製品などが新しく生まれ変わることもありますが、よく聞くのは店舗のリニューアル、いわゆる新装開店でしょう。競争の激しい小売業界では、新しい競合店舗が登場したりすると、お客の流れが変わり、売り上げ不振に陥ったりします。挽回のためにリニューアルを迫られることもあるでしょう。
かつて、いわゆる駅前商店街などからお客を奪った大規模なショッピングモール、ショッピングセンターも例外ではなくなっています。クルマで移動し、まとめて買い物をする人が増えたこともあって、全国各地で郊外型のショッピングセンターが競うように開発され、過当競争に陥っている地域も少なくありません。
たくさんのテナントが入り、なんでも揃うだけでなく、映画館や娯楽施設が併設されているなど、休日を一日過ごせるような大規模なモールもあります。買い物だけでなく、食事する店もいろいろあるので、地元の友達と集まる場所になっていたりもするようです。
近年、地方都市やその近郊では、その地域の若者の半数が余暇をショッピングモールで過ごしているという調査があります。他にレジャー施設が少ないことがあるのでしょう。そんな大規模なショッピングモール、集客力の高い施設でも、近隣に他の新しい施設が開業したりすると、途端に客数が減ったりします。
どうしても新しく出来たモールに行ってしまい、古い方へは行かなくなってしまったという人も多いに違いありません。足が向かなくなると忘れてしまいますが、久しぶりに通ったら、そのショッピングモールが閉店していたなんてこともあります。地域に一つや二つ、そんな場所があるのではないでしょうか。
コロナ禍でネット通販の利用が増加し、密を避けるために、リアルの店舗が苦戦したということもあります。しかし、コロナを別にしても、その前からの傾向としてショッピングセンターは閉店しています。日本全国では毎年、数十施設が新規にオープンする一方で、数十の施設が廃業、閉店しています。
日本の小売り大手のショッピングセンターも例外ではありません。競合との競争に負けた場所では閉店、撤退しています。日本全体では3200箇所以上のショッピングセンターがありますが、2020年には開業した施設数が40であるのに対し、廃業が42となり、2年連続で減少しています。
知名度や集客力のあるテナントでも、地域の競合により売上不振となれば撤退したり、移転したりします。テナントの空きが増えてくると、さびれて客数が減り、さらに撤退テナントが増える悪循環です。核となる大型のスーパーマーケットなども苦戦し、思わぬ短期間でリニューアル、それも功を奏さず閉鎖を迫られることがあるようです。
これは少子化・人口減少の日本だけの話ではありません。海外の大規模なショッピングモールでも、栄枯盛衰は激しく、閉鎖に追い込まれるショッピングモールは少なくありません。小売り業態の変化や、核となる有力な店舗が撤退したことで、廃業に至ったモールも少なくないようです。
アメリカを含めた北米でも、そのような施設は枚挙にいとまがありませんが、カナダ・バンクーバー北部のキャビラノモールもその一つです。ここは、有名なシアーズが破たんして廃業したため、5年間空き家となっています。その後に入居しようという会社は現れていません。
核となるようなテナントが撤退すれば、全体の集客力はガタ落ちでしょう。ショッピングモール自体を運営する会社は存続していても、一度斜陽化したモールの立て直しは容易ではありません。中には、モールの土地全体を売却して、物流倉庫などに転換する例もありますが、それはごく限られています。
このキャピラノモールは、2019年から地元の自治体とも連携して再開発を計画しています。空き家になった後も、コロナ禍となったため計画策定は難航していました。ようやく先月、新しい計画が示されました。どんな店が入るのかと思えば、なんと、インドアのMTBパークにするという計画です。
旧シアーズの店舗をそのまま使って、室内のマウンテンバイクパークにしてしまおうという構想です。これは大胆な発想の転換と言えるでしょう。地元、ブリティッシュコロンビア州では初めてのインドアのバイクパークとして整備し、2023年2月のオープンを目指しています。
1階だけでも約6万5千フィートの広さがあり、天井の高さは15フィートあります。インドアのMTBバイクパークにはうってつけです。間仕切りの壁などは取り払いますが、店内をそのまま使えます。1階ならば、外からMTBでそのままアクセスもしやすいでしょう。
屋上も5万平方フィートありますが、こちらは季節限定の屋外のコースとすることが検討されています。もちろん、自転車や用具のレンタル、飲食やラウンジ、サポート、アメニティサービスなども提供される予定です。関連するテナントなどの出店も期待出来るでしょう。
コースは基本的に木造で、それほど細かな加工は必要としません。塗装も必要最低限、使う材木も新品である必要はなく、荷物を運ぶパレットなどの木工製品を再利用することも出来ます。内装もそのまま使えば、工事も短期間ですみますから、早期のオープンも可能になるでしょう。
イニシャルコストは、相対的に少なくて済むはずです。このスペースをいくらで賃借するのか知りませんが、5年も空いていたのですから、相応の値引きも期待出来るでしょう。地域を振興したい自治体の協力も得られますし、地元の企業の出資なども見込まれています。
シアーズの店舗の居抜きでインドアMTBパークとは意外ですが、これはやってみる価値は十分にありそうです。もともと、ショッピングモールですから、周辺の商圏人口もそれなりにあるはずですし、周辺競合施設と似たようなテナントを集めるより、新しい娯楽施設として集客が見込めそうです。
( ↓ 下の画像は他の州にあるインドアMTBパークの例)
MTBパークとしては、自然の中のほうが解放的ですが、雨でも濡れなくてすむのはアドバンテージです。雨が降った日には、サイクリングや他のアウトドアスポーツを中止して、インドアで楽しもうと考えるお客が集まってくる可能性もあるでしょう。
日本でも、廃業して施設がそのままのモールや、核テナントが撤退したり、空き店舗ばかりになったショッピングセンターは少なくありません。近年、スキー場などを使った郊外型MTB施設は増えてきましたが、屋内型は未知数です。でも、どうせ場所が空いているなら、期間限定でも思い切って試してみる価値はありそうです。
( ↓ 下の動画は他の州にある、Joyride 150 というインドアMTBパークの例)
最近は郊外ばかりでなく、それなりに乗降客数のある駅前の百貨店、ショッピングモールでもテナントが撤退してしまい、閉店するところがあります。苦労して似たようなテナントを誘致して競合に対抗するより、駅前のインドアMTBパークという意外性のあるリニューアルも、案外面白いかも知れません。
◇ 日々の雑感 ◇
水際対策が緩和されインバウンド増加が期待されています。ただ多くの諸外国はもはやマスクをしていない中で日本には違和感があるでしょう。他の国がマスクなしでも感染が落ち着いているのに、科学的にも合理性に欠けます。当面マスク無しでも問題ないと見込まれるので景気浮揚のためにも、マスクを外すべきではないでしょうか。
Posted by cycleroad at 13:00│
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