まともに走れない場所も多いでしょう。

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当初は、あえて故郷の街に残る判を断した人も多かったと思いますが、食料や日用品は不足し、電気やガス・水道などのインフラが失われ、住宅は砲撃されるなどして、ここへきて避難させるを得なくなった人たちもいます。ロシア軍の支配下に入った地域では、市民の虐殺や拷問も行われていると言います。

さらに東部と南部の4州が違法で強引な住民投票により、ロシアに併合される事態になっています。ロシア領となれば、徴兵されて自国の兵士と闘わされることになりかねません。直接闘わなかったとしても、ロシアによって、いわば人間の盾にされるだろうことは容易に想像がつきます。

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いざ避難しようとなった時に、可能なのは徒歩での避難か自転車くらいしか無いのです。徒歩で逃げる人もいますが、自転車ならば、徒歩に比べて機動力があります。非舗装路や、林の中の細い道なども走れますし、陥没した穴を避けたり、橋の無い場所を渡河することも可能でしょう。

もちろん、日本人が趣味で乗っているような高機能で整備されたものではありません。私たちには戦場を自転車で逃げるなんて想像も出来ませんが、ウクライナの人たちにとっても、想定外の事態でしょう。ほかの手段が閉ざされ、自転車以外に有効な選択肢がないということだと思います。( ↓ 動画参照)



無事、西部の都市へ到着して避難生活を始めたとしても、クルマが使えるとは限りません。戦時下であるのは同じで、燃料も手に入りにくくなってます。最初から西部の都市に住む人はともかく、避難先での移動や通勤などに自転車は現実的な手段となっているようです。

一方のロシアでは、プーチン大統領が部分的な動員令を出しました。軍務経験のある人が対象で、学生などは対象から外れるとしましたが、実際には軍務経験のない人や学生、高齢者にも召集令状が届き、デモで拘束された人がそのままとか、道を歩いていたら招集されたなどの例も報告されています。

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これを受け、ロシア国内では招集されて戦場に派遣されるのを恐れて、ロシアを脱出しようとする人が続出しています。これまで、職業軍人や傭兵、民間軍事会社などの話だと思っていた人が、突然動員されかねない事態となって混乱し、国外への脱出に迫られているわけです。

すでに招集され、まったく訓練もなしに最前線に送られることになったとか、与えられた銃は錆びて使えないとか、医薬品などの装備もないなど悲惨な状況が、同じロシア人から伝えられています。これまで他人事のように無関心だった人が、突然プーチン大統領を批難したり、国外脱出しようと態度を急変させています。

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これまでロシアの特別軍事作戦を支持し、ウクライナに無関心だったのに、自分のこととなったらデモをしたり、国外脱出を図るなど無責任と言う人もいますが、誰だって無駄に命を落としたくありません。プーチンの帝国拡大の野望のために兄弟国の人を殺すなんてまっぴらだと考えるロシア人も増えているようですが当然でしょう。

これに対し、脱出先の国でも波紋が広がっています。ロシア人が殺到しているジョージアでは、南オセチアなどロシアに国土の2割を不当に占領されており、ウクライナと似た状況です。それなのに、なぜロシア人を受け入れる必要があるのかとの反発があります。これも当然の感情でしょう。

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旧ソ連圏の国以外でも、賛否は分かれています。悪いのはプーチンであって、市民に罪はないと人道的配慮を主張する人もいます。動員の対象は、いわゆる生産年齢人口と重なるので、人手不足でロシア経済への打撃となり、よりロシアを追い込むことになると考える人もいます。

一方で、これまでプーチンを賛美して、ウクライナでの虐殺にも目を背けていたのに、手のひらを反すような人たちを保護する必要はないと国境封鎖に踏み切るべきと主張する人もいます。国外脱出を図るような人がロシア国内に残れば、反プーチンの世論を拡大させ、プーチンへの支持が足元から崩れると期待する声もあります。

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ロシアも深刻な兵員不足で、本当は避けたかった国民の動員に踏み切ったわけですから、国外脱出が広がって兵員の不足が補えなければ困るでしょう。ロシアによる国境封鎖の可能性もあります。ロシアからか、相手国によるかは別として、国境が封鎖される前に脱出を急ぐのも自然な動きです。

航空便の座席は先まで満席、陸路は国境に向けて大渋滞です。そこで、自転車を使って国境を超えようという人たちが出ています。一刻も早く国境を超えるには、渋滞に並ぶより、自転車のほうが速いというわけです。ここにも、自転車に乗らざるを得ない人が出ています。

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そんなニーズを見て、国境に向かう人に自転車を5万ルーブルで売り付け、国境を超えた人から5千ルーブルで買い取るビジネスを始める人もいると言います。商魂たくましい人がいるものです。ここで自転車を選ぶことが、生存に直結するかも知れないと考えれば、高くても買う人はいるに違いありません。

東部では、ウクライナが反転攻勢に出ており、プーチン大統領は追い込まれているとの見方があります。しかし、4州を併合したと主張し、ロシアの領土への攻撃と見なし、核兵器の使用もちらつかせています。今後どうなっていくのかは予断を許しません。

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ちなみに1年前、アメリカ軍が撤退したアフガニスタンでも、自転車に乗る人が増えています。タリバン支配下で中央銀行の資産などが凍結され、アフガン経済が崩壊した状態になっているからです。市民にとっては、他の選択肢がなくなりつつあります。ここでも、自転車に乗らざるを得ない人が出ているわけです。

燃料なども手に入らないため、誰もが自転車を手に入れて乗り始めています。首都カブールでは、自転車修理店が続々誕生していると言います。道端の掘立小屋のような店も多いようですが、ニーズが急拡大しているからです。生活が困窮する中、新たな商売を模索する人も少なくないのでしょう。

戦争や、その後の混乱のような極限の状態で自転車が使われています。世界には、好むと好まざるとにかかわらず、自転車に乗るしかない人がいます。欧米や日本などの国で、好んで自転車に乗ることが出来る人は、恵まれていると言わざるを得ません。

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ありがたいことに、日本は77年間、戦争に巻き込まれずに済んでいます。しかし、台湾海峡も波が高くなってきていますし、今後も平和でいられるとは限りません。また、日本の場合は災害大国です。震災で電柱が倒れたりする中、一部で自転車が移動・輸送手段として活躍しました。

津波の避難にも有効ではないかとされています。津波で一斉に避難が始まれば、渋滞で身動きがとれなくなるのは必至です。東日本大震災の数年後、被災地で大きめの地震で津波注意報が発令された時に、多くの道路で渋滞が発生しました。全く教訓が生かされていない事態に、関係者は青くなりました。

そう考えると、日本でも、自転車に乗らざるを得ない事態が来ることは十分にありえます。ふだん、好んで自転車に乗れる自由や平和に感謝する一方で、災害の時などに自転車で避難したり、活用することも意識しておくべきなのかも知れません。




◇ 日々の雑感 ◇

オースティン米国防長官が、プーチン大統領は抑制が利いていないと危機感を示しています。配下のカディロフ首長から低出力の核兵器を使用すべきと提言されるなど強硬派から突き上げられているのも気になるところです。

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