March 17, 2024

さりげなく市民の背中を押す

自転車はメンテナンスが必要です。


買ってきた最初はいいですが、乗っているうちに不具合が出たり、パンクなど修理が必要になることもあります。タイヤの空気圧を調整したり、チェーンに注油をしたりなど、日常のメンテナンスを行うことで快適に乗れます。これを怠ると、乗り心地が悪くなり、楽しく乗ることも出来なくなります。

自分の出来る修理の範囲を超える場合は、近所の自転車屋さんに頼むなどするとしても、基本的なメンテナンスは自分で行うのが一般的です。ただ、趣味の自転車乗りならともかく、このメンテナンスを面倒だと感じ、つい怠ってしまう人も多いでしょう。

明らかにタイヤの空気圧が足りないまま乗っていたり、ギーギーと異音をさせて乗っているような人もいます。不具合があるまま乗ったり、乗り心地が悪くなっていけば、だんだんと自転車に乗る気が失せてくる人もあるに違いありません。せっかく自転車に乗り始めたのに残念なことです。

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メンテナンスをしない理由の一つに、工具や空気入れ、自転車修理用のキットなどを持っていないということがあるでしょう。趣味としてのサイクリストならば、各種の工具からインフレーターほか、当然のようにメンテナンスに必要な用品を自分で買い揃えると思いますが、一般には持っていないという人も少なくないはずです。

自転車修理やメンテナンス用の工具などは、それほど高価なものではありませんが、何が必要なのか、どう使えばいいのか、基本的な知識がないために買いそろえられない人もあるでしょう。そして、それがハードルとなって、自転車のメンテナンスをしない人が出てきます。

環境負荷の軽減の観点から、住民に自転車での移動を推奨し、地域でのモビリティとして自転車の活用を推進している自治体にとって、このことは大きな障害となります。これを何とか出来ないかと考えた自治体があります。カナダ・ブリティッシュコロンビア州にある町、シドニー市です(オーストラリアのシドニーとは別)。

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工具類を持っていなかったり、その使い方や必要なものがわからない住民向けに、さまざまなツールを含めた包括的な自転車修理キットを貸し出すことにしました。その拠点は、各所にある図書館です。もちろんメンテナンスの知識を得るために本も借りられますが、工具などの実物のセットを図書館で貸してくれるのです。

住民なら誰でも、工具等が必要になった時に図書館に行けばいいわけです。図書館の敷地内に新たに設置された自転車修理ステーションを利用することも出来ますし、修理キットを借りて自宅で作業することも出来ます。基本的に1週間借りて使うことが可能です。

さらに、民間業者などと提携して、自転車の修理やメンテナンス・スキルを習得する教室まで開催しています。今注目されている電動自転車の乗り方に慣れるコースとか、基本的な自転車の乗車スキルを学ぶ子ども向けのコースなどもあります。図書館が、自転車を積極的に使う後押しをしているのです。

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もちろん、キットの利用は無料です。図書館にこのような用意があると知っていれば、困った時に駆け込むことが出来て安心です。このシドニーの町の図書館は、自転車のメンテナンス・ステーションでもあるのです。本を借りるのと同様の手軽さで、いつでもツール等が借りられるのは便利でしょう。

図書館が自転車修理キット貸し出しとは意外な感じもしますが、担当者にしてみれば、地域社会の利益のために、ものを無料で貸すという点は一緒で自然なことであり、特に違和感はないと言います。地域住民にとって身近なコミュニティの拠点でもあるので、まさに適所と言えるでしょう。

実は、この取り組みを思いついたのは、ある別のプログラムからでした。同じブリティッシュコロンビア州のビクトリア首都地域のグレータービクトリアの公共図書館で始まった、“Climate Action To-Go Kits”の貸し出しがヒントになったのだそうです。

Climate Action To-Go KitsClimate Action To-Go Kits

これは、家庭において、気候変動に対する行動を促すキットです。そのために役立つツールや資料などがセットになっています。例えば、家庭用電化製品の電力使用量を測定するメーター、家の中の隙間や空気漏れを探すための熱漏洩検知器、家の中の最適な明るさを測定するデジタル照度計といったツールです。

市民が自分の家で出来る気候変動対策を調べるための道具です。これによって、エネルギーの無駄遣いを発見したり、どのようにすれば省エネになるか検討することが出来ます。なかなか個人では所有できない、所有しない道具類を使えるので、個人個人の気候変動対策のモチベーションアップにもつながるでしょう。

こちらも、個人が気候変動対策を進める上での知識や方法を示し、誰でも参加できるような工夫をこらしています。もちろん、気候変動対策と大げさに構えるのではなく、各家庭の電気代やガス代を安くするためのツールでもあります。こちらも、身近な図書館が拠点となっているのがポイントです。

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ブリティッシュコロンビア州の図書館はなかなか進んでいます。日本では、気候変動への対策から自転車を活用しようという話にならないので、興味を示さない自治体がほとんどかも知れません。ただ、自転車に乗る人は多いので、自転車修理キットを貸し出すことで、市民の自転車の使い方を変えるきっかけになる可能性があります。

日本では、格安粗悪なママチャリが市場を席捲しているため、自転車を使い捨てのようにする人が少なくありません。空気入れも注油するケミカル等も所有せず、乗り心地が悪くなったり、修理が必要になったら駅前などに放置して、また新しいママチャリを買うというスタイルです。

一般的なママチャリは、スポーツバイクなどと違って、タイヤチューブの交換一つとっても非常にやりにくく出来ています。そのため工賃がかかり、修理したりパーツを交換したりすると、新品を買うより高くなってしまうこともあります。修理を頼める店が近所で減っていることも背景にあるでしょう。

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格安ママチャリを売っているホームセンターやディスカウントショップで買う人が増えたため、街の自転車屋さんは減少の一途という悪循環です。また、駅前などに駐輪すれば、すぐに撤去移送され、引き取るのも面倒で、保管料をとられます。盗難に遭うこともあります。

このようなことを考えれば、自転車を使い捨てにして、都度買い替えるほうが合理的という判断も成り立つのかも知れません。なかなかこの状況を変えるのは困難ですが、図書館で自転車修理キットやツールを貸し出すことで、そこに一石を投じることが出来る可能性があります。

少しいい自転車を修理・メンテナンスしながら乗ったほうが快適だと気づく人が増えれば、放置自転車も減る可能性があるでしょう。定期的に買い替えるコストも減ります。そのような人が、どこまで増えるかはわかりませんが、本を貸し出すのと同じ、市民サービスの一つとして、置いてみる手はあるのではないでしょうか。


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◇ 日々の雑感 ◇

自民党は解党的出直しだそうですが、裏金問題もダンサー問題も誰の処分もなく、これで出直しなのでしょうか。

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