クルマから自転車へのシフトです。特に都市部の移動について、クルマから自転車に乗り換える人が増えているのです。このブログでは、これまでもさまざまな観点から、この傾向を取り上げてきましたが、最近の調査からも、それが明らかになっています。
例えばロンドンでは、
2022年の11月に実施された交通量調査で、市内の道路を移動する自家用車やタクシーなどのクルマの合計を、自転車の交通量が上回りました。この交通量調査は、クルマやバス、トラックから歩行者、電動キックスケーターに至るまで包括的なものです。
それによると、エンジン駆動の車両は2019年から20%減少し、自転車は2%増加して逆転しました。自転車はコロナ禍でも唯一交通量が増加した交通手段ということになります。もちろん、ロックダウンの影響や、市民が公共交通などを敬遠したこと、燃料価格の高騰なども背景にあるでしょう。
ただ、それは別にしても、自転車の利用者は1999年から292%も増えており、自転車に乗る人が増え続けているのは確かです。ヨーロッパでは人々の環境意識が高いですし、都市部での通勤ラッシュによる渋滞が酷く、自転車のほうが速くて便利ということもあるに違いありません。
少し前に取り上げましたが、市内の物流会社が、トラックやバンを使った配送をやめ、カーゴバイクにシフトしていることも要因の一つでしょう。企業としては温暖化ガス削減対策になるだけでなく、市内の配送においてトラックよりも1.61倍も速く、実は効率的というデータも明らかになっています。
運転免許を持たない人や学生アルバイトなどでもカーゴバイクなら乗れますし、小回りがきき、クルマが入れない場所へも入って行けます。トラックと違って荷捌きのための駐車スペースを探す手間も省けます。積載量は劣りますが、配送所との行き来の回転数を増やせばいいわけで、市内の短距離なら問題ないでしょう。
ヨーロッパの都市では自転車インフラの整備を進めるところも多く、自転車へのシフトは大きなトレンドと言っても良さそうです。さらにこのほど、ドイツで行われた最新の調査で明らかになったことがあります。それは、カーゴバイクの影響が見られるということです。
“
ScienceDirect”に掲載された研究は、
ドイツで58のカーゴバイクシェアプログラム利用者を対象に実施された包括的な調査から分析されました。それによれば、対象のアクティブユーザーの5分の1が、カーゴバイクを借りて利用した結果、所有するクルマを売却したか、クルマの購入をやめたというのです。
特筆すべきなのは、これがクルマを1台しか所有していない世帯でも見られることです。カーゴバイクに乗ったことで、クルマから自転車に乗り換える人が増える傾向が明らかになりました。クルマがなくても、あるいは売り払っても、カーゴバイクで十分と考える人が少なくないと明らかになったわけです。
クルマを手放した理由の8割は環境への意識、5割は経済性、4割はクルマへの興味がないため、1割がクルマの運転による安全上のリスクと答えています(複数回答)。調査対象の平均年齢は41.6歳、73.2%は都市部、11.8%は都市近郊、15%は都市外の農村地域の居住者でした。
この中の多くの人が、カーゴバイクが非常に優れた移動・運搬手段と感じたと言います。シェアサイクルで利用してみて、その良さを実感した、理解したということのようです。最近のカーゴバイクは、電動アシスト機構を備えており、ペダリングがラクということもあるのでしょう。
普通の自転車の場合も、クルマをやめる人はいます。ただ、渋滞対策などから自転車通勤にしたとしても、クルマはクルマで必要と考える人も多いのでしょう。自転車の利用でクルマ所有をやめる人より、明らかにカーゴバイクのほうが割合が高くなっているというのです。
普通の自転車との違いは、やはり運搬の部分です。普通の自転車では荷物を運んだり、子どもを乗せて送り迎えしたりするのが容易でなかったりします。しかし、カーゴバイクを使ってみたら、これでも十分だし、それならば経費がかかり、環境にも優しくないクルマは処分してしまおうと考えるのでしょう。
研究では、交通手段の選択の動機を理解することが、市民に対する行動変容を促す方策を導くと述べています。カーゴバイクのシェアリングサービスは、カーゴバイクに乗って体験し、その良さを実感してクルマから乗り換える人を増やすという点で、優れた交通政策、環境対策になると指摘しています。
ヨーロッパでは、20世紀の前半にカーゴバイクが多く利用されていた時期がありましたが、モータリゼーションの進展とともに激減してしまいました。一時的な見直しの機運はありましたが、最近のカーゴバイクへの関心の高まりは、気候変動という背景と、技術的な進歩が要因になっていると見られています。
クルマ中心の交通システムが渋滞や事故、環境面で課題を抱える中、都市部のほとんどの移動は電動カーゴバイクでカバーできる可能性が指摘されています。課題もありますが、現在は一部に限られるカーゴバイクの利用を増やすことが、クルマ所有の減少を促し、交通政策や環境対策に大きく貢献する有望な手段だというのです。
研究ではカーゴバイクの可能性を強調しています。これまで、クルマから自転車へという観点はあっても、カーゴバイクの社会政策面での有用性についてはあまり研究されてきませんでした。クルマから自転車へののシフトだけでなく、さらにそれをカーゴバイクへシフトさせるメリットが意識され始めています。
◇ 日々の雑感 ◇
大谷選手の専属通訳水原一平氏違法賭博という報道は驚きました。大谷選手への影響がないといいのですが。
Posted by cycleroad at 13:00│
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