September 13, 2023

取り組みを進められるか否か

古き良き時代などと言います。


いつが良き時代と思うかは人にもよると思います。自分の幼い頃だったり、自分が生まれる前の時代のことを見聞きして憧れる人もあるでしょう。近年もメディアで昭和レトロなどと、はやされたりします。当時流行したファッションとかグッズ、例えばアナログのレコード盤がブームになったりしています。

人間の記憶は、時が経つにつれて昔のことを美化する傾向があります。当時のことを知る人が書いた記事や番組などもそうでしょう。ですから、今思う昔の時代も、当然ながらいいところばかりではありません。当時は当時で人々には不平や不満、不便なことがたくさんあったはずです。

インターネットやスマホ、SNSなどを挙げるまでもなく、今より不便なことが多かったのは間違いありません。科学技術をはじめとして、いろいろなものが長足の進歩を遂げました。挙げればキリがありませんが、例えば物流面で、容器やパッケージなども大きく変わりました。

DaunDaun

昔はビールや牛乳、醤油や酒などはビンに入っていたので、運ぶのも重くて大変でした。肉や魚も、紙には包んでくれたとしても、油や汁が沁み出してしまい、カバンが汚れたり、他のものと味が混ざってしまったりしました。帰るまでに中身が割れたり、形が崩れたりして、今から見れば不便なのが当たり前でした。

今はペットボトルや紙パック、プラスチックやビニールなどのパッケージが当たり前で、軽くて運びやすくなっています。紙の箱でも、中にアルミの袋で密封されていたりなど、汁や匂いが移って困るなんてこともありません。新聞紙に包まれているより美味しく見えるのも確かでしょう。

昔と比べて、容器や包装、パッケージなどの面で飛躍的に便利になっているわけですが、一方で増えたのがプラスチックごみです。環境の汚染や埋め立て地の不足、海洋に流れ出るプラスチックごみ汚染などが深刻化し、世界的に問題となっているのは言うまでもありません。

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環境省などもマイバッグの持参を推奨し、当たり前のように持って行く人も増えました。環境意識が高まったとされますが、実際の効果は大きくありません。いわゆるレジ袋のゴミは、プラスチックごみ全体の2%にも満たず、減らしたとしても効果は微々たるものです。

レジ袋を使わなかったとしても、マイバッグに入れる食材などのほとんどは、プラスチックやプラ容器などで包装されています。レジ袋とは比べものにならない量、重さです。家庭のゴミ箱を見ても、かなりの割合がプラスチック系のはずです。レジ袋は目の敵にするのに、個別の包装はそのままです。

もちろん中には、ここに問題意識を持つ人もいます。例えば量り売りです。自分で使い捨てではない容器を持参すれば、必要な分量を量って売ってくれる店が、まだまだ少ないですが出てきています。このような取り組みが広がれば、プラ容器やプラ系のパッケージの問題の改善につながるかも知れません。

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ただ、量り売りはエコですが不便です。いちいち容器を持って買いに行かなければなりません。コーヒー豆とか、サラダ油とか、単品ならまだしも、まとめていろいろ買おうと思えば容器だけで重くてかさばります。量り売りの店を何軒もはしごする必要もあるでしょう。会社帰りなどに手ぶらで店に立ち寄ることも出来ません。

さて、こうした量り売りの販売の弱点を軽減するスタイルを提案している人がいます。イギリスはロンドンを拠点にする、Louisa Robertson-Macleod さんです。店は、“Daun”です。量り売りの食材をネットで注文すると、配達してくれるというサービスです。

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穀物やナッツ類、パスタ、コーヒーなどですが、注文すると、すべて再利用可能な巾着袋に入れて届けてくれます。使用後は袋を回収し、洗浄して再利用する仕組みです。これによって、包装や容器の無駄を省き、プラスチックごみを出さずに食材の購入を可能にしています。

そして、配送に使うのは電動アシストのカーゴバイクです。輸送もゼロエミッションにしたいからです。これだけ環境を意識して、配送は普通のトラックとかオートバイだったら、せっかくのサービスのイメージも台無しでしょう。こういう商売、サービスとマッチするのは、やはり自転車ということになると思います。

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イメージの問題だけでなく、輸送手段のイニシャルコストもランニングコストも桁違いに安くなります。排気ガスも温暖化ガスも出しません。注文から配送まで1〜3日かかりますが、環境意識の高い人だけでなく、忙しい人や高齢者など買い物に出かけるのが簡単でない人にも、広く喜ばれているようです。

最低注文金額はなく、配送料も大手スーパーマーケットと同等の3.40ポンドです。包装が不要なぶん、商品は少し安くなっています。最初は地元のみを想定して、彼女一人で配達していましたが、いまやロンドン市内全域から注文が入るようになったと言います。



量り売りの一つのスタイルと言えるでしょう。食材でも、巾着袋で運べるようなもの、限られた種類になりますが、プラスチックごみが出ることは防げます。袋を回収する必要があるので、どんなスーパーマーケットやネット販売業者でも出来ることではありませんが、プラごみ削減に貢献する方法ではあります。

考えてみれば、日本でも昔、一部の食品は使い捨て容器ではありませんでした。例えば豆腐です。独特の節回しのラッパを鳴らして、夕方の住宅街に売りに来るスタイルです。当時は自転車だったでしょう。ラッパの音が聞こえたら、ボウルとか、どんぶりとか、何か容器を持って買いにいくわけです。



今でも売りに来る地域もあるかも知れませんが、都市部ではほぼ見なくなったと思います。しかし、使い捨て容器が不要という点では優れていました。今と違ってネット注文は出来ませんが、豆腐や油揚げなどは日常的な食べ物なので、住宅地なら、それなりにお客がいて、個別配達より効率的だったのでしょう。

私はマンガでしか見たことがありませんが、昔は『三河屋』に代表される八百屋や酒屋などの、御用聞きというスタイルもありました。あらかじめ必要な食材を聞いておいて、後で届けるわけです。酒瓶などは回収・再利用しますし、野菜なども、少なくともプラスチックごみは出さないと思います。

どのくらいまであったのか知りませんが、量り売りで油なども売りに来たと聞いたことがあります。昔は、そのような家まで売りに来る量り売りがいろいろあったのでしょう。日本でも、昔はゼロエミッションで再利用が前提の容器で、環境に優しい流通が行われていたわけです。



ただ、その昔のスタイルに戻れるかと言われると、首をかしげざるを得ません。環境にはいいですが、いろいろと不便です。豆腐屋が売りに来るような時間帯に家にいなかったり、来るとは限らなかったり、御用聞きで個別に届けるスタイルを今の店にやれというのも難しいでしょう。

人間は、時代が下って便利になってしまうと、なかなか不便な以前の暮らし方には戻れません。少なくともプラスチックごみの問題や、容器などの廃棄物が断然少ない点については、今より良い時代だったわけですが、果たして、どれだけの人がその古き良き時代に戻れるかということになりそうです。




◇ 日々の雑感 ◇

露朝首脳会談でロシアは武器弾薬調達、北朝鮮は軍事技術獲得と双方メリットのある取引合意は必至でしょう。

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