世界的に売れており、普通の自転車から乗り換える人も増えています。もともとは日本発祥の製品で、世界初の電動アシスト自転車は、日本のヤマハが開発した、PAS だとされています。電気の力でアシストしてくれるので、坂などもラクに上れるというのが一番の利点であり魅力でしょう。
ただ、人間の欲にはキリがないもので、もっとラクにと考え、電動アシストではなくフル電動、ペダルをこがなくてもいい、e-Bike を選ぶ人もいます。国によって規制が違い、日本では原付バイク扱いですが、フル電動でも一定の範囲で普通の自転車の扱いの国もあります。日本では一部で無免許や通行区分などの問題になっています。
フル電動でなくても、なるべくラクに走れる距離、いわゆる航続距離が長いほうがいいと、バッテリーの容量が大きい製品がより人気になる傾向もあるようです。メーカーも性能の一つとして航続距離の長さを競う傾向があるのは否めないでしょう。使われているリチウムイオンバッテリーの需要も伸びるばかりです。
EV、電気で走るクルマと比べればバッテリーの容量は桁違いに小さいわけですが、それでもバッテリーを積載する点は一緒です。重量の重いEVの環境負荷とは比較にならないとは言え、リチウムイオンバッテリーが使われている点では共通ということになります。
リチウムは、生産する際に大量の水資源を必要とし、水質や土壌汚染などの環境問題を招きます。また、バッテリー製造時に大量のCO2が発生するため、走行中にはCO2を出さないEVでも、車両の生産から走行、廃棄まで含めて考えると、CO2の削減という点で必ずしも効果が高いとは言えないと指摘されています。
いろいろな電化製品にも使われ、リチウムの需要量は世界で増加の一途ですが、生産には制約もあります。リチウムも4か国程度、電極等に使われるコバルト、ニッケルなどのレアメタルの生産が特定の国に集中しているというのもサプライチェーンの点から問題となっています。
さらに最近問題となっているのは、バッテリーの発火による火災です。世界的に起きていますが、特にアメリカなどでは電動自転車のバッテリーによる火災で死者も増加していて社会問題化しています。バッテリーの盗難も背景にあって、改造や非正規の製品、格安粗悪な模造品の流通なども原因になっているようです。
バッテリーが問題なら、非電動の普通の自転車に乗ればいいことですが、いったんラクを味わうと、なかなか元に戻れないのも人間の常でしょう。知足、足るを知るということで、適当なところで妥協して、ラクさと環境負荷と満足感を共に満たすことは出来ないだろうかと考えた人がいます。
フランスの起業家で、スタートアップ企業、
Pi-Pop 社を立ち上げた、Adrien Lelievre さんです。彼は、常にもっと多くを求めること、すなわち、よりラクに、より速く、より遠くまでと考える先は行き止まりだと話します。人間の足以外のエネルギーを使うのは、なるべく控えめにしたほうがいいというのです。
彼が考えたのは、リチウムイオン電池ではなく、
スーパーキャパシタを使う自転車です。スーパーキャパシタとは、電気二重層という物理現象を利用して蓄電するコンデンサです。充電池で化学反応を利用して電気エネルギーを蓄えるのではありません。その意味では、電池を使わない電動アシスト自転車ということになります。
乗り手がペダルをこぐ力の一部や、ブレーキをかけたり、下り坂を惰性で下るときのエネルギーを回生システムによりスーパーキャパシタに蓄電します。それを上り坂などでアシスト力として使うわけです。ですから、家庭用のコンセントなどから充電する必要はありません。
搭載するキャパシタにより、高低差50メートル程度の坂ならアシストできると言います。もちろん、エネルギー保存の法則がありますから、50メートル下って蓄えたエネルギーだけで50メートル上れるわけではありません。ただ、ラクに坂が上れる程度のアシスト力は賄えると言います。
電池と比べて内部抵抗が低いため、きわめて短時間で充放電が出来ます。走行中に蓄電したり放電したりを細かく繰り返せるわけです。必要な時に素早く蓄電し、すぐに放電してアシストするのです。一方、充放電による劣化が少ないので、電池に比べて寿命が非常に長いのも利点です。
当然ながら、登りばかりだと蓄電量、エネルギーが不足してしまって、アシストできなくなってしまいますが、普通に街を走行して、アップダウンを繰り返すには十分な性能だそうです。この機構でも、ヨーロッパの都市の8割以上で十分ラクに走行できると言います。
スーパーキャパシタ自体は新しい技術ではありません。1970年代頃からあります。材料にリチウムやレアメタルは使いません。カーボン、導電性ポリマー、アルミ箔、パルプといったありふれた材料しか使わず、リサイクルプロセスが既に確立しているので、環境負荷も低くなります。
スーパーキャパシタはコンデンサなので、ずっと蓄電しておけません。時間と共に電荷が失われます。バッテリーのように予め充電しておくのではなく、乗り始めればすぐ蓄電します。ですから、充電をし忘れたといった失敗もなくなり、365日24時間利用できるわけです。
バッテリーでの充電とは違い、化学変化を使わない点で、発火する危険性も減ると思われます。寿命は10〜15年とされ、もちろん、部品が老朽化してショートしたりすれば火が出ることもあるとは思いますが、リチウムイオン電池のように家の中で充電しないぶん、突然の発火の危険性は、より低いと考えられます。
ヒルクライムに使うならともかく、街乗りには十分なアシスト力があり、充電の手間もかからず、環境負荷も低いということなら、十分妥協可能な性能と言えるのではないでしょうか。大容量のリチウムイオン電池式の電動アシスト自転車と比べてしまうと見劣りするかも知れませんが、足るを知ることも大切でしょう。
この、“
Pi-Pop”、同社がまだ中小企業で量産効果が出ていないため、一台2450ユーロと、やや割高ですが、なかなかユニークかつ、見方によっては先進的な製品と言えるのではないでしょうか。環境意識の高いヨーロッパでは、今後普及する可能性はあるでしょう。将来の電動アシストは、充電しなくなるかも知れません。
◇ 日々の雑感 ◇
パーティー券による裏金疑惑で永田町が激震しています。政治資金規正法違反による議員本人の立件は難しいのでしょうが、東京地検特捜部は政治とカネの問題で派閥が解体するぐらいの勢いで切り込んでほしいものです。
Posted by cycleroad at 13:00│
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