ニュースでは猛暑日となった観測地点数が過去最高を更新と毎日のように報じています。多くの地域に熱中症警戒アラートが出され、不要不急の外出や運動は控えるよう注意喚起しています。自転車で出かけようにも、危険な暑さなどと言われると、さすがに自重する人も多いのではないでしょうか。
夏にツーリングするなら暑いのは当たり前ですし、風を受けていれば、そうそう体温は上がりません。水分と塩分補給していれば大丈夫とも思います。でも日差しが強く、走っていても暑いのは確かです。もっとどこか涼しいところはないものかと思ってしまいます。

そんな時にピッタリの場所があります。中央ヨーロッパ、
スロベニアのメジツァ鉱山のトレイルです。この鉱山はヨーロッパでも最古の鉱山の一つですが、1994年に閉山となりました。その廃坑跡をマウンテンバイクでトレイルするという、世界的でも珍しい『地下』トレイルです。
その名も、“
Black Hole trail”です。地下500メートルの廃坑を走り抜ける、まさに暗い地下へと吸い込まれていくようなトレイルです。150メートルの高低差があり、全長は10キロほどあります。相応の技術を持った熟練のバイカーでないと走破出来ません。
そのような上級者が必要な装備を揃えて挑戦しても、3〜4時間はかかります。もちろんガイドと一緒に行かなければ、迷って出てこられなくなる可能性があります。ヘルメットライトは装着しますが、それでも真っ暗な中を降りて行くトレイルは、アドレナリンが出まくる経験だと言います。
太陽光線が届かない地下ですから、温度も低く、涼しいというより寒いくらいでしょう。日本でも富士山麓の風穴、氷穴や鍾乳洞など、入ることの出来る洞穴がありますが、夏でもヒンヤリとする気温です。多くは気温10度台で夏も冬も一定の気温というところが多いと思います。
鉱山の坑道を走ることになりますが、かなりの傾斜や自然の洞窟のような場所もあります。動画を見ればわかりますが、まさに唯一無二のトレイルと言えるでしょう。中級者でも厳しい、エキスパート向けのトレイルであることも間違いありません。
何世紀にもわたって、鉛や亜鉛などを採掘してきた鉱山ですが94年に廃坑となり、それ以来四半世紀は誰も中に入ることはありませんでした。過去に採れた鉱石などが置かれていたそうですが、よくここをマウンテンバイクのトレイルコースにしようと思ったものです。( ↓ 動画参照)
地底探検をしてみたくなる人はいると思いますが、普通探検なら徒歩でしょう。ヘルメットにバックパック、登山靴のような装備、いわゆる探検隊のようなスタイルです。それをマウンテンバイクで走破しようという考えは、なかなか浮かばないと思います。( ↓ 動画参照)
動画を見ると、最初は梯子で昇り降りするような縦坑をマウンテンバイクを吊るして降ろしたりしています。狭い場所や天井の低い場所も当然あるでしょうし、地面だって岩が露出していたり、ゴロゴロした石が堆積していたり、はたまた砂利が積もっていたりと、並大抵のものではないはずです。よくコースにしたものです。
この“Black Hole trail”とは別に、ペカ山の洞窟を抜ける5キロ程度の地下のコースを行くガイド付きツアーもあるようです。トンネルとは違う自然の洞窟を走るのも、なかなかない経験と言えるでしょう。他では聞いたことがないトレイルです。( ↓ 動画参照)
まさに非日常空間です。“Black Hole trail”は相当のエキスパートでないと難しいようですが、地底に降りて行くトレイルというのも一度やってみたいものです。もし、日本国内にこのようなトレイルコースが出来たら、相当な話題になることは間違いないでしょう。
実は日本にも、鉱山跡地、閉山となった廃坑跡はたくさんあります。正確な数字はわかりませんが、おびただしい数の鉱山がかつてありました。少なくとも2千数百はあるはずです。イメージとしては数十くらいの気がしますが、とんでもない、名前も聞いたことのないような鉱山が無数にある、あるいはかつてあったのです。
そのうち、先日世界遺産に登録された佐渡金山とか、土肥、尾去沢、串木野、別子、足尾といった有名な鉱山は、跡地が観光スポットとして開発されています。神岡鉱山のように、スーパーカミオカンデなどの施設として使われているところもあります。
しかし、その他無数の鉱山は、閉山となってそのままでしょう。もちろん、スロベニアのメジツァ鉱山のようにトレイルコースとして使えるところは、ごく限られているでしょうが、あっても不思議ではありません。長く使われていないにしても、地盤がしっかりしていて、坑道を通ることが出来るところもあるかも知れません。
観光用の坑道と違って、照明をつけたり、舗装をしたり、展示をしたりする必要はありません。比較的少ない初期費用で整備できる可能性があります。問題は採算性ですが、インバウンドも増えていますし、今までにない観光スポットとして、意外に面白いかも知れません。
“Black Hole trail”のようなエキスパート向けである必要はありません。私も入ったことがありますが、本物の坑道は異世界のような雰囲気があります。ライトが無ければ自分の手も見えない暗黒、音も無い世界です。水平で走りやすい坑道であっても、経験したことのない空間の走行になるでしょう。
かつて日本全国にあった鉱山も、大多数が枯渇したり採算がとれなくなって閉山となりました。その跡地が活用されている場所は僅かで、利用が難しいのは確かです。地底トレイルなんて突拍子もない話ではありますが実例があります。各地に忘れ去られた鉱山があるはずです。観光関係者の方、一度考えてみてはいかがでしょうか。


◇ 日々の雑感 ◇
パリ五輪では日本勢の快挙が続いています。予想外の苦杯をなめた種目もありますが、この日のために3年間頑張ってきた選手たちです。結果はともかく、悔いの残らないよう、自分の実力を思う存分発揮できるといいですね。
Posted by cycleroad at 13:00│
Comments(0)