肩こりや腰痛、膝の痛みなどが一般的でしょうか。テレビをはじめ、いろいろなメディアで、これらの痛みを軽減するための薬品、サプリメント、医薬部外品、クリニックに至るまでたくさんの広告を見ます。それだけこれらの慢性的な痛みに悩む人が多いということなのでしょう。
特定の疾患などは別として、ふだんの生活の中での疲労や身体の酷使、運動不足や加齢などにより慢性的な痛みがあるということだと思います。とくに病院で診てもらうのではなく、湿布薬や塗り薬、サプリメントや健康飲料などを買って使ったり、飲むことで緩和させようと考える場合が多いのではないでしょうか。
私は幸いなことに、これらの痛みに悩まされたことがないので、何かの製品を使ったり服用したことはありません。ですから経験から言うのではないのですが、広告などを見ていると、素朴な疑問が湧いてきます。湿布や塗り薬はともかく、医薬品やサプリメント、飲料などについてです。
口から飲んで、例えばヒザだけに効くというのは不思議な気がします。患部に外から注射するなどならばわかりますが、口から飲んでヒザだけに届く仕組みが疑問です。宣伝でやっているように、本当に飲むだけで効くのでしょうか。そこに素朴な疑問を感じるのです。
例えば、コラーゲンを配合などとあります。たしかにヒザに直接コラーゲンを注射する治療はあるようです。ただ、身体にとっては異物なので免疫が働いて拒絶反応を示し、腫れたりすることもあると聞きます。医師免許を持つ病院での治療は別として、美容クリニックなどで安易に注射して問題になった例も聞いたことがあります。
患部への注射はともかく、経口での摂取で効く仕組みは大いに疑問です。そもそもコラーゲンは、タンパク質の一種で、私たちの身体の中では一番ありふれたタンパク質です。皮膚から筋肉、靭帯、腱、骨、血管、その他の臓器を構成する要素です。体内のタンパク質の3割を占めると言われます。ありがたい成分ではありません。
そもそもコラーゲンは消化・分解されてアミノ酸の形で吸収されます。体内で必要なタンパク質に再構成されます。サプリで接種しようが肉として食べようが同じであり、アミノ酸の補給にはなりますが、コラーゲン由来かすら、わからなくなってしまうのです。すなわち、コラーゲンを摂取しても、ヒザだけに行くはずがありません。
消化吸収の仕組みにおいて、アミノ酸レベルまで分解して吸収するのは人体の重要な仕組みです。例えば何かの肉由来のコラーゲンがそのまま吸収されるとしたら、大変なことになります。身体にとって異物を直接取り込むのは大きなリスクであり、そのようなことが起きないように人体は出来ているのです。
つまり、コラーゲンを配合していても、ヒザに届くようなものではないですし、その効用も不明です。コラーゲンと聞くと、ヒザの軟骨の成分となって効きそうに感じますが、元々体内に豊富にある成分に過ぎません。一部の専門家も指摘していますが、さも有用だと誤認させるものではないでしょうか。
場合によっては、『○○に効くと報告されています。』といった宣伝文句も目にします。しかし、その報告の出処が不明だったり、本当に権威ある機関か、そのメーカーの系列などではなく、中立な立場の第三者機関かどうか疑問な例もあるようです。必ずしも詐欺とは言いませんが、消費者を誤認させる表示ではないでしょうか。
どの製品とは言いませんが、他にもグルサコミンやコンドロイチンといった成分がヒザに効くとしているものも多いと思います。私は専門家ではないので、科学的根拠は記述しませんが、例えば
厚生労働省の医療関係者向けのページには、この成分について次のように書かれています。
グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントについて
人を対象とした質の高い大規模試験から、グルコサミンとコンドロイチンの安全性および有用性に関する情報が得られています。
グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントの有効性について
コンドロイチンは変形性膝関節症または変形性股関節症の痛みに有効ではないことが研究結果から示唆されています。
グルコサミンが変形性膝関節症の痛みに有効かどうか、また、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントがそれぞれ他関節の変形性関節症の痛みを軽減するかどうかは不明です。
グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントの安全性について
研究により、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントは、抗凝固剤(血液希釈剤)薬であるワルファリン(Coumadin)と相互作用を起こすおそれがあることがわかっています。概して、研究ではほかの重大な副作用は示されていません。
グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントを摂取している場合は、かかりつけの医療スタッフに連絡してください。使用しているサプリメントをかかりつけの医療スタッフが把握していれば、より良い治療が受けられます。(以下略 厚生労働省のウェブサイトより)
私は医学や化学の専門家ではないので、効かないと断定するつもりはありません。でも、こうした事実を見る限り、市販の医薬品、サプリメント、健康食品や健康飲料などについて、あまり信用できないものがあるのは確かでしょう。なかには大手企業でも平気でいい加減な宣伝していることに驚きます。
先般、小林製薬の紅麹サプリが健康被害を起こし、それが原因と疑われる死者まで出ました。機能性表示食品制度自体の信頼性まで揺るがす事態です。このサプリと一緒にするつもりはありません。でも、あくまでも素人の感想ですが、本当に効くのか疑問、効くように思わせているだけのサプリも問題なのではないでしょうか。
さて、自転車ブログなので、話題を自転車関連に向けますが、このヒザの痛みについて最近、新しい研究の結果が出ました。
National Institutes of Health (NIH)、アメリカ国立衛生研究所が発表したものです。それによると、
継続的に自転車通勤をしている人は、変形性膝関節症の症状軽減につながるというのです。
研究によれば、自転車に乗る習慣のある人は、自転車に乗らない人に比べて、65歳までに変形性関節症や膝の痛みを経験する可能性が大幅に低いことがわかったと言います。アメリカスポーツ医学会の主要査読ジャーナル、“
Med Sci Sports Exerc”に掲載されています。
ここで何故、自転車通勤が出てくるのか不思議に思う人もあるかも知れません。この手の研究では、相関を調べるため、継続的に自転車に乗っている人を対象にします。自転車に乗る習慣のある人でもいいですが、「自転車通勤をしている人」は確実に継続的に自転車に乗っている人になるわけです。
平均年齢64歳の男女約2,600人を対象に行われ、生涯にわたる身体活動についても調査されました。膝関節の関節炎の兆候を評価するため、X線画像も撮影されました。自転車に乗る人は、自転車に乗らない人に比べて、X線写真で変形性関節症の兆候や症状が見られる可能性が21%低かったと言います。
これほど大きな違いが出たことに研究者は驚いています。共同研究者の筋骨格研究者は、サイクリングはヒザの周りの筋肉を鍛えるのに役立ち、それは膝関節の保護にも役立っていると指摘します。また、関節内の髄液を動かし、潤滑・循環させ、軟骨に栄養を供給するのに役立つとも話しています。
ここで注意すべきは、自転車に乗ればヒザの痛みがとれるという結果ではありません。その因果関係を示すものでもありません。あくまで、自転車通勤など自転車に日常的に乗ってきた人が、そうでない人に比べて、ヒザの痛みに襲われることが有意に少ないということが確認されたということです。
ただ、もともと自転車はヒザに優しい運動です。ジョギングでは、一歩着地するごとに体重の3倍の衝撃がヒザにかかりますが、ペダルを回すだけの自転車は衝撃はかからないので、ヒザを痛めにくいとされています。実際にヒザが痛い人は歩くよりラクだったりもするでしょう。
ヒザの痛みを治したり軽減するものではありませんが、多くの人がヒザの痛みに悩まされる中で、自転車に乗っている人は、将来それを免れる可能性が相対的に高いということです。これまでも取り上げてきましたが、自転車の健康効果はとてもたくさんあります。これもその一つということになるでしょう。
市販の医薬品、サプリメント、医薬部外品、健康食品などの愛用を批判するわけではありません。飲むだけと手軽なので、つい頼りたくなるのも人情です。もちろん、効果があれば利用することを否定するものでもありません。ただ、将来ヒザ痛に悩まされないよう、今のうちにヒザ周りを鍛えておく手はありそうです。
◇ 日々の雑感 ◇
ドジャースの大谷翔平選手が昨日2HR、今日は3安打の活躍、いいニュースが少ない中、明るいニュースですね。
Posted by cycleroad at 13:00│
Comments(0)