基本的に人口減少社会となっているので、いろいろあるとは思いますが、その一つは鉄道の路線です。これまでにも廃止された鉄道路線はたくさんありますが、現在営業中の路線でも採算が悪化し、廃止を含めた検討を余儀なくされている路線は全国で少なくないようです。
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地方の過疎化は今始まった問題ではありません。人口が都市部に集中していく中で、ローカル線の利用客は減少の一途を辿っています。公共交通機関として、市民の足を担う鉄道会社としても、経営に関わる問題であり、なんとか地元の理解を得て、赤字路線を廃止していきたいと考えるのは仕方のない部分もあるでしょう。

沿線人口の減少だけではありません。クルマがないと移動もままならない地域が増え、移動手段が鉄道からクルマへとシフトしていく流れもあります。利用が減ってローカル線の本数が減らされれば余計に不便となり、さらに利用が減り、クルマなどの手段に流れる悪循環もあります。
構造的な問題であり、鉄道会社の経営、存続にも関わる問題ですから容易に解決出来るようなものではないでしょう。ただ、貴重な地元の鉄道が失われれば、さらなる人口減少につながりますし、クルマの運転が出来ない年代は、通学や移動の手段を失うなど、影響は広範にわたるのも確かです。
日本では、利用者の減った赤字ローカル線が廃止されていくのは時代の流れであり、やむを得ないことと考える人も多いと思います。その地域の住民が一生懸命利用したとしても、人口減少は動かせず、個人が抗える問題ではありません。そんな諦めに似た気持ちもあるでしょう。

ところで、人口が都市部に集中していくのは、日本に限った話ではありません。世界でも都市へ流入する人口は増加しています。地域によっては、鉄道からクルマにシフトしていく傾向も見られます。しかし、ヨーロッパでは、鉄道路線が減っていくのを、必ずしも仕方がないとは考えていません。
温暖化ガスを削減して環境負荷を減らし、サスティナブル、持続可能な社会を構築していく上で、鉄道の利用は広げていくべきだと考える人が少なくないのです。環境意識の高さから、マイカーで移動するぶんを鉄道にシフトすべきだと考える人が相対的に多いのも確かでしょう。
ただ、クルマに比べて利用しづらい面があるのは否めません。鉄道は駅と駅を結ぶ移動手段なので、クルマのようにドア・ツー・ドアとはいきません。どうしても駅までや、駅からの移動が問題になります。そこで、この短所を補うため、
ドイツ鉄道は明確な方策を打ち出しています。

鉄道プラス自転車の組み合わせです。もともとドイツの鉄道やバスのほとんどに自転車を持ち込むことが出来ます。一部に専用のチケット購入の必要がある場合もありますが、基本的に自転車を積み込むスペースが用意されていて、無料で持ち込むことが出来ます。
ただ、必ずしも、この『鉄道+自転車』の利用が徹底されているわけではありません。そこで、鉄道への自転車の持ち込みをもっと広げようという取り組みを始めました。ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)が開発したのは、独自のスマホアプリ、“
DB Rad+”です。
アプリでは、自転車を載せての走行距離を記録し、その距離が長くなればなるほど、鉄道会社や地域のパートナー企業などから、割引やプレゼントなどの特典を受け取れる仕組みになっています。このアプリは現在、ドイツの15都市で導入されており、各都市のパートナー企業が協賛しています。

『鉄道+自転車』によって、鉄道利用が便利になります。自分の自転車に乗って駅まで行き、鉄道に持ち込んで目的駅に着いたら、そこから自転車で目的地まで移動します。鉄道の弱点だったドア・ツー・ドアが実現できます。通勤や買い物、日常の移動だけではなく、旅行にも用いる人が増えていると言います。
頭では理解していても、実際に『鉄道+自転車』を実践している人ばかりではありません。まず経験を促すことで、このスタイルの利用者を増やそうというわけです。クルマを持っている人でも、環境意識の高いヨーロッパでは、何かのきっかけで、鉄道を使ってみようかと考える人は少なくないはずです。
協賛する企業にとっては、その企業を利用してくれる客を増やす可能性があります。それだけでなく、サスティナブルな取り組みに協力している会社ということで、イメージがアップするというメリットも見逃せません。つまり、宣伝効果も見込めるわけです。

さらに利用者にとって魅力的な仕組みとして、導入している都市で一定の目標を定めています。例えば、その都市の利用者の利用距離の合計が何キロに達したら、といった数値目標を掲げます。それが達成されたら、例えば、誰もが使える自転車修理ステーションが設置され、自転車利用者にとって便利になったりするのです。
その都市の利用者に連帯感のようなものも生まれるでしょう。皆の協力によって、サイクリストにとって街がより便利になるのです。この利用者共通の特典を目指して、なるべく鉄道と自転車という組み合わせを使おうというモチベーションにつながる仕組みなのです。
その都市で走るクルマを減らし、より環境に優しい魅力的な街にしていくという大きなコンセプトにも合致します。もちろん、一人ひとりの健康増進にも貢献することになるでしょう。鉄道会社は、利用が減って減便するのではなく、増便や連結を増やすなど、良い循環が見込めるかも知れません。

日本でも、ごく限られてはいますが、電車への自転車持ち込みを許可する路線があります。日本では、ドイツなどと違って、自転車の使い方や環境に対する考え方、鉄道を取巻く環境も違うため、この『鉄道+自転車』が、鉄道会社の経営にどれだけ貢献するかはわかりません。
ただ、都市部の路線は無理としても、地方ローカル線で、自転車の持ち込みが可能な路線はまだまだあるはずです。このドイツ鉄道のような取り組みを、地域の鉄道会社と組んで、自治体が力を入れる選択肢もあると思います。鉄道会社に頼るだけではなく、地域一体で積極的に存続に向けて努力するわけです。
日本でも、鉄道と自転車の組み合わせが便利と実感されれば、利用者が増える可能性があります。持ち込みを可能にするだけでなく、さらに持ち込みを促すという積極策もあるでしょう。すぐに赤字路線の存続につながるかは別として、少なくとも試してみる価値はあるのではないでしょうか。
◇ 日々の雑感 ◇
関東では連日の猛暑となっており、熱中症搬送者数も増えています。若くて体力や健康に自信がある人でも突然倒れたりします。熱中症だと気がついた時には遅いのです。くれぐれも過信することのないようにしたいものです。
Posted by cycleroad at 13:00│
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