May 01, 2023

実は小さいほうが効率がいい

ラストワンマイルという言い方をします。


物流業界でラストワンマイルと言うと、配送の最終拠点からお客様の元への最後の1区間を指します。必ずしも1マイル程度とは限りませんが、この最終区間の配送が問題を抱えるケースがあります。宅配業者が代表的ですが、最終拠点からのわずかな距離の宅配部分がネックになります。

小口の荷物をたくさんの消費者の元へ個別に宅配しなければなりません。宅配の荷物は年々増加しているのにトラックのドライバーが確保出来なかったり、留守で再配達が増えたり、、人手不足で労働環境が悪化したり、大手荷主による配送料金がコストに見合わないなど、国や地域にもよりますが、さまざまな懸案を抱えています。

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そんな中、最近ヨーロッパの都市で見られるようになってきた配送手段があります。それは、E-Cargo Bike、電動アシストのカーゴバイクです。Yodel、DHL、Asda といった物流業者に加え、自社での配送にも乗り出した、Amazon などが続々と採用しており、街で見かけることが増えています。

普通に考えると、今までのトラックや商用バンに比べるてサイズが小さく、電動アシストとは言え人力でスピードが出ず、著しく効率が悪いような気がしてしまいます。運べる量が少なく、スピードも遅いならば、余計に人手もかかりそうです。宅配を、E-Cargo Bike に代えるのか不思議にも思えます。

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しかし、これには理由があります。まず荷物の量ですが、よく使われるような2トントラックの荷台のアルミボックスに満載されているわけではありません。拠点から拠点への中間輸送なら満載されるかも知れませんが、最終拠点の担当する地区のその日の荷物で、荷台が満杯になるとは限らないのです。

街で、宅配業者のトラックの荷台の扉が開いた時に目にするのは、平積みされた少ない荷物だったりします。ラストワンマイルでは、トラックの荷室が一杯にはならないことも多いのです。つまり、ずっと小さなカーゴバイクの荷室でも十分ということもあるわけです。短い距離ですから、再び積みに戻るのも容易です。

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さらに都市部の狭い道路や、駐車車両の多い込み入ったエリアなどでも入って行けるため、ドライバーが徒歩で運ぶ距離が減り、逆に効率がいいこともあります。さらに、トラックよりも小さいぶん、荷下ろしのために駐停車する場所が見つかりやすく、時間の短縮になる場合も多いはずです。

大きなメリットは渋滞の回避です。例えばロンドンでは、宅配用の4輪のカーゴバイクでも自転車レーンを走行することが出来ます。トラックやバンが渋滞に並んでいるうちに、スイスイとすり抜け、配送がはかどるわけです。この渋滞の時間ロスを回避できるのは大きなアドバンテージです。

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国によっても違いますが、規制の問題もあります。ヨーロッパでは特に温暖化ガスの問題に厳しく、その規制をクリアするために、電動のトラックなどを導入する必要があったりします。また、地区ごとに超低排出ゾーンなどと決められていて、ガソリンやディーゼル車を使えない場合もあります。

EVのバンなどもありますが、まだ割高なのでイニシャルコストがかかります。それに、同じ電気を使う輸送手段ですが、効率は自転車が勝ることも多いのです。例えば荷物を2トン運べるトラックのEVであれば、車両の重量だけで2トン以上になります。積まれるバッテリーも軽くはありません。

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カーゴバイクのほうが車体が小さく軽いのは明らかです。同じ距離を運ぶなら、余計な車体重量を動かすぶんの電力が不要で消費電力は小さくなり、バッテリーも小さくてすみます。運ぶ荷物の単位あたりの必要エネルギーが小さくなるのは自明です。もちろん車体価格もはるかに安くなります。

保険や整備費用、駐車場代といったイニシャルコストもはるかに少なくなるわけで、いろいろとトータルで考えるとカーゴバイクのほうが効率がよくなるということなのでしょう。そうでなければ、大手宅配業者や、Amazon などの通販業者が続々と採用するはずがありません。

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トラックは運転できないけど、カーゴバイクならば乗れるという主婦とか、運転免許のない学生などのパートを雇って配送してもらえるというのも大きなメリットでしょう。ヨーロッパの消費者は、地球環境問題に厳しいですから、規制のクリアだけでなく、温暖化ガスを出さないカーゴバイクを使えば会社のイメージアップにもつながります。

こうした宅配用の4輪の、E-Cargo Bike を製造している会社は何社かありますが、その一つに、Vok Bikes というエストニアのメーカーがあります。真に経済的で持続可能な配送手段として、eカーゴバイクで、ラストワンマイル配送に革命をもたらすことを目指しています。

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最初から商用のカーゴバイクとして設計しており、一般的な2輪や3輪のカーゴバイクと違って4輪で雨に濡れなくてすむだけではありません。回生ブレーキや独立したサスペンション、チェーンレス駆動、フロントのワイパーなど、商用車の耐久性とライダーの快適性、少ないメンテナンスでの運用を追求した設計です。

そして、この、Vok Bikes 社は、ロジスティクス会社の、Stuart Delivery 社と提携して、新しい配送のオンデマンドモビリティソリューションを導入しました。簡単に言えば、電動カーゴバイクのシェアリングシステム、あるいは短期レンタルシステムです。

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宅配業者の多くは、まだトラック等を使っており、なかなか切り替えられない会社も少なくありません。そうした会社でも、まず試してみることが出来ます。あるいは、荷物が多い時だけ臨時に借りて、増車したのと同じ効果を得ることも可能にします。実際に運用してみて、どのくらい効率が上がるか試すことも出来るでしょう。

もう一つ狙うのは、ギグワーカーです。副業や、好きな時だけ宅配の仕事をする個人です。フードデリバリーならば、自分の自転車でも出来ますが、宅配だとそうはいきません。でも、レンタルの宅配用電動カーゴバイクを借りて、短期間だけ仕事をすることが出来るようになります。

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そのようなギグワーカーが増えれば、人手不足に悩む宅配業者にとっても福音となる可能性があります。現在はエストニアの首都、タリンや、お隣リトアニアの首都、ビリニュスに加え、ロンドンなどで事業を開始しています。今後もヨーロッパの各都市に広げていく予定です。

日本でも、2024年問題など、宅配をめぐる懸念が取り沙汰されています。現在でも一部で電動アシスト自転車による宅配は行われていますが、ヨーロッパと違ってトラック輸送に対する温暖化ガス排出や、都市部へのクルマの流入などに厳しい目が向けられているわけではありません。道路環境も違います。

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ですから、必ずしも、ヨーロッパでの電動カーゴバイクによる宅配、ラストワンマイル革命がそのまま当てはまるとは限りません。ただ、意外と自転車のほうが効率が良くなる場合があることや、ギグワーカーを使った宅配など、ヒントになる部分があるのではないでしょうか。




◇ 日々の雑感 ◇

ウクライナのゼレンスキー大統領は大規模反転攻勢が近いことを示唆し、ワグネル創設者プリゴジン氏は弾薬不足の不満や前線離脱に言及するなど、プーチン氏の動向も含め、情勢変化の兆しが出てきているのでしょうか。

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