March 05, 2024

乗る人が多すぎることはない

日本は、自転車大国と言われています。


デンマークやオランダなどのように自転車の乗車環境が整備され、その活用において優れる「自転車先進国」とは言えませんし、自転車に乗る人に優しく、乗りやすい国、「自転車王国」「自転車天国」とも言えないでしょう。しかし、自転車に乗る人の多さでは世界有数という点で、自転車大国です。

自転車に歩道を走行させるという世界にも稀な交通ルールがまかり通っており、この交通行政の失敗で自転車の走行秩序は混沌とし、ルールが無視されています。そのため、対歩行者も含めた事故など問題は山積し、取締りの強化が遡上に上がっていますが、多くの人の日常のアシであるのは間違いありません。

ただ、放置自転車なども迷惑ですし、歩道を暴走する人も多く、眉をひそめる人は少なくありません。自治体は撤去移送の繰り返しを余儀なくされ、ウェブサイトに「市民はなるべく自転車に乗らないで」と呼びかける自治体まであります。乗る人が多いため、なるべく減らしたいという本音が各所に見え隠れしています。

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しかし、欧米でのトレンドは違います。自転車に乗る人が多い国であっても、さらに自転車に乗る人を増やそうとしている国が少なくありません。例えば、近年のロンドンやパリなどでは、自転車インフラの整備を進め、利用者の利便性を高めています。実際に自転車で移動する人は大幅に増加しました。

その背景の一つには、温暖化対策があります。国際公約で温暖化ガス削減を掲げているため、少しでもクルマの利用を減らし、自転車を活用してもらいたいと考えているのです。また、ヨーロッパではディーゼル車が多いこともあって大気汚染による国民の健康被害が深刻です。この点でもクルマを減らしたいのです。

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主にクルマの排気ガスを原因とする大気汚染で、窒素酸化物などの有害物質や、ディーゼル車が排出する粒子状物質、PM2.5などを原因とする健康被害が広がっています。ヨーロッパ全体では年間50万人もの人が呼吸器系や循環器系疾患で早死にしていると報告されており、EUの保健機関などが警告を発しています。

多くのクルマが都市に流入するため、渋滞も深刻です。少しでも自転車に乗る人を増やせば、メリットは多いわけです。市民の健康増進にも寄与します。自転車に乗ることで健康になる人が増えれば、医療費、介護費などの費用が減ります。一人ひとりの効果は僅かでも、全体では大きな予算削減効果が見込めるのです。

自転車レーンなどのインフラ整備を進めているのも、こうした問題の対策、改善計画の延長にあるわけですが、インフラが整備されても、乗る人が増えなければ効果の増大は見込めません。そこで自転車に乗る人そのものを増やそうとする自治体も少なくないわけです。

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電動アシスト自転車の購入に補助金を設けたり、乗っていない人に試乗の機会を提供するといった制度を導入している都市もあります。特にヨーロッパでは、人々の環境意識が高いため、自転車の利用が環境負荷を減らすことをアピールするキャンペーンなども展開しています。

パリでは、2020年に新しいキャンペーンを始めました。“Car-2-Bike”を打ち出し、クルマをやめて自転車で移動してもらうため、自転車を購入してもらうという試みです。パリ市民が、パリ市内に登録されているクルマのナンバープレートを申告すると、自転車が割引で購入できるというものです。

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このキャンペーンは、オランダの自転車メーカー、“Veloretti”によるプロモーションでもあります。クルマのナンバーをデータベースにし、車種や製造年、燃料なども特定されます。環境面で良くないクルマほど、より大きな割引が適用される仕組みです。

このプロモーションによって、Veloretti 社のウェブサイトの訪問者数は激増、パリ市民による売り上げが20倍にも増えたと言います。もちろん、その全てがクルマをやめたかどうかは別として、自転車が購入され、多かれ少なかれ新しく自転車が利用されれば、クルマの利用がそのぶん減ることになるでしょう。

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Veloretti 社は、このプロモーションによってフランスでの知名度を上げ、売り上げを増やしました。パリ市は自転車購入を考える人を増やし、クルマの利用削減になりました。そして購入した市民は、割引でトクをしたわけです。3者ともトクをする、うまい仕組みと言えるでしょう。( ↓ 動画参照)



アメリカ・コロラド州デンバーは、もっと直接的です。“Bicycling Rewards Program”というプログラムに参加すると、目的地までクルマで向かう代わりに自転車に乗る人にお金を支払うというものです。コロラド州が気候変動対策目標の達成に苦戦しているのは、クルマが多すぎるからだと明確になっているからです。

参加者には、娯楽目的以外の移動1マイルに対し1ドルが支払われます。ひと月に最大200ドル稼ぐことが出来ます。初心者向けの自転車トレーニングに参加したり、自転車を購入したりすると、最大500ドル支援するサポートなどもあります。さまざまなボーナスも設定されています。

Bicycling Rewards ProgramBicycling Rewards Program

いろいろと条件があって、誰もが必ず参加できるわけではありませんが、自転車に乗るだけでお金が稼げるとするならば魅力的に感じる人は多いに違いありません。このプログラムは、気候保護基金などから資金が提供されています。初年度は15万ドルが投入されます。

コロラド州は、他にもいろいろな政策を進めています。このプログラムに関しては、コロラド州が気候変動対策の目標達成に苦戦していることを訴え、その理由はあまりに多くの市民が、大きなクルマに頻繁に乗り過ぎているからだと指摘し、市民に協力を求めています。

Bicycling Rewards ProgramBicycling Rewards Program

日本で、自転車に乗るとお金がもらえるなんて話は聞いたことがありません。クルマの所有者が自転車を割り引きで買えるという制度もないでしょう。ところが欧米では、真剣に自転車に乗る市民を増やしたいと考えているわけです。日本とは180度違うスタンスと言わざるを得ません。

日本では、気候変動対策として自転車とか、クルマの渋滞を減らすために自転車、といった話を聞くことはほとんどありません。クルマを減らし、自転車に乗ろうとキャンペーンを展開する自治体もないでしょう。その背景には、頼まなくても自転車に乗る人が多いということもあるとは思います。

Bicycling Rewards ProgramBicycling Rewards Program

しかし、乗る人が多い日本でも、さらに自転車に乗る人を増やすならば、環境面でも渋滞対策でも、市民の健康面でもメリットが得られるのは同じはずです。例えば毎朝、都心に向かうクルマで渋滞する道路は多いわけで、これを自転車の活用で減らすことを、もっと考えてもいいのではないでしょうか。

ハードルは低くありません。インフラをもっと充実させ、クルマの都心への流入抑止というコンセンサスを醸成し、さらに多くの人に自転車で移動してもらう環境をつくる必要があります。でも、そのことで得られるメリットは、自転車通行の秩序形成も含め、決して小さくないのではないでしょうか。


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◇ 日々の雑感 ◇

米大統領選の候補指名争いの前半戦の山場スーパーチューズデーです。共和党は「ほぼトラ」になりそうです。

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