June 12, 2023

ヘルメットに何を求めるのか

ヘルメットの進化は電子的なものだけではありません。


前回は、頭部保護という基本的な性能だけでなく、ライトや音楽再生、録画や緊急通報といった電子的な機能を満載した多機能な新しいタイプのヘルメットを取り上げました。ライトやウィンカーに加え、ハンドルバーにマウントするような電子的アクセサリーをヘルメットに集約したような製品もありました。

でも、ヘルメットの進化は、もっと違った方向にも向いています。今までの典型的な自転車用のヘルメットのデザインが自分には似合わない、あの独特のデザインが好きではないという人もいるでしょう。もっとシンプルなもの、落ち着いたデザインを選ぶ人も少なくないはずです。

ToneTone

ToneTone

Specialized 社の自転車通勤者向けの製品、“Tone Commuter Helmet”の外見はとてもシンプルです。薄型で、普通の工事現場などで使われるようなヘルメットにも見えますが、自転車用に設計された、 MIPS などの安全構造を備えたヘルメットです。

独自のフィッティングシステムによる完璧なフィット感をアピールしているのに加え、派手にスリットは入っていませんが、内部の空気の流れを維持する構造により、蒸れを防ぎます。そのようには見えませんが、ANGi クラッシュ センサーに対応して、事故発生時には緊急連絡先に通報も出来ます。

ToneTone

自転車通勤でスーツを着て自転車に乗る人にも、見た目の違和感を感じさせないシンプルなデザインでありながら、安全性に高い評価を得ており、かぶり心地や通気性などの快適性にも配慮し、緊急通報システムも備えるという、見かけによらないヘルメットと言えるでしょう。

オランダのデザイン事務所、Studio MOM 社は素材にこだわりました。よくあるポリエチレンなどのプラスチックや合成樹脂を使っていません。その素材は、菌糸体です。キノコの仲間といえばわかりやすいでしょうか。外側のカバーやストラップは麻の織物から出来ています。

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特別に開発された菌糸体であり、強度や軽量性の面でも従来のものと遜色はありません。しかもプラスチックとは違い、そのまま捨てられたとしても、土に還り堆肥になる自然素材なのです。さらに、製造時に化石燃料は一切使わないという環境に優しいヘルメットです。

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ヘルメットは使用によって劣化して安全機能が低下するため、一定期間で買い替えが必要とされます。つまり使い捨てなのですが、この“MyHelmet”は、100%生分解性の素材というだけでなく、製造に化石燃料を使わない点で、持続可能性、サステナビリティに優れた製品です。

こちら、“Swivvle”はスイスのブランドですが、交通安全の観点から、夜間の視認性にこだわっています。ヘルメットを目立たせることで交通弱者としてのサイクリストの安全性を向上させます。このヘルメットは、特殊な反射材技術によって、360度どこから見ても光るようになっています。

SiriusSirius

SiriusSirius

一般的なヘルメットにも、部分的に小さな反射シートが貼ってあることがありますが、それでは不十分だと考えました。このヘルメット、“Sirius”は、ヘルメット全体を光らせることで高い視認性を実現し、夜間の安全性を大きくアップさせています。( ↓ 動画参照)



見た目はシンプルで、飽きの来ないスタンダードなデザインですが、夜になると派手に光って安全性能が発揮されます。もちろん、Mips 機構も装備され、ヘルメットとしての基本性能も満たしています。最近制定された最新の電動自転車用の規格認定も受けています。

Endura”はイギリスのサイクリングブランドですが、サイクリストの脳の保護を促進する最新のヘルメットデザインを公開しました。“Project Heid”は、本物の脳のCTスキャン画像を使ったデザインです。しかも、事故による損傷した脳の画像が使われています。

EnduraEndura

Endura

ある意味、世界で最もグラフィカルなヘルメットと言えるでしょう。側面に書かれた文章は、脳神経医による損傷の詳細のメモです。これは一般に販売されるヘルメットのデザインではなく、英国の脳啓発週間を記念して制作されたもので、一般にもお披露目されます。

ユニークですが挑発的なデザインです。つまり、実際の脳損傷や出血、挫傷などの画像を使った、ヘルメット着用の啓発なのです。実はイギリスでも、最近の研究によって、ヘルメットが顔面損傷や外傷には有効でも、死亡につながる脳震盪には有効性が低いとの論争があるのですが、一つのメッセージではあるでしょう。( ↓ 動画参照)



ヘルメットだけでも、いろいろな視点があるものです。基本性能だけでなく、製品ごとにこだわり、電子的機能、利便性、デザイン性、夜間視認性、生分解性や持続可能性など、それぞれ方向性の違うヘルメットが開発されています。何を選ぶかはユーザーの考え方次第ですが、少なくとも一つに収束していくことは無さそうです。










◇ 日々の雑感 ◇

ウクライナのゼレンスキー大統領が反転攻勢開始を認めて以降で初めてと見られますが、ロシア軍に占領されていた南東部の集落の解放が発表されました。今後も占領地の奪回が進んでいくのか、その動向が注目されます。

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