例えば、一般的に自転車は二輪なので、停止している状態では自立することが出来ません。スピードが上がれば別ですが、ごく低速だと安定しません。何を今さらと言われそうですが、低速だとフラついてバランスをとるのが難しいというのは、自転車の特性の一つです。
このことによる不便や危険もあるはずです。例えば高齢者の場合、脚力が衰えたりして相対的にスピードが出せなくなり、少しの上り勾配でも、いったん減速すると再加速できず、フラついてしまうこともあるでしょう。そこにクルマが通れば、場合によっては接触事故などの原因になりかねません。
こぎ始めは、どうしても不安定になりますし、道路状況によっては徐行することになり、フラつきがちです。低速で安定しないことの危険性は、常につきまとうことになります。さらに買い物で荷物を前カゴなどに積んでいたりすれば、余計に不安定になります。
日本では自転車で歩道走行をするのが当たり前のようになっています。でも、歩道は歩行者優先であり、自転車は徐行しなければなりません。ただ、ごく低速になると安定しないため、ついスピードを上げたくなり、歩行者の間を縫うように走行してしまう人も少なくありません。
日本で一般的な子供乗せ用の自転車だと、重心が高く、より安定しないため、低速では走りにくいということもあるでしょう。低速時や停車時に転倒してしまい、子どもがチャイルドシートの高さから落下して頭を打ち、重篤な事故につながるケースも多いようです。
このように、低速だと安定しないことのデメリット、危険性があります。これが3輪とか4輪ならば安定するわけですが、市販のモデルに3輪の選択肢は限られ、最初から3輪を買おうという人は少なく、買い替えるとなると費用がかさむなどの難点もあります。
そこで、このようなキットがあったら有用ではないでしょうか。2輪の自転車を簡単に3輪に出来るキットです。取り付けも簡単なので、場合によっては、通るコースや用事に応じて付け替えて使うことも出来ます。3輪になれば低速でも、乗ったまま停止しても安定してフラついたり倒れることもなく安心です。
前を2輪にした上に、前カゴなど荷物スペースを取り付けることも出来ます。買い物に行く場合でも、より大きなもの、たくさんの荷物を積むことが出来ます。普通の前カゴよりも重心が低くなるぶん安定しますし、歩道などで低速走行してもフラついたり転倒することを防げます。
カーゴバイクのようにも使えるわけです。何なら、荷物スペースにチャイルドシートを取り付ければ、子どもも安定して乗せることが出来るでしょう。やはり重心が低いぶん安定するだけでなく、ハンドルが回ってしまって転落というケースも防げます。万一転落したとしても、高さが低いので相対的に危険度は低くなります。
この、“
Velo-Pelican”と名付けられたキット、“KissKissBankBank”というフランスを拠点に展開する、ヨーロッパではメジャーなクラウドファンディングサイトで提案されたものです。実は開始されたのは2017年の6月で、かなり前ですが目標金額の125%を達成しています。
このアイディア自体は珍しいものではありません。特定のモデルに同様のオプションが用意されている市販車も見たことがありますし、似たアイディアはこれまでにも存在しています。駆動輪でないほうが手軽ですが、ブラジルのメーカーには
後輪を2輪にするキットを販売しているところもあります。
これは、もしかしたら自転車に乗っている高齢者が相対的に多い日本で需要があるのではないでしょうか。少しフラついて危ない場面も増えてきた人が、本体を買い替えないでも3輪に出来ます。低速での安定性が増し、安全性の向上に寄与するはずです。必要に応じて2輪に戻すことも可能です。
日本では、歩道走行という特殊事情があるわけですが、法律上の「普通自転車」の要件に当てはまれば、3輪でも歩道通行が可能です。道路交通法施行規則第9条の2の2で定めています。おそらく問題になるのは、幅だと思いますが、これが60センチに収まれば問題ありません。
法第六十三条の三の内閣府令で定める基準は、次の各号に掲げるとおりとする。
一 車体の大きさは、次に掲げる長さ及び幅を超えないこと。
イ 長さ 百九十センチメートル
ロ 幅 六十センチメートル
二 車体の構造は、次に掲げるものであること。
二
イ 四輪以下の自転車であること。
ロ 側車を付していないこと。
ハ 一の運転者席以外の乗車装置(幼児用座席を除く。)を備えていないこと。
ニ 制動装置が走行中容易に操作できる位置にあること。
ホ 歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。
ちなみに、2020年11月30日まで、普通自転車は「二輪又は三輪の」自転車に限られていました。これが、2020年12月1日の改正法令施行によって、4輪の自転車も含まれるようになりました。車道走行をするのは怖いという人は多いでしょうが、普通自転車に収まれば歩道を通行できます。
高齢者にとって、フラついて危ないケースを防ぎ、歩道でも安心して徐行できるでしょう。大きめの荷物を積んでも安定することは、買い物にも便利です。高齢ドライバーのクルマの事故が問題となっていますが、運転免許を返納して自転車に乗り換えやすくなるのではないでしょうか。( ↑ 動画参照)
高齢者に限らず、子供乗せ自転車とするにも、安定するので安全性が向上すると思います。チャイルドシートを腕で支えなくてすんでラクになりますし、歩道走行でもゆっくり徐行できます。子どもを乗せる期間だけ3輪として使い、それを過ぎたら2輪に戻すことも出来るわけです。
実際に日本で製品化されて、どれくらい使う人がいるかはわかりません。あまり3輪に馴染みがないため、そのメリット、安定と安全性の向上がピンと来ない人も多そうです。ただ、別途3輪を売るよりも、前輪だけ付け替えるほうが融通が利きますし、値段も安くできるぶん、検討の余地は広がるでしょう。
欧米では、子どもをカーゴバイクに乗せている人は珍しくありませんが、日本では、まず見ません。日本に向かない面もあるでしょう。ただ、このようなキットなら事情も変わってきそうです。自転車の特性からくるデメリットを補うための選択肢は、あってもいいような気がします。
◇ 日々の雑感 ◇
米・下院で史上初めて議長が解任されました。ウクライナ支援も含め今後のアメリカ政治の行方が気になります。
Posted by cycleroad at 13:00│
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