January 07, 2023

雪の中どうしても出かけたい

自転車好きは世界中にいます。


趣味で自転車を楽しんでいる人も多いでしょう。そして、普通の道路のみに飽き足らず、いろいろな場所で自転車に乗っている人たちがいます。さらに、季節に関わらず自転車に乗りたい人もいます。中には、冬の降雪期であろうと自転車に乗る人たちもいます。

昔から一部で、雪でも自転車に乗ってきたツワモノはいましたが、2000年代にファットバイクが誕生・普及し始めて以降、雪上や雪道で乗るのも、かなりポピュラーになってきたと言えるでしょう。雪上でのファットバイクのレースを楽しむ人もいますし、地域によっては、雪道を自転車通勤するような人もいます。

ただ、雪質や地形などにもよります。いわゆる圧雪や、粉雪が積もったような状態ならファットバイクでも乗れるでしょうし、ファットバイク用にスパイクのついたタイヤなども売られています。その地域に応じた装備を選べば、雪道でも自転車に乗れます。

自転車スパイクタイヤファットタイヤ
ファットバイク


一方で、市街地などの積雪のある道路ではなく、雪が積もったオフロードや深い雪などだと違ってきます。ファットバイクでも走破が難しいような地形や雪質もあります。スノーモービルでもなければ走破できないような雪道、場所もあるに違いありません。

以前から、そのような場所でも自転車に乗りたいと考える人がいました。例えば、2015年頃に発表された構想、“Projet Avalanche”では、スノーモービルのような無限軌道と、スキーの板のような前輪が考えられていました。ちなみに、前輪のスキー板を、プルークボーゲンのように動かすところがユニークです。



スキーをやる方ならご存じの通り、スキーで滑る時、スキー板の前を閉じるように『ハ』の字型にするとスピードを落として止まることが出来ます。それをスキー板状の前輪で行ってブレーキにするというシステムで、“V-shaped braking mechanism”と名付けられています。( ↑ 動画参照)

S-TraxS-Trax

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その後、電動アシスト機構が普及し、実際に無限軌道を搭載した製品がいくつか登場してきました。自転車のフレームはそのままに、前後輪を付け替えるキットです。無限軌道とスキー板のような前輪の組み合わせは同じです。このキットがあれば、オールシーズン自転車に乗れることになります。( ↑ 動画参照)

下はまた別の製品ですが、無限軌道になった後輪をペダルでこぐのは、なかなか大変だと思います。でも電動アシストがあれば、かなりラクになるはずです。以前は構想だったペダルで無限軌道を動かすことも、電動アシストで現実的になってきたのでしょう。多少の上り坂でも十分に走破できそうです。( ↓ 動画参照)

 Envo Envo

 Envo Envo



さて、北欧などには雪の中でも、普通の自転車で移動している人たちがいます。例えばデンマーク・コペンハーゲンです。言わずと知れた自転車先進都市で、自転車は市民にとって最も重要な移動手段となっています。当然のように自転車で通勤しますし、それは冬でも同じです。自治体は優先して自転車レーンを除雪しています。

参考記事・コペンハーゲン:雪が降ろうが自転車をえらぶ
自転車レーン除雪車除雪が行き届いている

コペンハーゲンほど有名ではありませんが、フィンランド・オウルも先進的な自転車都市です。オウル市が自転車インフラの整備に力を入れており、多くの市民が自転車に乗ります。かなりの降雪がある街ですが、朝の通勤時間前には、全ての主要自転車道を除雪することを市が約束しているからです。

参考記事・オウル:雪が降っても自転車は乗れる
OuluOulu

例え除雪されていたとしても、全くの夏用のタイヤだと滑ってしまうことがあるかも知れません。でも、近年売られている自転車用スタッドレスタイヤやスパイクタイヤ等ならば、問題なく走れそうです。自転車レーンが整備され、除雪が行き届いた街ならば、冬でも自転車は実用的に使えます。

北欧などでは雪が降りますが、日本のような湿ったドカ雪が降るわけではないことも背景にあるのかも知れません。ただ、雪の降り方によっては、いつでも除雪された状態とは限りません。降雪量の多い日だと、除雪してもすぐに積もってしまうでしょう。除雪が追い付かないこともあるに違いありません。

SustainawaveSustainawave

カナダ・ブリティッシュコロンビア州で、“Sustainawave”という電動アシストのカーゴバイクを販売する会社を数年前に始めた、Phil Marciniak さんは、これまでにない発想で、雪道の克服法を考えました。それは、除雪車のような自転車(カーゴバイク)です。

Sustainawave

動画で見れば一目瞭然ですが、前輪の前に、除雪用の羽根のような部品がついています。これで積もった雪をかき分けて進みます。試しに、プラスチックで出来た雨水を溜める容器を切って取り付けてみたそうです。最初はスムーズに前進できなかったり、雪がかけなかったり、いろいろと試行錯誤がありました。

Sustainawave

何度も改良した結果、積雪が15センチくらいまでなら有効に除雪できるようになりました。これで自ら除雪をし、道路を平らにして進むわけです。平坦な道路でも、人が歩いた後など雪が凸凹していて、例えファットタイヤでも、雪とうまく接地せず、進みにくいことがあります。

Sustainawave

しかし、この除雪用のプラウがあれば、走行する道路が除雪されて平坦になり、タイヤの推進力も保てます。なるほど、これは画期的です。言われてみれば道理ですが、なかなか自分の自転車を除雪車にしようとは考えないでしょう。自ら除雪しながら進む自転車なんて、見たことも聞いたこともありません。



実際に、Marciniak さんがこれで走行していると、道行く人は一目でその意味を理解し、自ら除雪して走行するというアイディアの突飛さに爆笑したり、歓声を上げたり、手を振ってくれたりするそうです。寒い雪道でテストをしていた時間も、とても楽しかったと言います。

もともとは、Marciniak さんが大雪の日に、どうしてもベトナム料理を食べたくなったことが始まりです。大雪ですから、店には配達を断られました。何もわざわざ大雪が降った日に出かけなくてもいいのですが、どうしても食べたくなった彼は、自転車でダウンタウンまで買いに出かけ、案の定、えらい目に遭いました。



彼も、好き好んで雪が降る日にでかけたくないのですが、どうしても自転車で移動しなければならない時のために、この除雪自転車を考え出したわけです。これならば、自治体が除雪してくれない街に住んでいても、あるいは除雪が追い付かない時でも、自転車で出かけることが出来ます。

Marciniak さんが住んでいるのは、ビクトリア郊外のサーニッチという地区ですが、同州では、道路のクルマ用の車線は除雪しても、なかなか自転車道や自転車レーンまでは除雪してくれないのです。ですから、それまでわざわざ積雪の中を出かけようとは思わなかったのですが、何とか乗れないものかと考えたのだそうです。

Sustainawave

彼の店でも、まだ製品化したわけではありません。製品化したとしても普及するかはわかりません。ただ、自分で除雪をしてでも自転車で移動したいというニーズは、案外あるかも知れません。これが一般的なスタイルになるかは別として、自転車で雪道を走る方法が、また一つ生まれたと言えそうです。




◇ 日々の雑感 ◇

岸田首相が『異次元の少子化対策』を表明、中身がないまま言ったようですが、どうやら既存のものばかりで、ちっとも異次元ではありません。『新しい資本主義』もそうでしたが、自らハードルを上げておいて期待外れの繰り返し、二言目には『丁寧に説明』とは言うものの同じ内容を繰り返すだけ、支持率が下がる一方なのも当然でしょう。

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