このように、海外で“Kintsugi”は高い人気となっているわけですが、もしかしたら、フランスのアーティスト、
Ememem もその影響を受けているのかも知れません。この人にとっての器は、道路です。亀裂が入ったり、欠けてしまったりした道路の舗装にモザイク画のようなタイルを埋め込んでいます。
道路の舗装が欠けたり穴になった部分を修復することで、通行する人の安全性を高め、彩りを加えることで目立たせ、注意喚起すると同時に路上のアートにしているわけです。彼はこれを“flacking″と呼んでいます。フランス語で、水たまり化といった意味のようです。


その「作品」はフランスだけでなく、イタリアやドイツ、スペインなどヨーロッパ各地に広がっています。その活動はSNSなどでも話題となっています。彼は2019年にバルセロナで起きた、カタルーニャ独立派への弾圧に抗議するデモ、衝突の直後にも作品を残しました。
デモ隊が石畳の破片を投石の道具としたのです。この、いわば衝突の傷跡を以前のように治し、なかったことにするのではなく、モザイク画にすることで残そうとしたのです。バルセロナ市も、この作品を市の文化財として保護の対象にすることにしました。


つまり、単なる道路の補修ではなく、アート作品としてだけでもなく、市民の抗議活動や独立運動の記憶として保存するものになったわけです。あえて目立たせること、また傷を癒し、関係を修復する象徴のようなものとした点で、西洋の人が考える“Kintsugi”と似たものと言えるのではないでしょうか。
ちなみに、日本でも道路を走行していると穴があったり、舗装が剥がれていたりすることがあります。クルマの通行に困るようなものはともかく、自転車が通るような道路の端の比較的小さな損傷は、長い間そのままだったりします。場合によっては落車の原因になりかねない道路の傷です。

なかなか修復されないのは、国や市町村など道路管理者の都合もあるでしょう。道路舗装の劣化を定期的に修復するとしても、全体から見ればごく一部ですから、そう頻繁に工事するわけにもいきません。ましてや臨時に工事するには、予算をとって業者に発注するなど、さまざまな手続きがあって時間もかかるに違いありません。
でも、これは舗装を新しくしようとするからです。小さな穴や欠けだったら、少しモルタルを盛って、それこそ上にタイルでも敷いておけば十分でしょう。多少の段差が残るかも知れませんが、タイルなどで目立つぶん、注意喚起となる効果も見込めます。

日本でも一部の市町村では、住民から画像やGPSの位置情報の通報をネットで受け付け、道路を修復しているところもあるようです。担当部署が、修復の必要な箇所を探したり点検するのもそれなりの人手や費用がかかりますから、これはリーズナブルな方法と言えるでしょう。
それを補修業者に発注するのではなく、モルタルとタイル等の資材を宅配便で通報者に送付し、埋めておいてもらうよう依頼すれば、さらに予算の節減につながりそうです。お役所仕事としては、そんないい加減なことは出来ないと言われそうですが、キレイに元のように修復しようと思わなければ、それで十分な気がします。

なんと言っても“Kintsugi”の国です。路肩の穴や舗装の剥がれなどを放置するのではなく、金継ぎの要領で多少目立ってしまっても、こまめに修復してくれると、サイクリストや道路利用者としては助かります。どうせ次の舗装の時には消えてしまうでしょうが、利用者の安全第一のための金継ぎ、検討してみてほしいものです。
◇ 日々の雑感 ◇
イスラエルとハマスの戦闘休止は順調に推移、双方共延長に前向き、このまま停戦協議に進むといいのですが。
Posted by cycleroad at 13:00│
Comments(0)