August 29, 2023

自転車は自分に合わせて乗る

自転車は合わせて乗るものです。


何に合わせるかと言えば、身体です。乗る人の身体のサイズは、身長から手足の長さ、股下の寸法など皆違うはずです。それぞれのサイズに合った自転車に乗るのがベストです。たとえ同じメーカーの同じブランド、モデルであってもサイズはそれぞれ違ってくるでしょう。

自分の身体に合っていることは重要です。それによって、ペダルのこぎやすさや疲れやすさ、出せるスピードまで違ってきます。力が出しやすい姿勢というのがありますし、それだと違和感もなく、腰やヒザなど身体のどこかが故障したり、肩や首など痛みや痺れなどが出ることも防ぐことができるでしょう。

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ランニングをするのに、サイズの合わないシューズでは走りにくくてスピードが出せないのと同じです。クルマならエンジンの力なので身体に合わなくてもスピードは出せますが、自転車はそれぞれの人力でしか動かないので、ピッタリとサイズが合っているかどうかで出力が変わってくるはずです。

趣味でスポーツバイクに乗るような人なら、自転車を買うのにサイズを選び、必要に応じてパーツを交換したり自分に合うよう調整して買うでしょう。中には、サイズを細かく指定して、フレームビルダーに注文する人もいます。趣味のサイクリストには常識ですが、必ずしも一般的にはあまり意識されていないようです。

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街でよく見かけるのは、サドルにベッタリと跨り、常にヒザが曲がった形でペダルをこいでいる人です。つまりサドルが低すぎるのですが、それが普通と思っているのか、自分に合わせるという意識はないようです。もう少しサドルを上げればラクにペダリングできますし、スピードが出せたり、坂を上ったりもラクになるはずです。

もちろん、すぐに足をべったり地面につくことが出来る、いわゆる足つき性を重視しているのかも知れません。どのようなスタイルで乗ろうと勝手です。しかし、自分の身体に合わせ、せめてサドルの高さくらい調整すれば、見違えるほどラクに、快適になると思うのに残念なことです。

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ところで、自転車が合わせられるのは身体のサイズだけではありません。必要に応じて、その人の身体の障害などの事情に合わせることが出来ます。何らかの障害を抱えている人は、それに合わせた自転車を組むことで乗ることが可能になったりします。特殊な形や機構を採用するなど、かなりの柔軟性を持っています。

近年は、アダプティブバイクと呼ばれることが多いようです。一人ひとりに適応させた自転車という意味です。それぞれの人に合わせるので、必ずしも市場で流通するような一般的なモデルとは限りません。世間の認知度も低いですが、一部にアダプティブバイクを受注生産している業者があります。

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その先駆けの一つとされるのが、アメリカ・バーモント州はコーンウォールという小さな街にある“RAD Innovations”です。おそらく全米には十社程度はベンダー、ビルダーがあると思われますが、こうしたベンダーは、街でほとんど見かけることはなく、あまり知られた存在ではありません。

この“RAD Innovations”社は、オーナーである、David Black さんと、妻の、Anja Wrede さんが設立したアダプティブバイクに特化した会社です。ベースとなるのは、トライク、リカンベント、ハンドサイクル、カーゴバイク、タンデムバイクなどです。それを必要に応じて改造します。

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顧客は、四肢の一部の欠損、障害、バランスや運動機能に問題を抱える人です。事故などによる怪我、脳梗塞などの後遺症による半身麻痺、多発性硬化症やパーキンソン病などの発症、外傷性脳損傷など、理由はさまざまです。何らかの障害があっても、自転車に乗れるようになる人は少なくありません。

歩行が困難で、杖をつき、あるいはクルマ椅子を使用している人でも、その人に合わせたアダプティブバイクに乗ることで、普通の自転車と同じ速度で移動できるようになったりします。これによって、趣味として楽しむだけではなく、生活の利便性や自由度が大きく向上したと喜ぶ人も多いと言います。

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トライクならばバランスがとりにくくても安定しますし、一般的なペダルではなく、踏み込むことで回転させるなど、特別な機構で推進するものもあります。ハンドサイクルなら腕で推進します。片方の脚で漕いだり、とにかくその人の障害の内容によってさまざまです。特に決まった形はありません。

例えば脳梗塞になって後遺症が残り、半身が不自由になって歩くのが困難になったりすると、元々、自転車を楽しんでいた人であっても、再び自転車に乗ろうとは思わない人も多いでしょう。でも、何らかのきっかけでアダプティブバイクの存在を知り、自由な移動を取り戻して感激する人も多いのだそうです。

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アダプティブバイクに乗る人の割合は、相当に低いと思いますので、街でアダプティブバイク自体を見かけることも、まず無いと思います。その存在を知らなければ、乗ろうとも考えないでしょうし、検索して探すことすら思いつかないかも知れません。

中には、比較的使われている分野もあります。負傷して帰国・退役した軍人たち向けです。PTSDなどの症状に悩まされたり、肉体的な障害を負って苦しむ人が少なくありません。アメリカでは、こうした負傷退役軍人への支援をするNPOなどが各地にあります。

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リハビリや、孤独に陥る人を支援したり、友人をつくる機会を設けるなどの目的でイベントが行われることも多いと言います。その中で人気なのがサイクリングイベントです。例えば、“Soldier Ride”は、問題を抱えている退役軍人を集めて行われるイベントです。

戦場での負傷により、障害を抱えている人もいるわけですが、そうした人に紹介されるのが、アダプティブバイクです。あらゆる怪我のタイプに対応し、一人ひとりに合ったバイクを用意します。オーダーメイドで制作され、無償で提供されます。費用は寄付などによって運営されるNPOが負担しています。

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一般には、アダプティブバイクはあまり知られていません。日本でも、アダプティブバイクと検索しても出てこないほどですから、その存在を知る人は、相当に少ないと思われます。でも、その存在を知って、再び自転車に乗れるようになり、大きな喜びを得る人がいるのです。

ちなみに、日本でも、障害の内容に応じてオーダーメイドで自転車を製造している職人さんがいます。過去にも取り上げましたが、堀田製作所の堀田健一さんです。障害を持っている人や高齢者など向けに、その人の障害に合わせた自転車を製作していらっしゃいます。

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日本では、自転車と言えばママチャリであり、量販店で買うものと思っている人が大多数でしょう。せいぜいサドルの高さを調節する以外は、むしろ自転車のほうに合わせて乗っています。しかし、障害があっても乗れることも含め、自転車は自分の身体にあわせて乗るものということは、もっと知られていいと思います。




◇ 日々の雑感 ◇

ワグネルのプリゴジン氏の墜落死はどうやら本当のようです。油断なのか予想された結末にも疑問は残ります。

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