June 03, 2024

数でなく大きさなら減らせる

ドイツの基幹産業はクルマ産業です。


ドイツ人の被雇用者の7人に1人はクルマやその関連産業で働き、ドイツの輸出の40%はクルマに関連しています。「メルセデス・ベンツ」「BMW(およびミニ)」「アウディ」「フォルクスワーゲン」「ポルシェ」といった世界的なクルマメーカーがあります。

ただ、最近は中国の低価格EVの攻勢を受けるなどで苦戦する面もあり、ドイツ経済の不調の原因と言われるなど、先行きが不透明な部分もあるようです。ヨーロッパでは人々の環境への意識も高いため、化石燃料型のクルマの将来は持続可能性の点で懸念される傾向もあるのでしょう。

中国EVの攻勢メーカー生存危機

国の基幹産業とは言え、ドイツの人々の意識は必ずしもクルマ産業支持とは限りません。走行だげでなく製造も含めて温暖化ガスの排出源ですし、ディーゼル車によるヨーロッパ圏の深刻な大気汚染の被害の問題もあります。交通事故や渋滞など市民生活に対するネガティブな面もあります。

前回取り上げた、ドイツのベルリン・テーゲル空港の再開発計画は、域内のクルマの通行が制限され、クルマ優先でない、人間の暮らしやすさを優先した街の開発でした。この例だけでなく、これまでのようなクルマ優先の街に対する疑問は、一部で広がりつつあるようです。

Tegel ProjektTegel Projekt

クルマを含めた移動手段、モビリティは再考すべき時に来ていると感じている人も少なくないでしょう。クルマ産業で働いていたEV部門の技術者などが中心となって立ち上げたスタートアップ企業、Hopper Mobility GmbH 社のメンバーたちもそうです。

彼らは、これからの都市はより住みやすく、かつ持続可能なものである必要があると確信しています。モビリティも、その重要な要素なのは間違いありません。近年利用が広がるEVであっても、時代のニーズに応えられない部分があるのではないかと考えています。

HopperHopper

少なくとも都市部では、環境の問題だけでなく、事故や渋滞、駐車スペースの不足などさまざまな問題があります。ただ、再開発のような政治的な手法だけが唯一の解決策とは限りません。彼らは都市部のモビリティについて、その製品によって未来への提案をしたいと考えています。

テーゲル空港の再開発ではありませんが、基本的に都市の道路を走るクルマが減れば、そのぶんだけ住みやすくなると考えています。しかし、いきなり人々にクルマに乗るな、自家用車を手放せというわけにもいきません。そこで、台数ではなく大きさを減らす考え方を提示しています。

HopperHopper

HopperHopper

それが“Hopper”です。いわゆるマイクロカーと言われるような大きさのモビリティです。1人乗りと前後の2人乗りがありますが、見た通りコンパクトです。従来型のクルマ1台分で4台駐車できます。幅も狭いので、住宅地の狭い道路でも余裕で行き違えます。都市部での移動には十分でしょう。

実はこれ、マイクロカーではなく自転車です。屋根のついた耐候性の電動アシスト自転車なのです。1人乗りで300リットル、2人乗りで140リットルという大容量のカギ付きのトランクを備えていますので、電動アシストカーゴバイクと言ってもいいでしょう。大きさは従来のカーゴバイクと変わりません。

HopperHopper

HopperHopper

電動アシスト機構がついていますが、ペダルで動く自転車です。ですから運転免許も車両登録もクルマの自賠責保険なども不要です。全長2メートルで小回りもきき、都市部ではクルマより便利に使えるはずです。自転車レーンも通れるので渋滞も回避できます。禁止場所でなければ、普通の自転車と同じように歩道に駐輪出来ます。

国によっても多少違いますが、街を走行するクルマに乗っている人数は平均1.2人ほどと言われます。それを運ぶのに、あの大きさは必要ないでしょう。4〜5人乗ることもあるでしょうが、ふだんの生活で1人か2人で移動する分には、荷物を積んでも“Hopper”の大きさで十分と言われて同意する人は少なくないはずです。

HopperHopper

HopperHopper

仮に、クルマの大きさが、この“Hopper”の大きさに制限されたとしたら、従来の道路の車線は半分に出来ます。クルマ用の空間を縮小し、徒歩や自転車用の空間をもっと余裕を持って確保できるでしょう。駐車スペースも1/4で済みますから、公共の土地のスペース効率が大きくアップするに違いありません。

未来のモビリティがこれになると言うわけではありませんが、環境面だけでなく、スペース効率という面からも、これまでのクルマの大きさを考え直してもいいのではないかという提案なのです。子ども2人を乗せて送迎も出来ますし、高齢者が免許を返上しても乗れる点もメリットです。

HopperHopper

HopperHopper

250Wのモーターで、ドイツ仕様だと時速25キロまでアシストします。最大航続距離は65キロで、都市部で使うには十分でしょう。バッテリーは取り外し可能で、家庭用コンセントで充電可能です。スマートフォンなどを充電するのに便利なUSB充電ポートも備えています。

照度最大550ルーメンのLEDの前照灯やテールライト、曇り止めのウィンドウヒーターやパッシブ換気ベンチレーションなどの装置も備えられ、ハンドブレーキなど安全面にも配慮されています。生産は2024年半ばに始まる予定で、オプションの屋根に装着する太陽電池モジュールも開発中です。( ↓ 動画参照)







開発した人たちは、このようなモビリティ、自転車が都市での移動の中心になっていけば、環境面と都市空間の効率性のアップだけでなく、市内の移動速度も抑制されて危険性が低減し、より街が住みやすくなると考えています。もちろん自転車なので、初期費用や運用コストが大幅に安くなるのも大きなメリットです。

コンパクトなマイクロカーを開発するメーカーもありますが、マイクロカーではなく電動アシストカーゴバイクにすることで得られるメリットはたくさんあります。さらにクルマの代替として使える利便性だけでなく、サイクリングの楽しさも提供できると考えています。

HopperHopper

“Hopper”社の開発コンセプトには一理あると思います。もちろん、ドイツではクルマメーカーは基幹産業ですから、経済や雇用などの面もあります。環境だけで、すぐ変えられるものでもありません。ただ、台数を減らすだけでなくクルマ、モビリティのサイズを小さくするという視点はあってもいいのではないでしょうか。


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◇ 日々の雑感 ◇

岸田首相は政治資金規正法改正で公明や維新の主張を丸のみして自民党内からも反発される一方で、連座制も企業団体献金禁止も政策活動費廃止もなく野党はゼロ回答と反発、国民が納得すると思ってるのでしょうか。

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