April 22, 2023

自転車が盗まれても諦めない

自転車盗はありふれた犯罪です。


世界中の多くの都市で膨大な件数が発生しており、年間莫大な数の自転車が盗まれています。たまたま目についた自転車を勝手に借用して自分の移動に使って乗り捨てるような犯行から、プロの自転車窃盗犯が高価なモデルを選んで盗み、ネットや裏のルートを使って売りさばくような犯罪まで、いろいろなパターンがあります。

仮に現金や金目のものを盗もうと思ったら、家屋や店舗、倉庫などに侵入しなければならず、素人に可能だったとしても相応の敷居の高さがあるのは否めないでしょう。それに比べ、路上や人目のない駐輪場などから盗むのは、比較的簡単で、心理的ハードルも低く、初めてでも手を染めやすい犯罪と言えるでしょう。

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一旦盗まれると、その被害は回復されない場合が大多数です。高価な自転車ならば金銭的な損失も大きいですし、慣れ親しんだ愛車が盗難に遭えば精神的な苦痛も小さくありません。悔しさや怒りも含め、もう次は絶対に盗まれたくないと思って対策にも力が入るでしょう。

ただ、自分の身に起きて初めて実感する人も多いのではないでしょうか。自転車盗自体は珍しい話ではないですし、あまりに件数が多いので、それだけではニュースにもなりません。自転車盗が多いことは知っていても、普段は、それほど気に留めていない人は多いに違いありません。

スマートタグ
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イギリスはケンブリッジに住む、James Dunn さんは子供の頃に盗難に遭った経験があり、自転車店で働いていた経験があり、自転車通勤をしていました。もちろん自転車盗とそのリスクについては理解していましたが、それほど身近なこととして意識していませんでした。

でも、付き合っていたガールフレンドの愛車が盗まれた時、強い憤りを感じました。彼女は教師で、毎日自転車で通勤し、自転車に乗るのは好きでした。その身近な人が愛車を理不尽にも盗まれてしまい、ショックを受けているのを見て、それまでにも増して、自転車窃盗犯への怒りがわいたのです。

BackPedalBackPedal

イギリスでも年間25万台以上、2分に1台の自転車が盗まれています。警察に届けて戻ってくるのはそのうち2%以下です。もちろん、格安な自転車だからなど、最初から諦めて届けない人も多いので、実際はさらに低いでしょう。警察も、限られた人員を自転車盗にばかり割くわけにもいかず、仕方がない面はあります。

仮に防犯カメラに犯行の様子が映っていたとしても、そこから犯人を割り出すのは簡単ではないでしょう。そうこうするうちに換金されて証拠はなくなってしまうでしょうし、たまたま犯罪グループが検挙されたとか、偶然自転車が発見されたなど、よほどの幸運がない限り手元に戻ってくることはないと考えるのが普通です。

BackPedal

しっかりと施錠されていたにもかかわらず自転車が盗まれ、しかも盗難事件としては、ほとんどが解決されず、当然被害者の被害も回復されない。James Dunn さんは、この理不尽さにあらためて腹がたちました。そこで、この問題について自ら立ち上がることを決心しました。

BackPedal”という会社を立ち上げたのです。この会社、盗まれた自転車を取り返す会社です。近年は、自転車盗に備え、GPSなどを使ってその所在を追跡するような製品やサービスはあります。でも、この会社は単なる発見にとどまらず、被害を被った自転車を奪回するのが専門です。

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警察が、例えば囮となる自転車を置くなどして、自転車盗の検挙に力を入れたという話は以前も取り上げました。しかし、これは自転車盗の被害を回復する、取り返してくれる民間の会社です。これまで同様の例を聞いた記憶がありません。かなり珍しく、かつ画期的な会社と言えるでしょう。

方法として、GPSや、Bluetooth などの技術を使って被害車両の位置を特定します。今どきは、GPSトラッカーとか、スマートタグといった位置確認の出来る製品が各社から出ています。具体的に何を使うかは伏せられていますが、そうした機材を使うようです。( ↓ 動画参照)



これらの機材は、専門業者が、犯人にわからないようインストールします。電動アシスト自転車・電動自転車のバッテリーと統合されており、個別の充電などの手間はかかりません。バックアップ用のバッテリーも備えており、特に機材のメンテナンスは必要ありません。

このため、今のところ電動アシスト自転車か電動自転車専用のサービスです。ある程度高価な自転車でないと、費用に見合わないでしょうから、これは仕方ないところでしょう。格安な自転車向けでは、こうしたサービスのニーズも見込めません。

BackPedalBackPedal

ここからが独自のサービスです。顧客からの通報を受けで、専任のチームが盗難自転車を捜索・特定し、自転車の回収に向かいます。回収に携わるエージェントは、イギリス全国の退役警察官、退役軍人、その他警備会社やセキュリティの専門家です。各地に対応する人員がいるのは、迅速に到着するのが重要だからです。

当該の自転車が公道にでも駐輪されていれば別ですが、犯人の家などに隠されていることも多くなります。ここで、いざこざやトラブルを最小限に抑えて解決する方法を知っている経験豊富な専門家が必要になります。彼らは常時雇用ではありませんが、各地区で迅速に向かえる人員であり、高額の成功報酬で契約しています。

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例えば反撃に遭ったり、私有地への不法侵入として訴えられる可能性があります。そのため、地元の警察に証拠を保全するためにエージェントが向かっていることを確実に知らせておきます。場合によっては、警察に出動を依頼し、連携して犯人の逮捕や回収を行うこともあります。

被害回復のために不法侵入になったとしても、これは刑事犯罪ではなく民事犯罪になる場合が多いと言います。そして、盗品が発見されれば、その情報を提示できます。窃盗犯から不法侵入などで訴えられることも、まずないと言います。換金や分解される前に証拠を押さえるため、とにかく迅速な行動が必要なのです。( ↓ 動画参照)



SNSに載っている事例では、夜19時15分に盗難の報告があり、翌日の13時47分には発見・回収し、その3日後の昼には持ち主の元へと返還されています。早ければ早いほど回収する確率は上がるようですが、18ヶ月前に運用が開始され、既に数百人の顧客を獲得、回収成功率は89%という驚異的な数字です。

利用したいと思う人は、ネットで申し込み、地元の自転車店などの協力店舗でトラッカーなどを装着します。価格はサブスク方式で、英国全土で適用されます。もし盗難の危険が察知された場合は警報が届き、盗難対策チームへの直通ホットラインが知らされ、警察への連絡から発見・回収、輸送まで全て行ってくれます。

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もし盗難に遭ったのに被害が回復されなかったら、支払った代金は返金されます。もちろん、いつでも解約できます。トラッカーの装着とその代金は予め必要ですが、盗まれた時に初めて依頼するオンデマンドプランもあります。前払いで回復を依頼し、もし回復できなかった場合は、半額返金されます。

まだサービスは始まったばかりですが、大きな反響が寄せられているようです。イギリスでも自転車盗は多く、それを考えて、相対的に高価な電動アシスト自転車の購入をためらっている人は多いと言いますが、このサービスに加入しておけば、盗難に遭っても9割方戻ってくるわけです。( ↓ 動画参照)



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自転車盗を防ぐため、ロックやチェーン等で厳重に施錠します。GPSトラッカーなど追跡できる手段も出来ました。しかし、仮に場所が特定出来ても、その先がありませんでした。この“BackPedal”は、足りなかったピースを提供するサービスと言えるでしょう。

後は費用対効果ということになりますが、サブスクで月額£8.99、オンデマンドだと一回につき£799と、装置取り付けに£200です。このサービスが普及していけば、少なくとも電動自転車の盗難が減る可能性があります。そして盗難の抑止にも貢献するでしょう。ぜひ、自転車盗が珍しい犯罪になってほしいものです。










◇ 日々の雑感 ◇

スーダンではラマダン明けという格好の時機の停戦も徹底していないようです。無事脱出できるといいのですが。

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