December 06, 2023

日本人の視点ではわからない

オーバーツーリズムが懸念されています。


今年10月には外国人訪問客・インバウンドの人数がコロナ前を超えたと報じられています。著名な観光地では旅行客があふれ、施設の収容人員を超える人が押し寄せて長い行列が出来たり、ゴミなどマナーの問題が起きたり、地域の生活道路が渋滞するといった問題、オーバーツーリズムが起きています。

コロナ禍で苦しんだ観光地にとっては恵みの雨ですが、こうした混雑やその弊害を放置しておくと、人気も翳るでしょうし悪いイメージが拡散してしまう可能性があります。日本経済にとってもインバウンドの増加は大きな追い風ですが、放置すれば日本の観光地の評判そのものが毀損されかねません。

だからと言って、来るなというわけにもいきませんし、他へ行けと指図するわけにもいきません。やはり、観光客が集中するような人気観光地、観光スポットから、比較的収容に余裕のある観光地をもっとアピールするなどして、分散を図っていくしかないでしょう。

新倉山浅間公園鎌倉高校前踏切

インバウンドだけでなく、日本人の観光需要も回復していますので、既知の観光地ではなく、出来れば日本人にも知名度の高くないような場所、無名のスポットに分散できれば理想的です。そうした事例も無いわけではありません。例えば、山梨県富士吉田市の「新倉山浅間公園」などは、日本人には全くの無名の場所でした。

今では、富士山と桜と五重塔をワンカットに収められ、日本を象徴する写真が撮れる、とっておきの場所として有名になっています。しかし、これは日本人によってではなく、SNSなどの口コミで外国人の人気に火が付き、大勢の外国人が訪れるようになったため、日本人にも知られるようになったと言います。

人気の京都ですが、あまり多くの観光客が訪れる場所でなかった、叡山電車の紅葉のトンネルにも最近はインバウンドの姿が目立つと言います。特に海外向けにPRしたわけでなく、やはりSNSなどからの口コミで発見されたと言います。紅葉に魅せられるのは日本人だけではないようです。

叡山電車叡山電車

こうした事例を見ると、知名度の高くない場所でもインバウンド人気が高くなる可能性があります。アピールポイントが無ければSNSでもバズらないだろうとの声もありますが、必ずしもそうとは限りません。つまり何の変哲もないような景色と思うのは日本人だけかも知れません。

日本の自然は日本人にとって見慣れており、いわば当たり前の景色ですが、世界的に見ると日本は特異な環境で、自然の魅力が豊かな場所なのです。生物的にも固有種が多く、例えば、先進国の中で野生のサルが生息しているのは日本だけです。特に雪の降る地域に生息する、いわゆるスノーモンキーは世界に類を見ません。

Ride and SeekRide and Seek

地形的にも山地と都市が近く、長い海岸線もあります。火山による地殻変動などにより、奇勝も多いですし、南北に長いので亜寒帯から亜熱帯まで気候もさまざまです。どこへ行っても緑が豊かで、そこにまた日本の田舎の暮らしがあるなど、日本人には見慣れた光景ですが、外国人には非常に魅力的に映るのだそうです。

つまり、これまで日本人観光客が訪れないような場所にも、外国人からすれば魅力的なスポットがたくさん埋もれている可能性があります。最近は自転車で観光振興を狙う自治体が増えていますが、自転車観光でも、まだまだ可能性を秘めています。

Ride and SeekRide and Seek

日本の自治体の自転車観光振興では、その地区だけでレンタサイクルを用意したり、市内のマップを置いたり、というのが多いようです。自治体ごとで考えますから、そのようになるのも仕方ありませんが、本当に日本で自転車に乗りたいサイクリストは、市内観光が魅力とは限りません。

Cycle Japan”という会社があります。John Morrell さんという人が1985年に設立した、主に外国人向けに日本国内の自転車ツアーを企画・運営する会社です。アメリカの旅行業界誌、Travel Weekly によれば、先ごろ、この“Cycle Japan”という会社が買収されたそうです。

Ride and SeekRide and Seek

買収したのは、“Ride & Seek”、世界中でガイド付きの観光自転車ツアーを企画・運営する会社です。これまでは、主にヨーロッパと、一部に北米やオセアニアのコースがあるだけでした。それがこの買収により、“Ride & Seek”のコースに新しく日本のコース、「侍」ツアーが加わることになりました。

どれも、とびきり風光明媚で魅力的なツーリングコースですが、そこに日本のコースが加わることになったわけです。今般の外国人の日本旅行の人気が反映された結果もあると思いますが、日本のサイクリングツアーの魅力が評価されたということでしょう。



ルートは、本州を縦断したり、日本アルプスを縦走したり、四国を横断したり、能登半島を周遊したり、といったコースがラインナップされています。人気の観光地を巡るわけではありませんし、日本人に人気のある、どこかを一周する、○○イチと呼ばれるようなコースでもありません。

全部を通して参加すると22日間です。どこか1か所の観光地にとどまることなく、日本を走り抜けるようなコースです。必ずしも有名な観光地に宿泊するわけでもなく、言ってみれば日本の田舎道、日本人にとっては珍しくない、林道とか農村とか海岸線などありふれた光景を走ります。



しかし、よく見ると日本人でも走りたくなるような魅力的コースです。途中の宿泊地でも、外国人が喜ぶようなスポットを訪問したり、素朴な田舎の宿に泊まったりするようです。日本人の普段の生活を体験し、文化に親しむのは、彼らにとってとても魅力的なことなのは、参加者のコメントなどを見てもわかります。

ガイドが同行するツアーです。ただ地図を渡して自分で行けというのでは無理があるでしょう。彼らにとって欧米とは文化も違う異国の地ですし、交通ルールやマナーなど知らないこともたくさんあります。途中で迷ってしまったら、聞く人もいない山の中を通ったりするわけで、同行するガイドは必須です。

Ride and SeekRide and Seek

Ride and SeekRide and Seek

サポートカーも用意され、トラブル対応にも万全を期しています。これならば、ガイドを含めた現地の日本人との交流も含め、記憶に残る旅行になるでしょう。事実、最高の体験だと喜ぶ声であふれています。日本の大自然を満喫する体験には大きなポテンシャルがあると言えるでしょう。

このようにルートを吟味して組み立てれば、これまでの市内周遊ではなく、全くの新しい観光資源が出来上がるわけです。必ずしも知名度のある観光スポットでなくても、日本の豊かな自然が味わえて、文化に親しむなど体験が加わるならば、無名が有名になる可能性だってあります。

Ride and SeekRide and Seek

Ride and SeekRide and Seek

もちろん、ツアーの催行と人数は限られるでしょうから、一朝一夕に多くの旅行客を振り向けるわけにはいかないでしょう。こうしたツアーだけで、オーバーツーリズムの解消になるなどと言うつもりもありません。しかし、全くの無名の場所であっても、新たな観光資源が生み出せる可能性を示していると思います。

自転車ツアーに限らず、日本人はあまり興味を示さないが、外国人にとっては面白い、魅力的というものは多いはずです。特に何の変哲もない自然風景でも、大きなポテンシャルがあります。オーバーツーリズムを軽減するためにも、外国人の視点からの日本ツアーを考えてみる余地はありそうです。










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