July 21, 2023

世界に前向きな変化を促す力

自転車をどう思うかは人それぞれです。


ある人には子供の乗り物でしょうし、別の人には最寄り駅までのアシかも知れません。交通事故が心配とする人もいれば、傍若無人な走行が危険と感じる人もあるでしょう。放置自転車は迷惑ですし、買ったけれどあまり乗らずに物置に眠っているものかも知れません。

趣味として乗っている人もいれば、スポーツとして観戦するのが好きな人もいます。ツーリングを楽しむ人もいれば、運動不足解消に使う人もあるでしょう。もちろん自転車には乗れるけど、子どもの時以来乗っておらず、特に乗る気も無い、何の思いもないという人が多いかも知れません。

The Engine InsideThe Engine Inside

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一方、自転車を少し特別なものとして位置付けている人もいます。このブログでもたくさん取り上げてきましたが、自転車は、ただの道具や乗り物ではないと考え、自転車に乗る人を増やす活動をしたり、自転車で社会貢献活動をするNPOで働く人もいます。とても意味のあるものと感じている人も少なくありません。

映画のプロデューサーである、Ian Dunn さんも、自転車は200年来使われてきた単純な機械ではなく、数あるスポーツの一つとも違い、単なる移動手段ではなく、身近な生活用品というだけでなく、何か特別なものと考えていました。大げさなようですが、人類にとって意義のあるものではないかと思っていました。

The Engine InsideThe Engine Inside

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彼は、それを表現した映画を作りたいと考えていました。何年も考えてきたアイディアが動き始めたのが2016年、資金が集まりプロジェクトが具体化したのが2019年、そしてようやく今年夏に公開されます。世界自転車デーに向け、世界各地でプレミアイベントが開催されます。

映画は、“The Engine Inside”、それぞれ違う国に住み、個人的もしくは組織的、文化的、社会的な課題を克服する方法として自転車に目を向ける6人のライダーのストーリーです。単なる自転車乗りということではなく、自転車がもたらすものについて、さまざまな側面から光を当てる物語です。

The Engine InsideThe Engine Inside

自転車に乗ることは、世界中で愛されている多様なスポーツの一つであること以上のものです。単なる機械や移動手段ではありません。実は自転車が、より健康で、より幸せで、より住みやすく、より明るい未来をもたらすと考えています。そう考えている人も世界中にたくさんいます。

例えば、気候変動対策に貢献する可能性があります。世界全体では、発電の多くを未だ化石燃料に頼っています。移動をEVにするのは、必ずしも対策になりません。でも世界の人の毎日のクルマ移動、平均してその半分以上は3マイル未満ですが、その1/3を自転車にするだけで、炭素排出量を67%削減することが出来ます。

The Engine InsideThe Engine Inside

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多くの人が移動の一部を自転車に変えるだけで、EVと違って、直接温暖化ガスを削減することが出来ます。さらに大気汚染を減らし、騒音公害を減らし、渋滞を減らし、実は生物多様性まで保護することになります。各国政府はEVばかりを前面に出しますが、自転車で可能な移動を自転車にすることには大きな意味があるのです。

社会正義の実現にも寄与します。マイノリティや貧困で恵まれない国や地域での自転車が持つ役割は大きなものがあります。貧困からの脱出、雇用や経済的機会、医療や教育、食料、そして水へのアクセス手段を確保することにもなります。社会的包摂を改善し、社会の不均衡を軽減します。

The Engine InsideThe Engine Inside

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もちろん、個人の健康にも寄与します。生活習慣病や循環器、心疾患などだけではありません。精神的な疾患にも効果があることがわかっています。単にストレス発散になるだけではなくメンタル、うつ病を予防したり軽減したりします。孤立しがちな高齢者の社会的なつながりを築く手助けにもなります。

日本人にはピンと来ない面もありますが、世界の国の中には人種差別やジェンダーギャップが多く存在します。これらの社会的障壁を打破ったり、よりジェンダーインクルーシブな社会の実現に寄与します。社会の平等を実現していくことにも貢献します。

The Engine InsideThe Engine Inside

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実は、地域の商店街など、地元の経済にも良い影響をもたらすことがわかってきました。自転車インフラの整備によって交通事故が減ったり、市街地からクルマを排除し、より快適で人間らしい生活を取り戻したり、住民同士のコミュニティの醸成に役立つなど、市民生活にも社会的なメリットを多々もたらします。

映画のディレクターの、Darcy Wittenburg さんは、これまで9本の長編サイクリング映画を手がけてきました。彼は、人類が歴史の正念場にいるのではないかと感じています。気候危機、経済的格差や不平等、民族・イデオロギー的衝突、生物多様性やサステナビリティなど、これほど多くの問題を抱えたことはなかったと言います。

The Engine InsideThe Engine Inside

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この“The Engine Inside”は、多くの課題に対する、シンプルでありながら見落とされがちな解決策として示唆に富むストーリーです。この映画の制作されたタイミングやそのメッセージが、今ほど心に響き、かつ切迫していたことはないでしょう。

この映画により、世界中の人々が自転車に乗るようになり、それがより良い未来を可能にすることを広く知ってもらうことを願っています。人類は、ほぼ1世紀にわたるクルマを使う生活によって、予期せぬ影響に苦しんできました。しかし、パンデミックの影響もあり、自転車の変革力に気づく人が増えていると語っています。( ↓ 動画参照)





この長編ドキュメンタリーは、人類の最も崇高な発明と信じる自転車の見過ごされてきた可能性をあらゆる形で明らかにするものです。なぜこのシンプルな機械が、地球上のすべての人にとって、より良い未来を築くのに役立つかを示しています。自転車に乗るという単純な行為に希望があることを教えてくれます。

“The Engine Inside”は、自転車が単なる移動手段ではなく、世界に前向きな変化を生み出す強力なツールであることを示しています。多くのサイクリストがこのことを理解し、周囲にも広げていくならば、社会に変化をもたらすことができると信じているのです。

The Engine InsideThe Engine Inside

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一般的な人は、特に自転車に対する思い入れはなく、実は自転車に特別な意味があるとは思ってもいないでしょう。しかし、このブログの過去の数々の記事を読まれた方なら、意外な自転車の社会的効用について、共感する部分があるのではないでしょうか。

この映画を見た人のどのくらいが、自転車の持つ社会的なポテンシャルに気づくかはわかりません。しかし、思いもよらない影響力、都市や生活や地球の未来を変える潜在能力があることに驚く人もあるに違いありません。そんな人が一人でも増えることを願いたいものです。




◇ 日々の雑感 ◇

中古車販売会社ビッグモーター、聞けば聞くほど酷い会社です。直接関係ない人も同社の修理費用の水増しで自動車保険全体の保険料アップにつながっていると聞けば穏やかでないでしょう。会見もせず対応も不誠実です。

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