サイクルロード 〜自転車への道
世界の都市で自転車が選ばれ始めている。さまざまな角度から自転車の話題を。
April 13, 2024
場所がないと諦めるのは早い
自転車は身近な移動手段です。
純粋なサイクリングは別として、日常の移動に使われるとしたら駐輪は不可分です。つまり、何かの用事で移動する以上、どこかに駐輪し、電車に乗ったり、買い物をしたり、食事をしたりなど用事を済ます間はとめておくしかありません。移動手段である以上、駐輪は避けられません。
そのため、多くの人の目的地となる鉄道駅には、たくさんの自転車が駐輪されることになります。駐輪場が整備されていればいいですが、足りない場合は駅前の路上などに駐輪する人が出るのは避けられないでしょう。いわゆる迷惑駐輪、または放置自転車です。
もちろん、往来の妨害となるような迷惑駐輪を擁護するつもりはありませんが、駐輪のニーズに対して駐輪場が足りていないのが問題の根本でしょう。自治体が往来の邪魔にならないよう撤去するのも仕事の一つだと思いますが、本来の自治体の役割は、住民のニーズを満たす公共サービスを提供することのはずです。
放置したいのではなく駐輪したいのです。
路上に一時駐輪しただけで即撤去とか、ネットで『市民は自転車を使わずに歩きましょう。』と呼びかけるような自治体もありますが、本来は足りない駐輪場を整備するのが自治体に求められることであり、自転車を目の敵にして撤去・移送のイタチごっこを繰り返すことではないはずです。
でも、都市部の鉄道駅の周辺には駐車場を整備する土地がない、あっても地価が高すぎるというのが、自治体が整備できない理由として挙げられます。一方で、一つの区だけで年間数億円から十数億円という予算を撤去・移送に費やしていたりします。撤去・移送するだけの費用で億単位は、いかにももったいないと感じます。
たしかに、大規模な駐輪場用の土地は手当できなかったり、多額の土地代、建設費がかかるのは否定しません。しかし、ほかにも方法はないでしょうか。駐輪する自転車があふれてしまうのは、日本の都市に限ったことではありません。海外にヒントとなるような事例があります。
スイスのスタートアップ企業、“
V-Locker AG
”という会社が展開する、“
V-Locker
”システムです。駅前などの狭い土地でも建てられるタワー型の駐輪機です。地上面にあるドアから自転車を入れ、タワーの中に格納するという土地を有効活用するアイディアです。
土地の大きさや形に応じて、コンテナ型のモジュールを積み重ねたり並べたり出来ます。このモジュールは工場で生産され、トラックで現地に運び、クレーンで積み上げるだけで簡単に設置することが可能です。工事もあっという間に済むので、工期もとりません。
外装のデザインは、設置場所に合わせたり、自治体の要望で自在にカスタマイズできます。ユニット数や高さも設置場所に応じて変更できるので、土地の有効活用が出来ます。まだ採用が始まったばかりですが、すでにスイスに6か所、ドイツに7か所あり、今後も増えていく見込みです。
この、“V-Locker”が優れているのは、狭い場所でも設置できるだけではありません。利用者にとっては、駐輪中の自転車の盗難や破壊行為から守られるという利点があります。雨が降っても濡れることはありませんし、風で倒れたり、雑然となって往来の邪魔になったり、将棋倒しになって取り出しにくくなることもありません。
自動なので管理人は不要、365日24時間稼働します。専用のアプリをスマホにダウンロードして使いますが、アプリから空き状況を確かめたり、予約をすることも出来ます。行ってみたら満杯だったという事態も防げます。利用料はアプリで決済が可能で、多くの場合、利用促進のため駐輪から一定時間は無料です。
このシステムの設計やエンジニアリングは、
Meyer-Hayoz 社
というコンサルタント会社によって行われました。個々の駐輪ラックには、ヘルメットやバックパックなどの荷物を一緒に保管できるようになっていて、持ち歩かずに済んで便利です。自転車利用者の利便性を向上させることで、都市交通の持続可能性に貢献します。
壁面を広告スペースとして使って、維持費などに充てることも出来るでしょう。近い将来、この“V-Locker”は、駐輪中に電動アシスト自転車などの充電が出来るようになる予定です。最近は電動自転車に乗る人が増えていますし、駐輪している間に充電できるようになれば便利でしょう。
日本にも、鉄道駅などに、似たシステムで地下収納式の大規模な駐輪場があります。しかし、それだと駅前の地下空間が空いている必要がありますし、多額の建設費がかかります。しかし、この“V-Locker”なら、空いているスペースに設置するだけです。中途半端な土地でも有効活用出来ます。( ↓ 動画参照)
これなら日本の駅でも設置できるところは多いのではないでしょうか。すでに駐輪スペースや駐輪ラックがある場所なら収容がアップしますし、事実上の駐輪場所のようになって、占拠されてしまっているようなところに設置することも出来るでしょう。
近年、姿を消して見なくなってしまいましたが、以前は公衆電話ボックスが何個も設置されていたような場所もあるはずです。駅前の美観のために設置された花壇や植え込みなどの場所も候補でしょう。駅前のロータリーの真ん中の島の部分がデッドスペースになっていたりすることもあるはずです。
それぞれの駅ごとに違うので一概には言えませんが、探せば多くの駅でスペースは見つかるに違いありません。こうした駐輪ラックを設置することで駐輪の収容能力を上げていけば、迷惑駐輪を減らせる可能性があります。設置費用は、減ると見込まれる撤去・移送費を充てればいいでしょう。
自転車による移動と駐輪はセットです。駅前の放置自転車に悩んでいる自治体は多いと思いますが、だからと目の敵にして撤去・移送を繰り返し、税金を延々と垂れ流すのは不毛と言わざるを得ません。駅がある以上、駐輪のニーズがあるのは当然です。ぜひ駐輪に対する考え方を変えてほしいと思います。
◇ 日々の雑感 ◇
違法賭博問題で水原一平容疑者の手口が明らかになり、大谷選手は完全に被害者と米マスコミも認め始めたようです。捜査当局の事情聴取に応じるなど、メンタル的にも大変だったと思いますが、その中でも4号さすがです。
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Posted by cycleroad at 13:00│
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