September 19, 2024

クルマの制限で子供が健康に

ロンドンでは自転車利用が増えています。


この点については、これまで何度も取り上げてきました。2008年のロンドン五輪や地下鉄とバスの同時テロ、パンデミックなどを契機に乗る人が急増しましたし、ロンドンでは自転車インフラ整備に力を入れた成果もあらわれています。英国政府も徒歩と自転車による移動に20億ポンドの予算を投入するなど力を入れています。

2022年の11月に実施された交通量調査は、自転車に加え、クルマやバス、トラックから歩行者、電動キックスケーターに至るまで包括的なものですが、ロンドン市内の道路を移動する自家用車やタクシーなどのクルマの合計を自転車の交通量が上回ったことが報告されています。

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乗る人の数もインフラ整備も、もはや自転車都市と呼ぶべきロンドンですが、近年増えていることがわかったのは、自転車に乗る子どもたちです。最近行われたケンブリッジ大学とクイーン・メアリー大学による、子供たちの移動習慣を調べた研究で明らかになりました。

研究のきっかけは、“ULEZ”です。ロンドンにおいて、クルマの超低排出規制区域(Ultra Low Emission Zone)が拡大されたのです。クルマ、オートバイ、バン、特殊車 、ミニバスなどの化石燃料車両の排気ガスが基準を満たしていない場合、1日あたり12.50ポンドの料金を支払わなくてはならないという規制です。

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これも何度も取り上げましたが、ヨーロッパ各国と同様に、イギリスでも窒素酸化物などの有害物質や、ディーゼル車が排出する粒子状物質PM2.5などによる大気汚染と、それによる健康被害が顕著です。ヨーロッパ全体では年間50万人もの人が早死にする要因になっているとEUの保健機関なども警告しています。

この大気汚染の対策として取り入れられたのが“ULEZ”です。これはロンドンでの渋滞対策として、都心部へのクルマの流入を抑制するのが目的の、渋滞税(Traffic Congestion Charging)とは別に課されます。ロンドン市内や周辺に住んで通勤・通学する人には大きな負担増になるため、抗議行動も起きた施策でもあります。

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ロンドン市当局は、この制度導入の効果で19年の導入以来、市内全体でのNOX濃度は23%低減されたとしています。ヨーク大学の分析でも、ロンドン市民の長期的な健康状態が22.5%改善し、呼吸器疾患も29.8%改善、病欠も17.7%減った、などと分析しています。

こうした健康改善効果により交通局は、NHS(国民医療サービス)のコストが50億ポンド改善したと推定しています。もしこうした対策を取らなかった場合、大気汚染による健康、社会的コストは現在より104億ポンド増えていたと推定しています。

Safe Routes to School, saferoutespartnership.orgSafe Routes to School, saferoutespartnership.org

ケンブリッジ大学とクイーン・メアリー大学による研究も、大気汚染対策としての超低排出ゾーン政策による、子どもの健康への影響を評価するための調査・研究でした。しかし、これによる小児喘息などの疾患の改善に加え、子どもの肥満の発症を防ぐ上でも大きな効果が認められたことが明らかになったのです。

肥満というとアメリカ人を思い浮かべる人が多いと思いますが、実はイギリス人の肥満も負けず劣らず深刻です。しかも、イギリスでは子どもの肥満率が世界的にも高く、OECDの調査によると、11歳〜15歳の子どもの約3人に1人が肥満又は肥満傾向にあると警告されています。

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研究によれば、“ULEZ”対象地区の子供たちが、徒歩や自転車による通学に変えた割合が増えたというのです。イギリスでは、子どもを親がクルマで送迎するのは珍しくありませんが、“ULEZ”による通行料は毎日課金され、翌日夕方までに払わないと罰則もあります。渋滞税と併せれば年間、約90万円以上の負担になります。

ロンドン交通局による、廃車や規制適合への改造支援や、EVなどの購入支援制度などもあります。ただ、そう簡単に乗り換えも出来ないですし、好きなクルマを手放したくない人もいるでしょう。域内に進入したり、住人の場合、クルマを動かさなければ料金は不要ですので、通勤や、通学のための送迎を止める動きがあるのです。

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イギリスでは親が通学の送迎をするのが普通ですが、親がクルマを使わず徒歩や自転車にしたため、クルマで送迎されて通学していた10人中4人の子供が徒歩や自転車などに切り替わり、全体として自転車の割合が31%から37%に増えているのです。ちなみに区域外では10人中2人でした。

これまで子どもが肥満を防ぐために推奨されている運動量を満たしていませんでしたが、他の地区と比べて活動量が16%ほど上回る結果となっており、確実に肥満の減少に役立っていると見られます。つまり呼吸器疾患減少以外にも、思わぬ喜ばしい効果が得られていたことになります。

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この“ULEZ”は2019年にロンドンに導入されましたが、バーミンガム、エディンバラ、マンチェスター、オックスフォードなど英国内の他の都市も追随する予定にしています。大気汚染被害対策に加え、渋滞の低減、温暖化ガス削減だけでなく、子どもの自転車利用、そして健康増進まで各地に広がることになりそうです。


デル株式会社

◇ 日々の雑感 ◇

レバノンのヒズボラへの通信機器爆破という攻撃方法も驚きましたが2日連続です。対立の激化が懸念されます。

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