March 26, 2024

単なる設置から改善に向かう

交通インフラの整備は行政の重要な仕事です。


先進国では、20世紀のモータリゼーションによるクルマの増加に対応し、車道の整備を進めてきました。しかし近年は、交通事故の増加、渋滞対策としての交通量の抑制、環境負荷の軽減、都市の生活環の境向上など、さまざまな観点から、歩行者や自転車のためのインフラ整備にも注力する傾向が見られます。

一般的にクルマ社会とされるアメリカでも、これまでのクルマ優先のインフラ整備から、歩行者や自転車利用者の安全性や利便性を考慮しようという姿勢への転換が目立ちます。事故や渋滞、生活環境や環境面などから、それが市民のニーズであり、クルマ優先から「人間」を優先するという考え方の変化でもあります。

HillsboroughHillsborough

かねてから自転車レーンを整備する傾向は見られましたが、コロナ禍で自転車利用者が激増したこともあって、新たな自転車レーンを増設したり、応急的なレーンを恒久化する傾向も見られました。自転車インフラ整備が進んだ都市が少なくないわけですが、最近さらにそれをより安全にする改良に取り組む都市が目立ちます。

例えば、フロリダのヒルズボロでは、整備した自転車レーンをさらに安全にするため、バイクボックスと呼ばれるスペースを増設しています。自転車レーンだけだと自転車が縦に並んで信号待ちをする形になりますが、バイクボックスを加えることで、右折(日本だと左折)巻き込みを防ぐなどの安全性を向上させています。

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ニューヨーク市では、既存の道路整備を、自転車利用者にとってより安全にするための再設計の検討を始めました。通りの中央側にオフセットしたバスレーンを設置するとともに、自転車レーンを6フィートから8フィート、ないし10フィートに拡張する計画です。

ロサンジェルスでは、歩行者や自転車にとっての安全性を向上させる包括的な計画が市民によって支持され決定しました。これはクルマの車線を減らし、自転車やバスのためのスペースを増やし、歩行者の保護を強化するもので、今後10年にわたる継続的な計画です。

L.A.L.A.

マサチューセッツ州ケンブリッジでは、自転車レーンをクルマのレーンと分離し保護されたレーンとする工事が進んでいます。すでに設置された地域では自転車の利用者が大幅に増えており、市民にも好評を得ています。レーンの高規格化が、さらに自転車利用者を掘り起こした形です。

サンフランシスコでは、通りの中央に自転車レーンを設置する工事を一部行っていました。これは、クルマと分離して安全性を向上させるだけでなく、沿道の商業施設にも配慮したものです。クルマの駐車や配送の荷捌きが、自転車レーンで出来なくならないようにとの考え方です。

Cambridge

これはこれで先進的なものと思いますが、それを今度は廃止する検討に入っています。大通りの中央分離帯のような形で自転車レーンがあったわけですが、それを横切ってクルマがUターンしたり、違法に自転車レーンをクルマが通ったり、自転車利用者にも使い勝手が悪く、交通量が減ったことが背景にあるようです。

日本だと、行政の無謬性ということが言われ、一度行った行政を否定し、修正するのは容易でなかったりするわけですが、サンフランシスコではあっさり認めて、それを修正しようというわけです。もともと実験的な要素はあったにせよ、その柔軟な姿勢、考え方は評価されるべきでしょう。

S.F. S.F.

自転車を利用する上においては、走行インフラだけでなく駐輪インフラも重要になります。コロラド州オーロラ市では、新しい駐輪ロッカーシステムを整備しています。鉄道駅周辺に設置することで、自転車利用者の乗り換えの利便性をはかるものです。

駐輪スタンドではなくロッカーなのは、盗難が多いための配慮でしょう。最初の18時間は無料で利用できます。一部にカーゴバイク用の大型のものもあります。そしてスマホに専用アプリをダウンロードすれば、スマホから簡単に予約ができ、スマホでロックの解除が出来るシステムです。

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駅前の駐輪ロッカーが利用できれば便利ですが、行ってみたら既に満杯だったというのでは困ります。一時利用であっても、あらかじめ予約しておければ安心です。市民が安心して鉄道への乗り換えが出来るような配慮で、なかなか先進的な整備と言えるでしょう。

ヨーロッパ諸国でもそうですが、一般にクルマ社会と見られがちなアメリカでも、都市部では自転車の活用推進が図られており、それは市民のニーズでもあります。安全かつ便利に利用できれば、従来の利用者の満足だけでなく、新たに利用する人を増やすことにもなるでしょう。



翻って日本を見た時、彼我の差の大きさに落胆せざるを得ません。都市部の一部では、自転車の車道走行を想定し始めていますが、自転車レーンではなく、車道上に青い矢羽根をペイントするだけのケースも多く見られます。申し訳程度のものも多く、保護された自転車レーンなど、ごくごく少数に過ぎません。

駅前の周辺に広い歩道があるところでも、自転車ロッカーどころか駐輪スタンドですら置きたがらない自治体は少なくありません。市民の利便性より、街の美観を優先するという考え方です。美観といっても、自治体の担当者が自転車を駐輪させたくないというだけです。

大阪厚木

どこも年中放置自転車の撤去・移送を繰り返すいたちごっこで、莫大な費用がかかっています。それを駐輪機等の設置に使う方法も考えられるはずです。駐輪当初を無料にすれば利用も拡大し、迷惑駐輪の減少も見込めると思います。でも公共の駐輪場を設置しても有料にする例が多く、利用されなければ無意味です。

これまでも指摘してきましたが、こうした欧米と日本との交通インフラ整備に対する姿勢や考え方の違いには、いろいろな理由があるでしょう。ようやく一部で自転車レーンの整備の必要性を問う声がないわけではないですが、欧米とは、一回りも二回りも遅れていると言わざるを得ないのは確かなようです。


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◇ 日々の雑感 ◇

北朝鮮が日本との首脳会談を示唆、拉致については牽制していますが、まず突破口を開くことが期待されます。

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