自転車の場合、両手・両足とお尻の一部しか接点がないため、体重が点に集中してしまうのが痛みの要因でしょう。特にサドルとお尻の接点は、なかなか変えられないのも辛いところです。なるべく前傾姿勢にして体重が分散できると多少違うと思いますが、クルマのシートに座るようにはいきません。
ママチャリに乗っているぶんには、お尻が痛いと悩む声はあまり聞きません。おそらく乗る距離が近所で短く、短時間だからでしょう。私はどこかのレンタサイクルで借りたママチャリに長時間・長距離を乗ったら、乗車姿勢的にも体重がサドルに集中し、お尻が痛くて仕方なかった経験があります。やはり時間的な問題なのでしょう。
そんなお尻の痛みで悩む人のため、いろいろな形状、材質のサドルが開発されてきました。ママチャリのサドルのようなクッションの厚いもの、ゲル状のクッションが入ったサドルカバーなども売られています。左右の座骨の間隔やお尻の肉の厚みなどは個人差が大きいですから、なかなか満足出来ない人もあるに違いありません。
私もいくつかサドルを購入しましたが、幸いなことに具合のいいものが見つかりました。ただ人によっては、痛みの場所も座骨以外に会陰部だったりしますし、身長や体重から手足の長さや腰幅などの体格も千差万別ですので、そう簡単には合うものがみつからないこともあるのでしょう。
さて、最近見かけたサドルにユニークなものがありました。形状や材質ではなく、構造が工夫されています。サドルが左右に分割されて独立しており、しかもそれぞれレールに沿って動くというものです。ペダルを踏む足の動きに合わせて傾くように出来ており、体重が点に集中することなく支える形になっています。
オーストラリアのエンジニアである、Robin Macan さんと、工業デザイナーの、Philippe Guichard さんらのチームが開発した“
VabsRider ”です。Macan さんのスタートアップ、
ataraxyBSC 社 が商品化中です。自転車に乗るときに苦しむ人を無くしたいという思いで、身体の動きに合わせて動くサドルを考案しました。( ↓ 動画参照)
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ペダルは足の力を推進力に転換するため動くのが当たり前ですが、身体を支えるサドルを動かすという発想はなかなか出てこないのではないでしょうか。さらに、独自のシートポストに取り付けられたネジやパーツによって、前後と高さの調整に加えて、サドルの角度や幅の調整も可能にしています。
これで誰の痛みも解決するという性質のものではないと思いますが、なかには痛みがなくなり快適に乗れる人もあるでしょう。サドルと特定の場所が擦れて痛みがあった人にも福音となるかも知れません。足の動きに合わせて動くサドルというのは、斬新な発想です。
と、思ったら、私が知らないだけで、似たことを考えた人はいるようです。カナダのメーカーが開発したサドル、“
Airo Bike Seat ”はサドルの一部が動くようになっています。サドルのノーズ部分は固定ですが、鼻に例えると、小鼻の部分が左右それぞれ動きます。これも似たコンセプトと言えるでしょう。( ↓ 動画参照)
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さらに調べてみると、サドルの形状が足の動きに合わせて動くものもありました。レールに沿っては動かなくても、取り付け部分がフレキシブルに動くようになっていて、固定されていないぶん、やはりお尻の痛みを防ぐような構造となっているものもあります。( ↓ 動画参照)
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どのサドルも万人向けとは言えそうにありません。一つで共通して解決出来るというものではなく、誰かには適して、誰かには合わないでしょう。つまり、ニッチな商品とならざるを得ず、あまりメジャーな商品になりえないため、知られていないものも多いのだろうと思います。
これまでにも、このブログではいろいろなサドルを取り上げてきました。もし、これが最終形というサドルが出来たらスゴいですが、おそらくそうはならないものと思われます。すなわち、これからもいろいろな工夫がされたサドルが出てくることになりそうです。
◇ 日々の雑感 ◇
初夏のような気温になっています。このぶんだと九州北部から関東甲信で記録的に遅い梅雨入りになりそうです。
Posted by cycleroad at 13:00│
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