「ゴミ拾い」で検索すると、ゴミ拾いのボランティア活動や、ゴミ拾いのイベント、スポーツや競技としてのゴミ拾いなど、活動や話題がたくさん出てきます。各地でゴミ拾い活動をする人が増えており、それが広がっていることが実感されます。ゴミ拾いの効用なども説かれています。
日本人はキレイ好きなのか、ゴミ拾いや掃除をする人が少なくないのは確かでしょう。日本では放課後に教室の掃除をするのは、ありふれた光景ですが、外国人が見ると驚きます。海外では、掃除は清掃業者がやるものであり、自分たちで清掃してしまうと清掃業者の仕事を奪ってしまうと考えるからだと言われます。
サッカーワールドカップで、試合後に日本のサポーターがスタンドのゴミ拾いをしたことに、世界中から驚きと称賛が寄せられたのも、日本と海外の人のゴミ拾いに対する感覚の違いなのでしょう。来日する外国人観光客の多くは、日本の街がキレイだと驚きます。

メジャーリーグの大谷翔平選手がグランドのゴミを拾ってユニフォームのポケットにしまう行為が注目され、アメリカのメディアから称賛の声が寄せられたのも記憶に新しいところです。彼は学生の頃から、人が落とした運を拾う行為として当たり前のようにゴミを拾ったり、掃除を率先してやってきたと言います。
大好きな野球をやる舞台ですから、ゴミが落ちていると気になるのかも知れません。でも、グラウンド外でも、ごく自然にゴミを拾ってゴミ箱に捨てたりする行動が目撃されています。運を拾うというより、もう意識せず自然と出てくる行為になっているようです。
ところで、サイクリストが大好きなサイクリングをする場所は主に道路なわけですが、自転車に乗りながらゴミ拾いというわけにはいきません。日本の道路は比較的清掃が行き届いており、気にならない場所も多いのではないでしょうか。ゴミが落ちていることもありますが、限られるでしょう。


でも、海外には、道路にゴミが多い都市もあります。例えばアメリカ・ジョージア州のアトランタです。ここに住む、
Alex Benigno さんは、道路にクギや金属片など、タイヤをパンクさせるようなゴミが多いことに辟易としていました。頻繁にパンク修理をしなければならなかったからです。
道路清掃もありますが、同市では四半期に一度程度の場所が多いようです。道端にネジなどの入った袋が投棄されていたり、それがいつまで経っても放置されたままといった事もありました。行政も一向に改善しようとする気配がありませんでした。そこで、彼は仕方なく自分で解決策を模索することにしました。


自腹で1000ドル出して磁石などのパーツを購入し、トレイラーに装着しました。走行しながらクギや金属片などを掃除することにしたのです。もちろん、普通のゴミ拾いと同じで、何の見返りもありません。彼は、ただ道に落ちているクギや金属片を見つけたら拾いたいだけだと話します。
拾わなかったら、それがまたパンクの原因になりかねません。自分の自転車がパンクしなかったとしても、市内のサイクリストの誰かがパンクさせられ、パンク修理をするハメになり、手間と時間がかかることになるでしょう。ゴミを見て見ぬフリをしていても、困るのは自分たちなのです。
でも、このゴミ拾いを始めて、金属片が少なくとも減っていることに嬉しさを感じました。自分や市内の同胞がパンク修理する確率が減っていることで、夜も気分よく眠れるようになったと言います。そして、どのくらいの量の金属片が落ちていたか記録するため、インスタグラムのページを立ち上げました。
すると徐々に注目されるようになり、敬意を込めて、アトランタのマグネットマンと呼ばれるようになりました。今までに、クギだけでなく銃弾まで含む金属片を410ポンドほど回収しました。この金属片は、地元のスクラップ・メタルのアーティストに引き渡しました。
さらに、Benigno さんは、金属片に留まらず、ガラス片や陶器の破片のような非鉄のゴミ、やはりパンクの原因になるようなゴミまで清掃しようと考えました。それらは磁石では吸着しないので、違うタイプのトレイラーを手に入れる必要があります。
このための資金を集めるべく、
寄付を募集したところ、目標の3500ドルを上回る4983ドルが161人の支持者から集まりました。反響が広がるにつれ、他の都市でもサイクリストが安全に走行でき、パンクのリスクの比較的少ない環境をつくりたいと考えています。

まだ少しずつですが同様の行動、すなわち道路清掃用のトレイラーを牽引して、
道路のゴミを収集するようなサイクリストが散見されるようです。誰も、わざわざ清掃用のトレイラーなど牽引して走りたくないはずですが、誰もやらなければ、環境は改善しません。一般のゴミ拾いと一緒です。
一般のゴミ拾いも、道路の金属やガラス片の収集も、一通り集めたら終わりというわけにはいきません。ポイ捨てしたり不法投棄など、破片の発生源がある限り必要になるでしょう。でも、ゴミ拾いをする人、トレイラーを牽引する人のことを見聞きすれば、ゴミを発生させる人も少しは減っていくことが期待されます。


ちなみに、中世までの欧米の都市では、ゴミは道に捨てるのが当たり前だったそうです。非常に非衛生的だったと言われています。一方、江戸時代の江戸は、汲み取りやゴミを資源として集めてリサイクルする仕組みが整っており、非常にキレイな街だったことに宣教師などの外国人が非常に驚いたという記録が残っています。
ただ、明治以降の日本では、文明開化や生活様式の変化もあり、道端にゴミが捨てられることも多かったようです。1964年のオリンピックまでは、道や川にゴミが捨てられるのが当たり前で、今と比べてゴミがあふれ、衛生状態が悪く、五輪開催に向けての改善がたいへんだったとも聞きます。
今でも街でポイ捨てをする人がいるわけで、ゴミ拾いも必要なわけですが、以前からすれば日本も海外も、かなり改善されてきたと言えるでしょう。プラスチックごみによる海洋汚染をはじめとするゴミ問題がクローズアップされ、地球環境を守り、持続可能な社会をつくるという意識が高まってきていることも背景にありそうです。
海外でも日本でも、街中や路上のゴミは徐々に減って来ているのでしょう。ゴミ拾いをすると、そのぶんキレイになって、とても気持ちがいいのは間違いありません。そしてゴミを捨てなくなるはずです。少しずつでしょうが、投棄されるゴミも減って行くと思われます。願わくば、ゴミ拾いが出来なくなる世界が見てみたいものです。


◇ 日々の雑感 ◇
ドジャースの大谷翔平選手が日本人歴代1位となる176号を打ちました。待たれていた記録ですが通過点ですね。
Posted by cycleroad at 13:00│
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