March 20, 2024

AIをどこにどう働かせるか

AIが身近なところにも増えてきました。


一見、関係のなさそうなところでも裏ではAIが働いていたりして、気がつかないところにも普及し始めています。自転車の分野にも、この傾向が及びつつあります。特に、e-bike を中心とした自転車本体やアクセサリーにAIを使うことで、今までにない機能を実現しようとする開発者が出てきています。

このブログでも、これまでにいろいろ取り上げています。AIスピーカーを自転車に搭載したり、AIが最適化されたシフトチェンジを行い、将来的になるべく信号で止まらないようにするとか、AIによって対話式で最適ルートを選んだり、お勧めの観光名所を案内するなど、新機軸を打ち出すところが出てきています。

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そんな中、また新たな自転車用のAI搭載アクセサリーを開発する人が出てきました。アメリカはペンシルベニア州のピッツバーグに住む、Clark Haynes さんです。彼は職場まで頻繁に自転車通勤をしていたのですが、パンデミック以後、市内を運転するドライバーが短気になり、より危険な運転をしているように感じていました。

あくまで主観的な感覚でしたが、サイクリストとして何か行動を起こしたいと考えました。実は、Clark Haynes さんは、ペンシルベニア大学のフェローで、カーネギーメロン大学などでロボット工学を専攻するなど、AIやクルマの自動運転などの研究者、博士だったのです。

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この強みを生かして、AIを搭載した自転車用のリアライト、“Copilot”を開発しました。単なるリアライトではありません。“Raspberry Pi Compute Module 4”というよく知られたコンピュータモジュールを搭載し、“Hailo AI”によって画像処理をするという本格的なAIシステムを実装しています。

センサーやカメラを搭載し周囲、特にクルマを監視します。これだけならば、これまでにもセンサーなどでクルマの接近を検知するシステムがありました。しかし、この“Copilot”は、接近してくるのが乗用車か、バスか、自転車かなど、画像を解析して判断するのです。

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当然ながら、他のサイクリストに抜かれるのと、クルマが側方通過するのと、トラックに抜かれるのは危険度が違います。大型車なら風圧で煽られたりする可能性もあります。さらに、どのような軌道を通って接近するかを、その挙動から計算し、危険度が高いかどうかを判断するのです。

安全な間隔をあけて側方通過しようとするドライバーもいるでしょうし、無頓着に近くを通るドライバーもいるでしょう。なかには、よそ見をしたり、何か別のことに気を取られて注意散漫だったり、そのままだと追突して来かねない車両もあるかも知れません。そのあたりの判断にAIを使っているのです。



後方から接近する車両が近づき過ぎると予測される場合、ドライバーが自転車に気づいていることを確認し、注意を喚起するため、ライトが明るくなって点滅します。さらに必要であれば警告音を発してドライバーに知らせるのです。警報音は90デシベル、十分な音量でしょう。

また、自転車のライダーに向けて、この“Copilot”とカップリングされたスマホに、車両の位置を知らせ、必要に応じて警告表示やメッセージを発信し、注意を促します。そして必要に応じて後方の接近車両を撮影し、記録として残します。事故やトラブルの際には有力な証拠となるでしょう。



見た目は、単なるリアライトに見えますが、それ以上のものであるのは明確です。同じ研究者で、やはり博士号を持つ、Micol Marchetti-Bowick さんと共同で、“Velo AI”という会社を設立し、この“Copilot”(日本語だと『副操縦士』)の販売を始めています。

同社によれば、自転車の死亡事故の4割は後方からの追突だと言います。前方や側方の危険は、目で見て対応出来る可能性がありますが、後方は困難です。バックミラー等で確認することは出来ても、後ろばかり気にしているわけにもいきません。“Copilot”は、後方の安全確認を補助してくれる心強いアイテムと言えるでしょう。

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バッテリーの可動時間は約5時間です。AIを働かせるのには電力がかかります。“Raspberry Pi Compute Module 4”というボードを採用したのも、その性能と本体の重さ、大きさ、消費電力などからの帰結なのです。やや可動時間が短いのもそのためですが、市街地の自転車通勤などならば十分と言えると思います。

今後、新しいインテリジェンスや新機能を備えたソフトウェアが開発された際には、無線でアップデートする計画です。また、“Copilot”のAIと対話するためのモバイルアプリをリリースする予定です。このあたりも、従来のレーダー製品とは違うところです。



“Velo AI”のCEOを務める、Haynes さんは今後の計画として、“Copilot”の蓄積するデータを収集して、稼働している「都市全体のリスク推定値」を作成することを考えています。街によってインフラ等も違うと思いますが、その評価が出来る可能性があるわけです。実際にピッツバーグ市ほかとのパートナーシップを開始しています。

彼は、このデバイスによって、必ずしもサイクリストの乗り方を変えたいわけではありません。むしろ、クルマのドライバーのほうの意識が変わり、特に自転車を追い抜く時の車両との間隔を、もっとあけて通行するようになることを期待しています。それが事故を防ぎ、ドライバーの利益にもなるはずです。

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これは、なかなか興味深いAIの使い方です。実際に使ったわけではないので、どのくらい効果があり、安全に貢献するかはわかりませんが、期待の持てるアイテムです。もしかしたら、リアライトへのAI搭載は当たり前になっていくかも知れません。

自転車に装着しておくだけでAIが働いてくれ、周囲の車両に警告を発して事故を防いでくれるとしたら有益なアクセサリーです。未然に防いでくれるとしたら、その効果がすぐに目に見えてわかるわけではないでしょうが、これを装着する人が増えると追突事故が減るとなれば、つけない手はないとなる可能性もあります。

AIは身近なところでさまざまな役に立っています。画像診断とか大量のデータ処理、分析予測など、すでに人間の能力を超えたり、あるいは人間を補助する上で欠かせないものになっていたりします。自転車の安全性向上の面でもAIが、より使われていくようになるかも知れません。


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◇ 日々の雑感 ◇

いよいよ今日、2024年のMLB開幕戦パドレス対ドジャースが開催されます。ダルビッシュ対大谷、楽しみですね。

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