サイクルロード 〜自転車への道
世界の都市で自転車が選ばれ始めている。さまざまな角度から自転車の話題を。
November 02, 2022
図書館で本を借りて読む方式
最近、自転車に乗る人が増えています。
健康志向や環境問題への関心の高まりなどもありますが、コロナによるパンデミックで、公共交通機関での密集を避けるため、ロックダウンによる運動不足やストレスの解消に乗り始めた人も多かったようです。自転車が品薄になって手に入らなくなるほど売れた国や地域もありました。
しかし、全体から見れば、自転車に乗らない人のほうが圧倒的に多いのも確かです。その理由は、特に関心がない人、わざわざ体力を使って疲れるのがイヤな人、例えば通勤に自転車を使おうにも著しく不便な人、いろいろあるでしょう。中には、特にきっかけがないから乗るに至らない人もいるに違いありません。
自転車を買っても乗り続けるか確信が持てない人、自転車の保管場所や駐輪場所を確保するための手続きなどが面倒な人、坂がラクとは聞くけど、電動アシスト自転車に乗ったことがなくて価値が実感できない人、買ってみるには高すぎて二の足を踏んでいる人、いろいろあるでしょう。
そこで、アメリカ各地で最近増えているのが、自転車を貸し出す図書館です。自転車で巡回して本を貸し出す図書館ではありません。普通の公共の図書館が、本と同じように自転車を貸し出しているのです。広い意味でレンタサイクルですが、営利ではなく無料です。本やCD、DVD、ブルーレイなどと同様に貸し出します。
それぞれの州や自治体ごとの取り組みなので、内容にはバラつきがありますが、市民に自転車を無料で貸し出す点は一緒です。車種も普通のシティサイクルだけでなく、ロードバイク、電動アシスト自転車、トレイラーやカーゴバイク、トライクやタンデム、リカンベントやハンドバイクまで用意しているところもあります。
地元の住民に自転車を試してもらうことが主な目的です。続くかわからないので買って試すのは高すぎるけれど、タダなら一度試してみるか、とか、関心はなかったけど借りてみようかな、など潜在的に自転車を試してみたいというニーズはあるでしょう。試してみたら気に入って、自転車に乗り始める人も出てくるはずです。
電動アシスト自転車に乗ったことのない人も多いに違いありません。カーゴバイクを試せるなら試してみたいと考える人もあると思います。そうした市民に自転車を貸し出すことで、自転車に乗る機会、きっかけを提供するのが、自転車を貸し出す図書館の公共サービスの一つと考えているのです。
大都市のようにシェアサイクルがある地域ばかりではありません。観光地でもなく、レンタサイクルもないとすれば、なかなか自転車を借りて試す機会がありません。自転車を借りることで、購入を判断したり、どんなタイプがいいか試すなど、自転車を始めるきっかけになるはずです。( ↓ 動画参照)
無料で自転車を貸したら、地元の自転車店が困るのではないかと考える人もあるでしょう。しかし、本と同じように貸出には期限があります。システムはそれぞれですが、その日の閉館時間までだったりします。人気ならば予約も必要でしょうし、無期限に貸すわけではありません。毎朝借りて通勤に使うといった使い方は出来ません。
自転車を試すことで、むしろ購入につながることも期待できます。実際に、地域の公共図書館の自転車の貸し出しに対して、販売会社や地域の自転車店などが協賛したり、メンテナンスなどで協力している例もあります。本と違って、自転車を使い続ける決心がつけば、借りて使うのは不便なので購入するでしょう。
公共の図書館としての市民サービスの一つですが、自転車に乗る人が増えれば、市民の健康増進に寄与します。クルマから乗り換える人が増えれば渋滞緩和や温暖化対策にも貢献するでしょう。買ったけど乗らなくなって、無駄な廃棄物を増やすのを防いだり、地域の自転車店などの商業振興にもつながるかも知れません。
障害がある人向けのアダプティブバイクを貸し出すところもあります。特殊な自転車は、なかなか買って試すわけにはいかないので、普通の自転車に乗れない子どもなどにとっては、貴重な機会となるに違いありません。自転車の貸し出しは、なかなか有用な公共サービスと言えるでしょう。
一部、図書館ではなく別の独立した施設やNPOが運営するところもあるようですが、多くの場合、地域の公共図書館であり、本の貸出カードを作ってあれば、すぐに借りられます。ヘルメットやライト、ロックなども一緒に貸してくれます。試す目的でなく、たまにサイクリングに出かけるのにも重宝するでしょう。
わざわざメーカーの試乗会に出向いたり、レンタサイクルがある地域まで行って試すのと違って、自宅周辺やいつも乗る環境で試してみることが出来ます。最近、自転車が関心を集めることも多いですから、これは評判になり、導入する自治体が増えるのも道理です。
すでに自転車を持っている人でも、地元の図書館にあまり一般的でない車種、例えばリカンベントがあれば試してみようと思う人もあるでしょう。ちょっとした荷物を運ぶ用事がある時にカーゴバイクが借りられれば便利です。乗用のカーゴバイクならば、子どもの送迎の必要が出来た時に、試してから買うことも出来るわけです。
現在、全米各地に35館ほどの自転車貸出図書館があります。ヨーロッパの国の一部にも取り入れる図書館が出てきています。公共の図書館の新しいサービスで、いわゆる自転車シェアリングとは違った形の共有です。今後も少しずつ増えていくのではないでしょうか。
日本では、格安のママチャリが市場を席捲しているので、ママチャリを借りて乗るニーズは小さいと思います。ただ、そのぶんスポーツバイクに乗ったことのない人は多く、機会があれば乗ってみたい人はいるはずです。一度乗ってみれば、目から鱗が落ちる人も少なくないでしょう。
つまり、日常のアシとしてではなく、スポーツバイクに乗る人を増やす可能性があります。近年、自転車の町として観光振興などに励む自治体が増えていますが、地域住民がスポーツとして自転車に乗るようになるなら、また新しい展開が期待できます。そんな観点で、地域の公共図書館で自転車を貸してみるのもいいかも知れません。
◇ 日々の雑感 ◇
サッカー・ワールドカップ・カタール大会の開幕が近づいてきました。代表メンバーも発表されましたが楽しみです。
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Posted by cycleroad at 13:00│
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