July 21, 2024

観光客の行動を誘導する方策

単月として過去最高を記録しました。


インバウンド、外国人の訪日客数です。今年6月は313万人余りとなり、単月として過去最高となりました。それまでの過去最高だったコロナ前の2019年の6月を9%上回り、前年同月比では51%増です。上半期の累計でも、1777万人となり、過去最高を記録した2019年上半期を100万人以上上回っています。

これに伴って最近よく聞くのが観光公害、オーバーツーリズムです。あまりに多くの観光客が訪れるため、公共交通が大混雑したり、特定の場所に観光客が集中してしまうため、地元の住民の生活に影響が及ぶなど、いろいろな問題を引き起こしています。

Photo by Tivoligardens2,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by Scythian,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

地域経済が潤うという大きなメリットがある一方で、特定の場所に集中すると、渋滞や混雑、待ち時間の長時間化など、観光客にとっても印象が悪くなるでしょう。気持ちよく過ごしてもらって、再びリピーターとして訪れてもらうためにも、オーバーツーリズム対策は喫緊の課題となっています。

ところで、オーバーツーリズムは日本だけの問題ではありません。世界各地の観光地の中には、同様の問題で悩んでいる場所が少なくありません。例えば、このブログでは自転車先進都市としてよく取り上げる、デンマークの首都、コペンハーゲンもその一つです。

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デンマーク全体でも九州くらいの大きさで、コペンハーゲンはコンパクトな都市ですが、市の人口81万人に対し、夏だけでも1200万人の観光客が訪れます。人口の約15倍もの人が押し寄せるわけで、日本よりもたいへんな部分もあるに違いありません。そんなコペンハーゲン市が今年実験的に始めたプログラムがあります。

CopenPay”です。地元の住民も参加できますが、主に観光客に対して、環境に配慮した行動をとってもらうことを積極的に促そうというプログラムです。先週始まり、8月11日までのまだ試験的なプログラムですが、観光客向けにさまざまな特典を提供しています。



CopenPay”と言っても、日本の○○ペイのような決済アプリではありません。観光客がクルマではなく自転車を利用したり、再利用可能なカップを持参したり、ゴミ拾いなどのボランティア活動に参加したりすると、何かが無料でもらえるなどの特典を提供するものです。

例えば、観光スポットに自転車や徒歩で来た人には無料のコーヒーが提供されるとか、都市庭園で草取りを手伝ったらベジタリアンランチが無料になったり、ガーデンエリアのゴミ拾いをするとオーガニックの食事が無料になったりなど、ちょっとした特典が数多く設定されています。

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見ると、さすが世界一とも称される自転車都市だけあって、その場所へ自転車で到着すると得られる特典が数多く見受けられます。飲み物が無料で一杯提供されたり、レンタルが無料になったり、ランチが無料になったりと、多くの場所でたくさんの特典が提供されています。

必ずしも金銭的なメリットとして魅力的とは言いませんが、自転車都市コペンハーゲンに来たわけですから、その自転車文化を体験してみる入り口にもなるでしょう。地球環境への負担を減らしながら、コペンハーゲンをもっと感じてもらい、有意義で思い出に残る体験をしてもらうことが目的です。( ↓ 動画参照)



このプログラムは環境への配慮を打ち出しているのであって、オーバーツーリズムの弊害低減を目的にしているわけではありません。しかし、結果として自転車の利用を促すことで渋滞や混雑対策になったり、いろいろなスポットやアクティビティを紹介することで、観光客の集中を防ぎ、その分散に役立っています。

これは、日本の観光にとっても示唆に富むプログラムではないでしょうか。日本では北欧のように環境を前面に出すやり方は支持されないかも知れませんが、オーバーツーリズム対策として役立つのであれば、十分に検討する余地はあると思います。

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例えば、京都では市内の路線バスの車内が大きなスーツケースを引いた観光客でいっぱいになり、地元の住民の通勤や移動に支障をきたしていると言います。これを地下鉄やレンタサイクルに誘導したり、ホテルへ運ぶ荷物は宅配便を利用させるインセンティブをつければ、オーバーツーリズム対策になるはずです。

京都でも比較的観光客の少ないスポットに誘導するようなことも考えられるでしょう。混雑の分散が期待されます。インバウンドにとっては、地元の人の知る人ぞ知るスポットを知ることが出来たり、体験できたりするなど耳よりな情報が取得できれば、喜ばれるはずです。

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同時に、祇園の私道は通行しないでとか、舞妓の写真をとらないでといったマナーや注意事項を載せることも出来るでしょう。現地に注意書きを掲示しても、なかなか気づかないようですし、地元のルールを知ってもらう点でも、一定の効果が期待できるのではないでしょうか。

山梨県の河口湖町では、富士山をバックにしたコンビニの写真を撮ろうと観光客が殺到して問題になりました。河口湖町が黒いネットを張って対策したのは記憶に新しいところです。これだって、やりようによっては分散させられるのではないでしょうか。

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このコンビニは、SNSでバズったことでインバウンドが殺到したようです。つまり特定の情報が集中を生んでしまった面があるわけですが、河口湖町なら、どこからでも富士山が見えます。もっとほかのユニークな撮影スポットを紹介して、分散を図る手もあるでしょう。少なくとも、黒い目隠しネットよりスマートです。

誰かのSNSの写真だけが注目されてしまえば、そこに集中しかねません。つまり情報不足の面もあるのでしょう。いろいろな撮影スポットを紹介するアプリを提供し、まだ知られていない耳より情報なども含め、もっと広く発信し、またインセンティブを与えたりするならば、少なくとも分散を促す一助にはなるはずです。

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個人的には、わざわざ日本に来てコンビニ越しの富士山を撮る理由が今一つピンときません。外国人の立場で日本の見たいところ、見たいものというのは日本人には思いもよらない場合もあるでしょう。しかし、情報不足の面も否めないと思いますので、外国人向けの観光情報アプリのようなものは、もっと活用すべきです。

日本で自転車に乗る体験をすれば、それはそれで新鮮でしょうし、バスや電車では見られない日本も見られます。観光スポットの分散にもなります。同時に日本で守るべきルールなどを載せれば有効な抑止になりえます。標識を見てもわからないでしょうが、あらかじめ計画段階から知ることが出来るのは効果的ではないでしょうか。

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こうした点からも、コペンハーゲンの“CopenPay”というプログラムは示唆に富んでいると思います。問題が起きて貼り紙をしたり、ネットを張るのも仕方ないのでしょうが効果的とは限りません。問題に素早く対応して情報提供や誘導、インセンティブなどをつけられるアプリを開発して配布する手はあるのではないでしょうか。


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◇ 日々の雑感 ◇

トランプ前大統領の演説が繰り返し放映されています。聴衆の一部が揃って右耳にガーゼをつけているのには、不謹慎ながら笑ってしまいました。さすが支持者が熱狂的です。一方のバイデン大統領はどうするのでしょうか。

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