February 27, 2023

世界で起きている人道的危機

ロシアのウクライナ侵攻から1年が経ちました。


国連総会では、丸1年となるのに合わせて開催された緊急特別会合で、ロシアの侵攻を非難する決議案を圧倒的多数で採択しました。141カ国が賛成し、ロシアやベラルーシ、シリア、北朝鮮など7カ国が反対、中国やインドなど32カ国が棄権しています。

賛成が圧倒的多数とは言うものの、棄権する国が32カ国に上るのも事実です。国によって外交的な立場や政治的な思惑もあるのでしょう。例えばインドは、歴史的にロシアとの関係が深く、旧ソ連やロシア製の武器を使ってきたため、急に関係を閉ざすと保有する兵器の補修部品も入って来なくなるという事情が指摘されています。

アフリカ諸国にも棄権が多かったわけですが、やはり事情はいろいろあるのでしょう。ロシアから経済援助を受けている国も少なくありませんし、宗主国だったヨーロッパ各国と対立している国もあります。西側諸国を批難したり反発してきた国もあるわけです。

ウクライナ侵攻1年ロシア即時撤退を

アフリカのある国の関係者がメディアのインタビューに、『なぜウクライナばかり援助されるのか、アフリカにも戦争の被害で苦しむ人がたくさんいる。』と答えていましたが、これも本音でしょう。先進国の目がウクライナばかりに向くことへの危機感や、不公平感を感じている国もあるに違いありません。

ロシアによるウクライナ侵略と、他の戦争を単純に比較するわけにはいきませんが、世界では現在も50か所以上の場所で、戦争や内戦、武力紛争が続いています。アフガニスタン、ミャンマー、イエメン、エチオピア、ソマリア、シリアなど、多くの国の市民が戦時下で苦境に陥っているのも確かです。

南スーダンもその一つです。1955年から内戦を繰り返し、ようやく2011年にスーダンから独立しました。国連が独立承認した中では、一番新しい国です。しかし、その後も南北スーダンの国境紛争や南スーダンでの内戦危機で今も戦闘が起きています。断続的に半世紀以上、戦乱の中にあります。

南スーダン南スーダン

アフリカ最大の難民危機とされており、南スーダンは世界でもっとも脆弱な国であり、世界で最も貧しい国とされています。内戦で経済は疲弊し、ハイパーインフレなども起きています。飢餓に苦しむ人も多く、首都のジュバでも半数ほどは、安全な水にさえアクセスできないという人道的危機に陥っているのです。

道路も未整備ですし、国を流れるナイル川にかかる橋は1本しかなく、電気や水道などのインフラも足りていません。治安も悪化しています。食料だけでなく、安全な飲み水さえ手に入れられない人が国民の半数近くに上るという、まさに危機的な状況に陥っているのです。

South SudanSouth Sudan

公営の水道と呼べるようなインフラは住民の15%にしか水を供給できていません。水道の代わりに給水車が地区の貯水槽に水を届けていますが、その貯水槽のある場所も限られます。ユニセフが設置した、ナイル川の水を汲み上げて塩素などで処理する給水ポイントが2か所ありますが、圧倒的に足りていません。

これらにアクセスできない多数の人々に、比較的安全な水を届けているのは、なんと自転車で水を運ぶ、水売りの人たちです。事実上の水道インフラとして、必要不可欠な部分を担っています。ジュリカンと呼ばれるポリタンクに水を汲んで、自転車に積んで運んでいます。

South SudanSouth Sudan

首都でも半分近い地域では、この自転車による水売りが水道インフラです。もし、ここから水が買えなければ、後は小川の水を飲むしかありません。しかし、川の水は汚染されていて危険で、コレラをはじめとするさまざまな病気で亡くなる人が後を絶たないのです。

水を売る人たちも地域の貧しい人たちです。この商売でなんとか生計を立ちようとするわけですが、お客は、さらに貧しい人たちであり、この商売でお金を稼ぐのは容易ではありません。もちろん、重い水を運ぶのですから、体力的にもきついものがあります。

South SudanSouth Sudan

消毒くさい水ですが、ユニセフによる給水ポイントまで行ければ、無料で手に入れられます。しかし、全体で2か所しかないので、自分で水を運べる人は限られます。結果として、自転車で水を売りに来る水売り商人に依存せざるを得ないのです。

個人は無料ですが、水売りを商売とする人は料金を支払う必要があります。その料金で、水処理をする薬品を購入して給水が成り立っているのです。最近はインフレもあって、ますます余裕がなくなり、水を買う人も売る人も非常に困難な状態になっています。結果として、川の水に頼らざるを得ず、病気になる人が増えています。

South SudanSouth Sudan

この状況を打開するため、何らかのインフラを整備するためには、まず度重なる内戦を終わらせる必要があります。しかし事態は膠着しています。国連のグテーレス事務総長は、飢饉に苦しむ10万人、人道支援を必要としている750万人、ほか戦闘から逃れた人々の窮状を南スーダン政府が無視していると非難しています。

ウクライナの人々も、まさに戦時下で困難な状況が続いていますが、南スーダンの人たちもまた苦しい状態に置かれています。さらに世界では、50か所以上で戦争や内戦、武力紛争により、人道的危機にある人々が大勢います。世界中で冷酷な現実があるのは確かです。










◇ 日々の雑感 ◇

中国はウクライナ危機の政治解決に向けた文書を発表しましたが、従来の主張の範囲内で実質的な内容はなく何を今さらと失望も広がっています。仲裁者を強調したいのでしょうがロシア寄りを明らかにしただけに見えます。

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