April 07, 2023

人々の頭上をドローンが飛ぶ

レベル4飛行が解禁されました。


無人航空機、ドローンの規制です。2022年12月の改正航空法の施行を受け、3月31日に国土交通省がガイドライン(Ver.4.0)を公表しました。これにより、目視内での操縦飛行のレベル1、目視内での自律飛行のレベル2、無人地帯での目視外飛行のレベル3に続き、有人地帯での目視外飛行のレベル4が解禁となりました。

特に、物流の分野などでの利用拡大が期待されています。ドローンを宅配サービスなどの荷物の輸送に使うわけです。物流業界では、過疎地や離島など非効率な地域での配送、交通渋滞による遅延、ドライバーの不足など、さまざまな課題を抱えており、ドローンでこの緩和が見込まれています。

Photo by Momomomo.dicentra,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by ,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

すでに、配送会社は実用化に向けた実証実験を進めており、近い将来、場所によってはドローンで荷物が届くのが普通になる可能性があります。レベル4ですから、中山間地域だけでなく、都市部でも歩行者の頭の上を荷物を運ぶドローンが飛び回るようになるかも知れません。

2010年代以降にリチウムイオン電池が普及し、ジャイロスコープや加速度センサーなどの技術革新により、安定して飛行でき、安価で低騒音のドローンが普及しました。空の産業革命と呼ぶ人もいます。物流分野以外でも、農薬や種子、肥料散布などの農業分野でも使われてきました。

レベル4飛行レベル4飛行

レベル4飛行ドローン物流

そのほかに、山間部での電線の架線、橋梁などの足場なしでの点検、広域の測量、空中写真撮影、テレビなどメディアの空撮、警察や警備会社による交通状況の監視、野生動物の生態調査、消防や災害現場での被害状況確認、イベントなどで夜空に展開する編隊飛行による大規模ショーなど、さまざまな分野で使われています。

民生用ばかりではなく、軍事用でも使われています。ロシアによるウクライナ侵略でも双方の軍が攻撃用ドローンなどを投入していますし、米軍の偵察用ドローンが攻撃されたとか、民生用のドローンを最前線での敵軍の位置や攻撃結果の確認に使うといった、ドローンの利用が報道されています。

レベル4飛行

昔から、ラジコンの航空機はありましたが、運用が難しいこともあり、ドローンが広く利用され出したのは近年との印象があります。しかし、実は軍事用のドローンは、第一次世界大戦当時に、電池ではなく燃料で飛ぶ無人航空機として開発されています。民生用より歴史は古いのです。

一説には、イギリス空軍の練習機をベースにした無線操縦機、“Queen Bee”(クインビー、女王蜂)が最初とされています。その後に開発された無人航空機は、この女王蜂に敬意を表して、“Drone” (ドローン、オス蜂)と呼ばれるようになったとされています。

Photo by Josh Sorenson,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by Breno Barros,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

さて、用途の広がるドローンですが、スウェーデンでは新しい用途に向けたテストが始まっています。それは、自転車道の照明という使い方です。意表を突く用途ですが、自治体が進める、れっきとした公共事業としての構想です。いわば、オンデマンドの自転車インフラですが、これには理由があります。

スウェーデンの、Ardala、Skara、Axvall、Varnhem、という町を結ぶ20キロの自転車道があります。郊外を通る道で、昼間に通るぶんには申し分のない自転車道です。しかし、夜間は照明がなく、周囲も真っ暗なので、街路灯の設置が希望されてきました。

DronareDronare(注:上の写真はイメージ)

Skara 市政府の試算によれば、10キロ分の自転車道に照明を設置するだけで、800万スウェーデン・クローナ、日本円でおよそ1億120万円という費用がかかることがわかりました。これは自転車道のためのインフラとしては過大な金額です。地方政府の少ない自転車インフラ予算ではまかないきれません。

そこで考え出された方法が、ドローンを照明として使う方法です。出力32WほどのLEDを搭載したドローンを固定の電灯の代わりに飛ばすというものです。利用者はスマホアプリを通してドローンを呼びます。ドローンは呼び出した人を検知して、その後を飛行して道路を照らしながら追尾してくるのです。



周囲が真っ暗な道を、夜間走行したことのある人なら想像がつくと思いますが、自転車に取り付けたヘッドライトでは、それほど広い範囲は照らせません。上空からドローンに照らしてもらえば、より大きな範囲が視認できるようになり、走りやすく、安全になります。

ドローンは追尾して自律的に飛行しますので、誰かが操縦する必要はありません。あまりに交通量が多ければ、必要な台数が増えてしまうでしょうが、郊外を通る自転車道ならば、それほど必要ないでしょう。電線を敷いて街灯を一定間隔で設置するのに比べれば、はるかに費用は安く済むはずです。

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Skara 市政府と、スウェーデンの研究機関・RISE、University of Skovde と Jonkoping University という大学によって開発されています。テスト走行した人によれば、自転車のライトだけと違い、このドローン照明があると、例えば沿道から飛び出してくる野生動物などを視認する可能性が大幅に高くなり、安全性が高まるそうです。

まだスウェーデンでは、法的な規制で操縦者が現場にいる必要があるため、実現はしていません。しかし、世界的な流れとして今後規制は緩和されていくでしょう。近い将来この自転車道では、利用者一人ひとりに照明ドローンが一台ずつ追尾する光景が見られるようになるかも知れません。

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まだ日本でも、ドローンが頭上を飛んでいるのが普通という状況ではありません。頭上からドローンで照らしてもらうというのは奇抜なアイディアに感じますが、自分の上にドローンを飛ばすというスタイル、もしかしたら拡大していくかも知れません。

例えば、夜道を女性が帰宅する際に飛ばし、尾行者がいないか監視したり、犯罪に巻き込まれないよう、カメラで撮影中とアピールすることで、抑止になる可能性があるのではないでしょうか。もちろん、頭の上を飛ぶのが普通になると、尾行に使われるなどの負の側面も出てくるかも知れません。



いずれにせよ、今後ドローンは、民生用でもさらに多方面で使われていくに違いありません。人が乗れるようなドローン、空飛ぶクルマも開発されていくでしょう。もしかしたら、警察の取締り等にも使われるかも知れません。おそらく、今は、まだ思いもよらないような用途にも、ドローンが使われていくことになりそうです。




◇ 日々の雑感 ◇

ロシア軍の苦戦や司令官解任の可能性が報じられています。ウクライナの反攻も含め、戦況は動くのでしょうか。

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